ゼルトブルクのエドワード・ゴールドマン
エドワード・ゴールドマンは、ゴールドマン商会の本店のあるゼルトブルクにいた。
その居宅は、お城のように豪華であり、何名もの執事やメイドが、せわしなく働いている。
ゴールドマン家は、ロックシルト家の大番頭の閨閥である。
ガリア帝国・ルドルフ皇国・オストマルク王国の王都や宗教都市国家のテーベやハートランド帝国などで、商売のネットワークを築いている。
ただし、ロックシルト家の閨閥は、ゴールドマン家とモーガン家だけではない。
シップ家やミリナー家やリーマン家やブルーム家など、もっと多くの閨閥があるのである。
これらの閨閥が、帝国や皇国や王国の貴族と婚姻関係になり、事態はより深刻となるのだ。
ゴールドマン商会は、オストマルク王国では、貧乏貴族や政府などに、直接融資している大元締めである。
ロックシルト商会やモーガン商会も、オストマルク王国全土に出店しているが、王都の方はゴールドマン家が抑えている。
エドワード・ゴールドマンは、オストマルク王国のトリスタン王の兄を毒殺した人物だ。
エドワード・ゴールドマンの支配権は、貧乏貴族だけではなく、王の親族にも及んでいるのである。
つまり、一部の王族や貧乏貴族を完全に取り込んでおり、給仕を買収させて、食べ物に毒を盛ることなど、お茶の子さいさいなのである。
それが、たとえ、その国の王である人物であったとしても・・。
エドワード・ゴールドマンは、ホリの深い、渋めの50台の男性である。
短髪の白髪に、白っぽい髭を生やした175㎝の商人である。
黒っぽい服を着こなし、その目つきは鋭い。
人を殺してきたような、冷たい目をしている。
冷酷で、極悪非道なゼルトブルクの商人の見本でもある。
ゼルトブルク15代首領ジョン・ロックシルトの先祖である、初代マイヤー・ロックシルトには、5人の息子がいた。
長男アムシェル。二男ネルソン。三男ローレンス。四男ウインスロップ。5男デービッド。
この5人の息子をガリア帝国・ゼルトブルク・ルドルフ皇国・オストマルク王国・宗教都市国家テーベに支店をつくり配置したのである。
その5人の息子が、それぞれのロックシルト商会を発展させたのである。
この息子達5人の事は、『5つの錨』とも言われている。
そして、初代マイヤー・ロックシルトの長女のハンナが、ゴールドマン家に嫁いでいるのである。
このハンナの子孫が、エドワード・ゴールドマンとなっている。
各地で、ロックシルトと対抗していた、同郷で親族でもあるライバルのロートシルト家を追い落としていた。
このあまりにも激しい抗争によって、ロートシルト家は没落したのだが、ロックシルト家に対して怨嗟も囁かれるようになっていた。
その怨嗟を避けるために、ロックシルト商会のダミー会社や閨閥を利用して、同族支配を水面下で続けるようになっていたのである。
「ジェイ・モーガンも動き出したか。なるほど、ヤツの拠点に仲間を潜伏させる方法で攻めるのだな」
赤ワインを片手に、報告の手紙を確認している。
「ふむふむ。大工とギルド職人の募集があるので、そこに潜り込ませるのか」
ワイングラスを口に運ぶ。
「グビ・グビ・グビ」
赤ワインを口へ流し込んでいく。
「さぁ、どれだけ楽しませてくれるかな? こちらも、ゼルトブルクの王都の方で色々と楽しもうか。ファファファ」
ゴールドマン家は、表面上は敬虔なクルス教徒のように思われるのであるが、陰ではヤーヴィ教の教徒なのである。
この表面上と、裏側が違うことも、ゼルトブルクの商人の必須条件となっているのかもしれない。
表面上で言っていることと、考えたり・思っていることが、全然違うのである。
その辺りは、京都人を思い出すと、わかりやすいかもしれない。
つまり、腹黒い【裏・表】のある人間なのだ。
京都人は、京都外の都道府県民などには、優しく接するように見えるかもしれない。
しかし、実は、いけずであり、よそ者については、酷い対応をする場合もある。
一見さんお断りも、その一例なのかもしれない。
また、「ぶぶ漬け食べよし(いかが?)」と京都人に言われたら、どのように反応するのが正解だろうか?
この意味は、「はよう帰れ(さっさと帰れ)」なのである。
本当に、ぶぶ漬け(お茶漬け)を食べてしまうと、常識が無いだの、厚かましいだの、京都人から好き放題言われてしまうのである。
京都人は、修学旅行のお上りさんをバカにしたり、日本の首都は京都であると言ったりもする。
「天皇はんは、東京に遊びに行っているだけ」と真顔で言ったりもするのだ。
京都市内の一角に住んでいないものは、人間ではないかのような、言動や行動を平気でするのである。
もちろん、すべての京都人が、このような腹黒い【裏・表】のある人間であるワケではない。
商人にも、色々なタイプがいる。
商いを極め、道徳を重んじるまっとうな商人も多い。
しかし、世の中では、まっとうであるから、栄えると言った法則はない。
力で捻じ込んだり、無茶を通したり、色々なことが起こる。
商人であっても、ダークサイドに落ちてしまっている者も多いのである。
冷酷で、極悪非道な商人もいるのである。
それらの一部は、優生学と結びつき、さまざまな計画を企てているのである。
ロックシルト家と争っていたロートシルト家では、人間・亜人・魔人を支配下に置く【ニューワールド・オーダー】のアジェンダがあった。
そのアジェンダと言われる計画は、ロックシルト家によって、今現在も進行中なのだ。