ルドルフ皇国
ルドルフ皇国には、オットー・ルドルフ皇帝がいる。
このオットー・ルドルフ皇帝は、配下からも愚帝と呼ばれる位、酷い皇帝である。
飽きっぽい性格でもあり、決まり事を守ることができないのである。
皇帝の職務を遂行せず、国家行事にも全く参加しない。
国教であるヤーヴィ教の司祭にも、この数十年会った記録もない。
薬物と酒に溺れ、もはや常人ではなく、廃人なのではないかと噂されている。
若い時から、宮廷から一歩も外に出ず、美女のいるハーレムの一角で、毎日暮らしている。
ただし、居室からも、ほとんど出てこない、引きこもりでもあるのだ。
さらに、もともと優秀ではないのに、癇癪持ちでもある。
ハーレムの美女でも、惨殺された話を良く聞く。
若い時は、換言をした配下武将を斬首した事もある。
不老不死の薬を求め、エルフの里へ侵攻しようとしてオーガなどに惜敗した事例もある。
また、ガリア帝国に宣誓布告もせずに、攻め込んだ事例もあるのだ。
では、なぜこのようなオットー皇帝が、未だにつつがなく過ごせているかと言えば、宰相が優秀だからである。
ヘンリー・ヒューズ宰相が、この国の一切を取り仕切っている。
ガリア帝国との戦争についても、ヘンリー・ヒューズが、戦争に飽きた愚帝に変わり、指揮を取っている。
もともと、彼はガリア帝国の貴族の息子である。
ガリア帝国では、家柄として、皇帝になれる可能性も低かったが、軍事学校で驚異的な成績を修め、有名になっていた。
ヘンリー・ヒューズは、ガリア帝国で頭角を現すには、時間と労力がかかり過ぎると考えていた。
そこに、ゼルトブルクがヘンリー・ヒューズをルドルフ皇国の宰相にするために勧誘したのである。
お互いの思惑が一致して、ヘンリー・ヒューズは、ガリア帝国を去り、ルドルフ皇国に仕えることになったのだ。
実際には、ルドルフ皇国が戦力として弱小過ぎであり、商業都市国家のゼルトブルクが金の力で、このヘンリー・ヒューズを寄越したのである。
ヘンリー・ヒューズは、腐っているルドルフ皇国の改革をすることはできなかったが、各主要ポジションには、優秀な人材を配置することができた。
特に有名なのが、傭兵軍団と鉄の生産や黄金や鉱石の採掘である。
傭兵軍団には、獣人傭兵軍団と魔術師傭兵軍団がある。
獣人傭兵軍団は、主に2つの種族によって構成される。
コボルトとオークである。
コボルトは、オオカミの獣人である。
身長の平均が180㎝を超えており、力は獣人となるので、人間よりも遥かに強い。
鋭い爪と牙が特徴であり、回復力が高く、肉弾戦が得意である。
知能は人間と同等となるのだが、それほど賢いワケではなく、魔法も使うことはできない。
軍人としては、身体能力が高く、有能な獣人である。
本来は、亜人の国の東側が居住エリアであるのだが、ゼルトブルクがこのオオカミ獣人を戦力として、ルドルフ皇国に寄贈している。
オークは、ブタやイノシシやイノブタの獣人である。
身長の平均が190㎝を超えており、力は獣人となるので、人間よりも遥かに強い。
生命力と繁殖力と回復力が強く、武器の使用をして、肉弾戦が得意である。
知能は、人間よりも劣り、魔法も使うことはできない。
性格が獰猛であり、猪突猛進しがちでもある。
軍人としては、前線に配置すると、命を惜しまずに特攻するので、重宝される軍団でもある。
魔術師傭兵軍団は、人間の魔術師がメインとなり、遠距離から集団魔法をしかける。
単発ではなく、集団で魔法をかけると、その威力は何倍・何十倍とはね上がる。
おびき寄せた敵軍を、集団魔法で、いっきに壊滅させることができるのである。
獣人傭兵軍団は、近距離の接近戦で、魔術師傭兵軍団は、遠距離からの集団攻撃で、ガリア帝国軍を何とか撃退してきているのである。
西の帝国でもある強力なガリア帝国の猛攻をギリギリしのげているのは、これらの傭兵軍団とヘンリー・ヒューズの知略のおかげであると言っても過言ではない。
この傭兵軍団の設立にも、ゼルトブルクが絡んでくる。
ゼルトブルク15代首領ジョン・ロックシルトの先祖である初代マイヤー・ロックシルトは、ガリア帝国のゲットー育ちだった。
大昔は、ガリア帝国でも、ヤーヴィ教は盛んに布教されていた。
しかし、新興のクルス教が力を持ち始め、やがて皇帝がクルス教を国教として宣言したのである。
次第に、ガリア帝国では、ヤーヴィ教の信者は住めなくなってくるようになっていた。
その為、ヤーヴィ教徒の多くが、ルドルフ皇国へ移住している。
数百年もすると、ヤーヴィ教徒は、町の一角に集められ、ゲットー生活となるのである。
ロックシルト家は、ヤーヴィ教に入信していた為、ガリア帝国では差別されていたのだ。
そこから、一代で、初代マイヤー・ロックシルトは大商人となっているのである。
ゼルトブルクのロックシルト家の快進撃は、そこから始まるのである。
このヤーヴィ教繋がりで、ロックシルト家は、ルドルフ皇国の支援をしているのである。
また、鉄や黄金や鉱石の生産があるから、失いたくない部分もある。
強くなりすぎたガリア帝国が憎い部分もあるのだが、商売相手としては、約束を守ってくれる相手の方がいいと言ったところでもある。