ジンの目標
私は、ジン。
皆から偉大なる勇者と呼ばれている。
もともとは、日本で暮らしていたのだが、ある時、オストマルク王国に召喚されてしまった。
この異世界には、人間や亜人や魔人が住んでいる。
今、2人の魔王を倒したことにより、伯爵に任命されて、辺境地の領主となっている。
日本に戻りたい気持ちもあるが、その戻り方がわかっていない。
異世界召喚は、かなり特殊な召喚方法のようだ。
今は、日本へ帰ることは考えないようにしている。
この異世界で、やるべきことが多い。
自由都市からの情報では、恐ろしい魔王が、まだまだ存在し、その上、大魔王までいるようなのだ。
魔王一人を倒すのにも、大変な労力と時間が必要であった。
大魔王が出て来て、まともにやり合えば、人間の国は壊滅させられてしまうだろう。
特に、人間の国では、まったく協力関係ができておらず、足の引っ張り合いをしている。
いつ暗殺や毒殺をさせられるかわからないような状態なのだ。
召喚されたオストマルク王国ですら、政情が不安である。
トリスタン王とは、魔王退治で一緒に戦った仲だ。
そのトリスタン王も、貴族や宗教団体などに足を引っ張られ、王都を復興させるにも時間がかかることになる。
トリスタン王は、優秀であり、なんとか王都を復興させることができるだろう。
しかし、オストマルク王国は、他の国からの圧力がかかり過ぎている。
いくらトリスタン王であっても、それらの圧力を全て跳ね返すことはできないだろう。
つまり、雁字搦めの状態であり、上手く動けないのだ。
トリスタン王が動けないようであれば、我々パーティーが行動をすればいい。
だが、あまり大きく動きすぎると、他の国にも目立ち過ぎる。
強い領地をもらうと、それが火種となり、他国との戦争に陥る危険性があるのだ。
戦争に勝つ必要もあるが、今は戦争をするべき時ではない。
ワザワザ魔王を倒して平和な時期に、軍事力を見せつけるのは、バカのすることだろう。
大帝国が、自らの意思を示す為に、軍事訓練をすることは必要であるが、オストマルク王国は中位の勢力である。
中央帝国のハートランドと西のガリア帝国にケンカを売っても、仕方がない。
そして、魔人の国と戦争をしても、オストマルク王国が疲弊するだけである。
今は、進行して来た魔王の二人を粉砕したところであるが、ワザワザ他の魔王の国に戦争をしても、オストマルク王国の財政や軍事力が持たない。
他の魔王が、8名以上いることもわかっている。
実際、魔王に近い位、強い魔人も多いようである。
人間の国を制圧することができれば、魔王の称号が得られるので、攻めてくる魔人も多いのだ。
魔王の称号については、よくわかっていないが、力は強いことはもちろんだが、領地を持っていることも重要になるようだ。
だから、海を渡って魔人の軍隊が攻めてきたりする。
撃退だけならば、海に面した南側の領地が良いのだが、船の航路もあり、貴族は南側の海沿いに集中している。
ワザワザ、貴族を異動させてまで、領地をもらうワケにはいかなかったのだ。
そして、北側については、亜人の国に面しており、未開の土地となっている。
貴族がそのような危険な土地を欲しがるワケがなく、放置されていたのだ。
オストマルク王国が発展するには、この未開の地を大きくするのが、一番手っ取り早い。
私と妻のメグミは、そのように考えた。
亜人の国に接しているが、亜人を相手しても負ける恐れはない。
そして、亜人については、国単位でまとまっていることが少なく、種族単位や部族単位となっていることが多いのである。
実際、緑ゴブリンと白ゴブリンを配下に治めることになった。
ほとんど、ゴブリンの国と言ってもいいようになってしまって、ビックリしている。
別に、ゴブリンの国をつくる予定ではなかった。
だが、そこにゴブリンがいたので、しょうがないだろう。
少数派が、多数派を従えることは良くあることである。
アフリカの部族でも、よく見られる。
支配者層と支配される側は、まったく違うのだ。
支配される側は、支配者層をよく知ることができない。
上級国民は、ワザと隠されている場合も多いからだ。
少数派が、支配をしていることに気付かれると、多数派に数で負けてしまう。
そのため、情報を操作して、そのような正しい情報が制限されている場合も多い。
日本であっても同じだ。
少数派によって、完全に支配している。
正しい情報は、ブロックされ、プロパガンダの情報が氾濫しているのである。
「まぁ、今回は、こちらが上級国民の側にはなるが・・」
「どこまで、本当のことを伝えればいいのかな?」
白ゴブリンについては、自ら奴隷になりたいと言って来ている。
他のゴブリンの種族もいるが、4,300名もゴブリンがいれば、手足としては充分である。
こちらから、仕掛ける必要はないが、領地経営としては、隣でゴチョゴチョされても気になる。
「ただのゴブリン種族の対応も考えないといけないな・・」
税金についても、意見がわかれている。
税金について、できるだけ安い形にしようと、メンバーに提案をすると、反対意見が多かった。
常識が違うとか、領地経営を上手にすることができないとか、強力な軍事設備ができないとか、いっぱい人を雇えないとか、そんな内容だった。
「ただ、【タックスヘイブン】や【楽市楽座】をしてみようと言っただけなのに・・」