オストマルク王国のギルドにて
拠点の村の開発資金調達の為に、オストマルク王国のギルドに来ている。
オストマルク王国のギルドは、この世界では大きな方のギルドだ。
だが、魔王軍の侵略があり、7年間も占領されていたこともあり、建物や機能としてもボロボロになっている。
未だに、崩壊している建物もゴロゴロある。
ギルドマスターも、昔馴染みの者ではなく、新しい者に変わっている。
職員もベテラン従業員が辞めていたりして、元に戻るまで時間がかかりそうだ。
「まだまだ、先は長そうかな~」
「まぁ、勇者待遇をしてくれているので、まだマシか~」
冒険者達も徐々に戻って来ているが、商業都市国家のゼルトブルクへ移転したり、自由貿易都市国家に移転したりもしている。
復興に向けて動いているギルドとしては、物資と人材も足りていないのも事実だ。
依頼が沢山出ているが、解決されていないモノも多くなっている。
「正常化するには時間がかかりそうだな」
「高く売れるモノから解決しよう」
割高に募集をされている商品やアイテムを優先的に売却している。
期限がギリギリになるほど、高値で買い取ってくれる。
ギルドの仕事などの募集依頼は、敵の討伐だけではないのだ。
「クエストの達成。ありがとうございました」
その為、商品やアイテムの依頼内容を確認している。
「今は、王都復興の為の木材が不足しております。良かったら木材も売却してください」
やはり、復興には、物資が必要のようだ。
つまり、木材が足りていない。
「わかった。色々と検討しておくよ」
あまり、ヴィエラ山脈の拠点の村の木材を出すのは、勿体ない気がする。
拠点の村の開発行為でも、木材を大量に使うからだ。
木の成長については、時間がかかる。
ヴィエラ山脈の麓の木々は、樹齢100年を超える名木が多数ある。
この辺りについては、木材の売却について、全員の意見を聞いてからにする。
開発拠点の村から一番近い大都市のブルージュも、森林地帯が広がっている。
ブルージュから、木材などを買い付け、王都で売り払う方法もあるのだ。
【マジックアイテム収納】があれば、木材も運ぶことができる便利アイテムである。
この【マジックアイテム収納】は、冒険者でもほとんど持っていない貴重アイテムなのだ。
普通のアイテム入れならば、ただの袋同然となる。
【アイテム収納】でも、10個位のアイテムが収納できる位しかない。
それでも、金貨10枚の値段になる。
この大容量の【マジックアイテム収納】は、容量と金額でも企画外となるのだ。
【マジックアイテム収納】を持っているのは、私とメグミとランスロットとウォーレンの4名だけになる。
通常ならば、大きな木材を運ぶことができないので、運搬費用が上乗せされる。
さらに、【テレポート】ができれば、一瞬で木材を運ぶことができる。
ただし、木材を移動させるだけの魔法力が必要となる。
簡単に売買すれば、十分に儲かる勝算が立つ。
今、王都ではいくらで木材が売買されているか、情報収集をしている。
運搬輸送費用の分が、すぐに利益となるのだ。
今のところ、歪は、木材だ。
ここは、開発資金の調達の為に、徹底的に儲ける為の行動をする。
宗教都市のテーベ派の貴族領地以外のオストマルクの都市ギルドを回ることにした方がいい。
テーベ派の貴族は、私の事を良く思っていないようなのだ。
ギルドでも嫌がらせをされることもある。
ワザワザ気分が悪くなるようなことをしなくても良いのだ。
「大木の木材を200本購入したい」
ブルージュに【テレポート】で飛んで、大木200本の木材の買付けをする。
「それでは、金貨100枚となります」
その足で、すぐに【マジックアイテム収納】に収納し、【テレポート】でオストマルク王国の王都へ戻ってくる。
「大木の木材を200本売却したい」
「ありがとうございます。金貨200枚となります。助かりました」
ギルド経由で売却をすると、買値の2倍で売れたのだ。
金貨100枚で購入した木材が、売却すれば、すぐに金貨200枚となるのだ。
右から左に木材を流すだけで、金貨100枚の儲けが出る。
日本円で換算すると、1億円が手に入るのだ。
これほどボロい商売はない。
アービトラージは、サヤ取と言われている。
つまり、買値と売値に差があれば、あるほど儲けが出る。
王都に木材が大量供給されて、余る位にならなければ、王都の売却値は変わらない。
また、ブルージュの木材が大量に消費されて、不足する位にならなければ、ブルージュの買取値も変わらない。
誰もが、このサヤ取りをしだすと、需要と供給がバランスを取り合って、相場が元に戻るようになり、利益を出せなくなる。
その時、歪が無くなるのである。
商売では、歪のある時に、しっかり稼ぐことが大切だ。
いつ、歪が無くなってしまうかは分からない。
歪が無くなることを考えずに、ガンガンお金を突っ込むと、全財産をパーにすることになるので注意が必要なのだ。
歪が無くなってしまう事を考え、撤退の時期を考えておかなければ、商売は上手くいかない。
バブルは所詮、バブルだからである。