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領地経営クエスト  作者: 小説クエスト
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ゼルトブルクのジェイ・モーガン

 オストマルク王国の都市ブルージュに、商業都市国家ゼルトブルクのジェイ・モーガンは偵察に来ていた。



 商業都市ゼルトブルクの首領ドンであるジョン・ロックシルトからの命令である。


「ジェイ・モーガンよ、偉大なる勇者と呼ばれているジンの動きをマークせよ。アイツは、油断ならぬ。エドワード・ゴールドマンと共に協力して見張れ!」


「かしこまりました」


 その言葉と共に、ジェイ・モーガンは、行動を開始している。

 それは、魔王軍を撃破して、オストマルク王国の王都を取り返し、勇者が伯爵に任命された時からである。



 ジェイ・モーガンは、ロックシルトの閨閥けいばつである。

 閨閥けいばつは、親族関係と言えばわかりやすい。

 ジェイ・モーガンの商会は、ゼルトブルクに本店を置いている。

 そして、オストマルク王国をテリトリーとして、特に北側のブルージュを中心に動いている。

 オストマルク王国の王都が、魔王軍に侵略された影響もあり、北部へ重点をシフトしていたのである。

 そして、ゼルトブルクのジェイ・モーガン商会の名前を表に出さないように、オストマルク王国の国民が代表になっているように、細工もなされているのである。

 現地の軍の上層部位しか、その支配内容については、知られていないのである。

 賄賂は、現地の軍の上層部に、しっかりと配られているのであった。



 エドワード・ゴールドマンもロックシルトの閨閥けいばつであるが、ジェイ・モーガンよりも広範囲で商売などをしており、各国の王都などで商売のネットワークを築いている。

 オストマルク王国の貧乏貴族や政府などに、直接融資をしており、王都の方はゴールドマンが抑えている。

 トリスタンの兄の一人の毒殺命令を出した人物でもある。



 ロックシルト家は、基本として、息子に家業を継がせている。

 ただし、ロックシルト家にも、娘がいる。

 自分達の娘や親族の娘を、有力な事業家のもとへ嫁がせる

 そして、嫁がせたその家を乗っ取ってしまうのである。

 まぁ、ロックシルトの娘の子供が、跡を継ぐので、表向きはそのように見えていないかもしれない。

 しかし、裏側では、しっかりと乗っ取りが完了して、総本家に従う形となってしまう。

 この支配体制が、十世代を超えると、どうなるであろうか?

 そこら中に、ロックシルト家の閨閥けいばつが、広がってしまっているのである。

 そうなると、ロックシルトの名前ではない閨閥けいばつも多いのだ。

 ゼルトブルクの支配体制は、このようにして出来上がっている。



 ジンが、オストマルク王国の王都とブルージュに来る度に、ジェイ・モーガンの部下がつくっている報告書も増えている。

 オストマルク王国の貴族の大半が買収されており、ゼルトブルクには、色々な情報が入ってくる。

 勇者であるジンの【索敵】スキルも、ゼルトブルクに把握されているので、ジェイ・モーガン自身もジンに近づくことが難しい。

 余程の忍者のような【隠蔽】スキルが無ければ、尾行していることに簡単に気付かれてしまうからだ。

 気配を完全に消すことができなければ、かえって危険な目に遭う場合も多い。

 戦いの上級者になれば、ふとした瞬間に気付かれて、反撃でやり返され、消されてしまう。

 慎重なジェイ・モーガンは、プロの密偵を雇って、しっかりとした報告書を作成させているのだ。



 ジェイ・モーガンは、ホリの深い、渋めの40台の男性だ。

 武芸にも秀でた、黒髪を茶髪に染めている185㎝の大柄な商人である。

 護身用として持っている武器も、通常の兵士と比べるべきではない、高価な魔法の付与されている特注品だ。

 ただし、冷酷非道なバリバリのゼルトブルクの商人である。

 移動用に、白いペガサスを従えている。


 ジェイ・モーガンは、ゴールドマンからの手紙と部下からの報告書に目を通している。


「ブルージュでは、木材の購入と鉄の購入と武器の購入と食料品の購入が多いな。そして、ギルドで求人募集をしている。ゼルトブルクでは、宝石商以外には大きな買い物をしていない。ワザとゼルトブルクを避けている。やはり、何かあると考えていいだろう」


「確かに、勇者と賢者が揃っているが、『領地経営』では、まだ何の成果もあげていない。そこまで首領が心配すべき対象なのだろうか?」


 ジェイ・モーガンは、考え込んでしまった。


「オストマルクの王都には、ゴールドマンが張り付いているいる」

「ゴールドマンの報告の手紙では、ジン達は、木材と香辛料の売却をしているようだ」

「うーん。情報が少ないな」


 ジェイ・モーガンは、ブラックの濃いコーヒーを飲んでいる。


「ゴクリ」


 渋い顔をしながら、天井を見上げる。


「フー」


 ジェイは、深くため息をしている。


「ヤツの拠点に、私自身が乗り込む方法もあるが、流石にそれはバレバレになるな」

「なんとか、私の知り合いを潜り込ませる方法はないかな?」

「大工を募集しているようなら、大工として潜伏させる方法もあるな・・」


 ギルドの手配書をひとつひとつ確認している。


「オッ、ギルド関係者への募集もされているな」

「じゃあ、アイツを潜り込ませるか?」


 勇者の下に潜入させる人材を選んでいるのであった。

 ゼルトブルクは、何もせずに見守ってくれるほど、生易しい組織では無いのだ。

 最悪の場合、暗殺などの実力行使も平気でしてくるのである。

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