拠点の移動
今、領地にある村は、ボロボロの村だけだ。
「ボロボロで厳しいな・・」
さすがに、ここで寝泊まりするのも、都市の快適な生活に慣れているような、普通の移住者希望者では厳しいかもしれない。
もちろん、一般の冒険者ならば、全然問題ない設備ではある。
ダンジョンに潜ることを考えれば、特に苦もなく、衛生面でも安全面などでも、何千倍も違うだろう。
ただし、ゴブリンの襲撃により、天井や屋根が無くなっているような建物も多い。
屋根が無くなっているので、雨が降れば、ずぶ濡れになってしまうだろう。
「夜は、星が見えてキレイかもしれないが・・」
もともと、みすぼらしい村が、廃墟の一歩手前位に見えてしまうのだ。
「そのボロボロにした原因のゴブリンが復興の手伝いをしているが、復興はいつになることやら・・」
ゴブリンを鍛える為に、後発隊のランドルフが来るまでは、翼人のアルフォンスとスナイパーのフィガロが教育係として、基本的なことを、みっちりとスパルタ方式で教えている。
たぶん、厳し過ぎて、深夜になったら68名のゴブリンは、地獄に来てしまったと泣いているだろう。
臨時会議後、すぐに行動をしているようなので、だいたい想像がついてしまうところも恐ろしい。
「何事も最初が肝心だ」
飴と鞭は、使い分けをしなければならない。
「ゴブリン相手では、甘やかすと、すぐに調子に乗りそうだから、ずっと鞭だけになるだろう・・」
ヴィエラ山脈の麓の滝には、先発隊で建てた、コテージが一軒建っている。
エルフのヴェロニカが言うには、すごく神聖な場所であり、神殿を建てても良い位のようだ。
偉大なる勇者メンバー一行の気分転換用に、このまま固定して置くつもりだ。
臨時会議後、ヴィエラ山脈の調査とゼルトブルクに行っている間に、新しく造られる村の予定地に、すでに拠点が移動している。
川沿いの場所に、コテージやテントを建てる準備をしているが、まずは、森林伐採から始めることにする。
森林は、到着した時もそのままの状態だったので、今日はここだけは片付けてしまう。
調査とデートをして、ゼルトブルクで買い物をしている内に、すでに夕日が落ちる時間が近づいているのだ。
「さて、ここは私の出番かな」
森林から全員を離れさせ、集中力を上げて、横切りから斬撃を飛ばす。
「エイッ」
すると一撃で、半径300m位の森林がスパッと切れて、木がバタバタと倒れた。
「木については、明日か明後日からゴブリン達が対応するので、そのままでいい」
明日か明後日くらいには、ゴブリンに木を集めさせる仕事をさせるつもりだ。
「ゴブリンの土木作業員としての力を確認させてもらう」
土木作業員として、どれくらいの力仕事ができるか見せてもらう。
「次は、コテージと獣舎を建てる。これが終われば、今日の仕事は終わりだぞ」
「よっし。やろう!おー!」
【マジックアイテム収納】から、私とメグミ専用のコテージと仮設の獣舎用の材料を出して、速攻で組み上げた。
「今日の仕事は、これでお終い。お疲れ―」
「お疲れ様でしたー」
◇◆◇◆◇
日が落ちて、新しい村の建築予定地の現場に、新しいコテージとテントが完成し、おのおのが自由に過ごしている。
魚を釣って焼いていたり、猪肉のバーベキューもしている。
お酒やワインも出てきて、キャンプファイアーが始まった。
パチパチパチ
キャンプファイアーで、木が燃えて弾ける音もする。
「風光明媚で、いいところですなぁ」
「今から、賑やかな場所にするぜ、旦那」
「そうでござる」
「これからガンガンやろうぜ。イエーィ。ケッケッケ」
ウォーレンやフィガロやゲンゾウやルークは、ワイワイ・ガヤガヤと話し合っている。
羽目を外し過ぎなければ問題ない。
メグミは、皆に結婚指輪とデートの自慢をしている。
「いいでしょー。デヘヘ」
「どーお。デヘヘ」
「結婚もいいものヨ」
そして、エルフのヴェロニカ相手に、色々と話し込んでいる様子だ。
仮設の獣舎では、ユニコーンとグリフォンが、並んで休んでいる。
「・・・」
「・・・」
おいしい夕食を皆で食べて、ゆっくりするつもりだ。
コテージでは、魔力を込めて作っており、シャワーも使えるようになっている。
この辺りについては、こちらの世界でも、リラックスできるようにしているのだ。
「人間は、肉体面も精神面も両方の充実が必要なのだ」
仕事のストレスなどが多くあると、どうしてもダウンして倒れてしまう恐れもある。
そのようなことにならないように、ストレス解消をさせなければならないので、コテージの設備は立派なモノとなっているのだ。
「フー。今日も良く頑張った。まだまだ、やることが多いなぁ」
今のところ、男性用のコテージと女性用のコテージ、個人用のテント群となっている。
そして、私と妻のメグミは結婚しているので、専用コテージを使用することになる。
「シャワーでも浴びて、さっさと寝ようか。明日も早い」
専用コテージで、シャワーを浴びれば、明日に備えて早く寝る予定だ。