ゼルトブルクでの指輪の購入
商業都市国家のゼルトブルクに【テレポート】でやって来た。
お目当ては、メグミの気に入る指輪を購入することだ。
「さあ、着いたよ」
「そうね。お邪魔するワ♪ルンルンルン♪」
宝石商に店に着くと、メグミが凄く嬉しそうにしている。
「良かった。機嫌が直りそうだ」
「嬉しいナ♪嬉しいナ♪」
すでに、なじみの宝石商の店に入っている。
宝石商の主は、残念ながら留守のようだ。
なじみの宝石商の店に来たのは、ボッタくりをされない為だ。
宝石はピンからキリまである。
【鑑定スキル】を使って指輪を見れば、その価値や加護までわかってしまうのだ。
ゼルトブルクの他の宝石店では、一見客には吹っかけて、宝石や指輪を販売するのだ。
価値評価の3倍の値段や4倍の値段の店もザラにある。
ボッタくりをしない優良店ほど、一見さんをお断りしているのだ。
「うーん。ちょっと違うかナ」
色々なショーケースの指輪を見ているが、次々と違うショーケースを見ている。
どうも、ショーケースには、なかなか気に入る指輪が無いようだ。
「すみませーン」
「魔法が付与されている指輪はありますか?」
メグミが、店員に何かを相談している。
すると、店舗の奥から、店員は見たことのない指輪を持ってきた。
「貴重な指輪ですので、ショーケスには入れておりません。ちょっと持ってまいりますので、お待ちください」
宝石商の店員は、大事そうに、その指輪を扱っている。
そして、その指輪の説明をしだしたのだ。
「こちらになります。名前は【聖印のゆびわ】です」
それは、『聖印のゆびわ』と言われる指輪だった。
「宗教都市国家のテーベでつくられている、貴重な指輪となります。この指輪の特徴は、即死攻撃を無効化できる付与魔法が施されていることです。そのため、お値段も高くなります」
こちらも【鑑定スキル】を発動させて、確認すると、言われた通り、即死攻撃を無効化できることもある指輪だったのだ。
「あら。ヤダー。いいワー。とてもいいワー」
「こちらの指輪ですと、金貨20枚となります」
この世界の金貨20枚を日本円で換算すると約2,000万円だ。
やっぱり相当な値段がする。
【鑑定スキル】で見てみても、ゼルトブルクで販売をするには、妥当な値段であるように見える。
商品の値段には、原材料費・サービス費・付加価値と必要経費と店舗の利益が乗っかるからだ。
「二つ購入したら、お安くならないかしラ」
メグミが笑顔で応戦する。
おいおいと思いながら、見ていると【交渉スキル】を発動させていることがわかった。
「困りましたね。値段の交渉は、私の権限では出来かねるのですが・・」
「えーと。えーと。うーんト」
「金貨36枚ならいいですよ」
振り返ると、この店の主、宝石商のギルバルトがニコニコしている。
ずんぐりむっくりとした体形だが、立派な商売人だ。
この宝石商の商品や店などのファンも多い。
「偉大なる勇者様・賢者様のお役に立てるならば、その金額で販売させていただきます」
この店の仕入れ値は、指輪一つ金貨17枚となっており、1割7分6厘位乗せているように思える。
日本であっても、仕入れ値の2~3割上乗せして販売をするのが普通である。
商売だから、人件費や店舗代などのコストもかかってくるからだ。
ボッタくりの店ならば、これと同じ指輪が一つ当たり、金貨50~60枚を請求されるようなこともある。
ギルバルトの店の上乗せ比率は、こちらの世界での場合は、非常に良心的とも言える金額なのだ。
売値である金貨20枚から2枚引くと金貨18枚。
最終販売価格である金貨18枚から、仕入れの金貨17枚を引くと1枚残る。
『聖印のゆびわ』を二つ指輪の購入するのならば、金貨2枚分、すなわち約200万円の利益が出る。
大きな取引となるで、必要経費を多めに考えても、マイナスにはならないだろう。
それならば、適正価格ではないが、色々と考えて、良しと踏んだのだろう。
相手はこちらが、大勇者と大賢者であることも知っている。
大勇者と大賢者の贔屓の店であることは、効果的な宣伝活動になるのだ。
商売上手なので、宣伝費込みのウイン―ウインでの対応をしてくれているのだ。
こちらとしては、店の定価から約400万円の特別値引きをしてもらっている。
「では、この『聖印のゆびわ』を二つください」
ここは、ギルバルトの好意に甘えることにする。
「いつも、ご贔屓にしていただき、ありがとうございます」
「ヤッター」
メグミが喜んでいる。
「じゃぁ、これを結婚指輪にしましょウ」
そうだった。結婚をしているのに、結婚指輪の交換もしていなかったのだ。
今までカッコいいことを言っていたが、急に背中に冷や汗が出てきた。
さらに、強引にまけさせ過ぎたかもしれないので、また何か宝石などを購入する時は、ココで購入しようと思った。
今日は、ギルバルトが居てくれてラッキーだった。
「ありがとう。また来るよ」
お礼を言った後、さっさと会計を済ませて、宝石商の店を出ることにした。