ヴィエラ山脈の麓の辺境地にて
ヴィエラ山脈の麓に、たった一人で来てしまっている。
それは、自分自身の領地をしっかりと、この目に焼き付けることも必要だからだ。
「初めての領地経営を盤石にするための調査に労力は惜しまない。
もちろん、全財産をかけて、開墾や内政をするつもりではある」
この領地に全力を傾けて、魔王軍との戦いを優勢に持って行かなければならないのだ。
むしろ、やらなければならない点が多すぎて、困ってしまっている。
「思った通り自然以外、何にもないな。キャンプをするには、丁度いいかもしれないが・・」
一人でヴィエラ山脈の麓の辺境地まで来ているのだが、少し後悔していることがある。
「サッと出て来たけど、アイツラを連れて来ればよかった・・」
そう思っていたことが、口から言葉として出てしまった。
本来、情報収集や探索をするには、適任者が2人いた。
トレジャーハンターのルーク・ピピ・ハーフフットと、ニンジャマスターのゲンゾウ・ハシラタニだ。
トレジャーハンターは、盗人の上位職種である。
宝物であるトレジャーを見つけることや危険察知、トラップ解除のスペシャリストなのだ。
ダンジョンに潜った時は、危険トラップ解除や宝物探しで、よく世話になっていた。
26歳と若い男だが、プロ中のプロだ。
戦闘もそこそこ強いのだが、戦闘系のメンバーと能力値を比べると差が出ている。
だが、トレジャーハンターは、相手に致命傷を負わす、クリティカルヒットを連発させる特技がある。
ピピは愛称であり、小さい時に泣き虫で、ピーピー泣いていたからでもある。
ただし、自分では、ピピとハーフフットの名前について、よく思っていない部分もあるようだ。
ハーフフットの名字は、先祖が片足を切られたりしたことが、原因であるとも言っていた。
ルークの身長は160㎝位であり、小人ではないが、それに近い人種か亜人の血が流れているのかもしれない。
ニンジャマスターは、その名の通り忍者の上位職種である。
諜報・隠密活動のプロで、32歳の男性である。
東方の国の出身のようだが、詳しいことを直接は聞いていない。
冒険者になった時期は、トリスタンに従って、影として活躍をしていた。
諜報組織の影もメンバーが増えたので、領地経営を手伝ってもらえることになっている。
ニンジャマスターは、忍術も使え、行動も素早く、知能もある。
【隠密】スキルもあり、かなり使い勝手の良い職業でもあるのだ。
ただし、スピードを重視することもあり、軽装で防御力については、他の戦闘系の職業よりも見劣りするかもしれない。
最前線である前衛に置くよりも、中間に置くか、後衛の方が、力を発揮する系統でもある。
ルークとゲンゾウの2人とも、第一回目の魔王討伐のメンバーで、12年来の友でもある。
当然、オストマルク王国の王であるトリスタンとも仲がいい。
トリスタン王とは、ケンカをしたワケではない。
ただ、貴族連中が、相当にうっとおしいダケなのだ。
その考えは、どうも皆同じのようで、辺境の領地でも、喜んで来てくれるようになったのだ。
「ワタクシも連れて行って欲しかったです」
とプライベート時に、トリスタン王から、真顔で言われた時はビックリしたが・・。
やはり、王ともなるとストレスで、思考回路が大変になるのだろうと理解をしている。
今回は、冒険者をしていた血も騒ぎ、領地をもらえることになって、嬉しくなり、後先を考えずに飛び出してきたのだ。
まったく準備不足で出て来たので、参謀であるの「ウォーレンから怒られるだろうな」と思ってしまった。
ウォーレン・アルビレオは、75歳の老人なのだが、上級魔道士であり、知能明晰な良いお目付け役である。
先走る私達をしっかりと止めることの出来る、数少ない人物だ。
もちろん、バリバリの魔法使いでもある。
魔法力については、メンバーの中でも、かなり上位になっている。
鹿肉を調理していて、そんな事を考えていた。
冒険者をしていたので、サッと塩をふって焼いた鹿肉料理も上手くできた。
すごくいい匂いもしているので、熱いかもしれないが、すぐ肉にかぶりついた。
「うん。美味い。ビールも持ってくれば、よかったのかもな・・」
そして、鹿肉を食べながら考えていると、すぐに閃いた。
「ここでログを記録して、【テレポート】で往復すればいい」
簡単な話だった。
「初回は、何らかの方法で、このヴィエラ山脈の麓まで来なければならなかった」
「ログを記録したので、もう一瞬で【テレポート】することが可能となる」
「1パーティ分である6人までは、瞬間で移動させることができるようになったのだ」
「もうすぐ暗くなるから、片付けたら王都に戻ろうか・・」
「現地の下見に行ったと言えば、皆許してくれるかな・・」
「お土産は、薬草と残った鹿肉と鹿の毛皮と猪肉と猪の毛皮くらいだけど・・」
一人ぼっちだと、ちょっと寂しくなってきたのかもしれない。
鹿肉を食べるとすぐに、【テレポート】でユニコーンと一緒に王都へ戻っている。




