ユニコーンに乗ってのデート
ヴィエラ山脈の麓の村の臨時会議も終わり、メグミを連れて近隣調査も兼ねて、デートをすることになった。
さっきの会議で、メグミがワガママなことを言ったからだ。
「エー。エー。信じられないィー。」
パーティーメンバーは、だいたい理解している。
メグミは、一度不機嫌になると、冷静な判断ができなくなる場合もある。
人格が大賢者モードならば、大概は大丈夫なのだが、違う人格の精神モードの時もあるのだ。
そして、何度も歯車がくるうと、やばいスイッチが入って、キレてしまうことも数々あった。
つまり、いつキレだすかわからない、時限爆弾を扱っているようなモノなのだ。
もし、ガチギレして、魔法をぶっ放したら、この村も跡形なく吹っ飛んでしまうだろう・・。
魔法防御の結界をはっていなければ、パーティーメンバーも大ケガすることが必至で、甚大な被害が出る恐れもある。
ちなみに、メグミの魔法で、結界のはられていたオストマルク王国の王都の西側の城壁は、ゴッソリと破壊されていた・・。
そして、魔王軍相手に、ゲキ切れして、魔人や魔物や魔獣の死体の山をつくっていたことを思い出す。
吹っ飛んでいた敵は、ほとんど真っ黒に焦げており、手足なども見当たらず、原型もわからなくなっている死体も多かったからだ。
あれは、パーティーメンバーまで、トラウマになる位だったのだ。
そう言えば、学生でバイトをしていあ時代も、ブラック会社の上司が、どのタイミングでキレるか、いつも観察をしていたことを思い出した。
これは、防衛本能なのだろうか。
神経を研ぎ澄まして、シンクロすれば、何となく分かるようになっていたことを思い出す。
まったく、そんな変なことまで考えてしまっていた。
こんなにキレイな自然環境にいたら、メグミが「せっかくだからデートをして欲しい」と言うに決まっている。
前回、様子見でヴィエラ山脈に来ただけでブツブツ言われてしまったのだ。
または、「仕事とプライベートをわけたい」ということも想定している。
ただし、ワガママを言うだけあって、仕事は完璧にこなす。
その辺りは、しっかりと押さえていて、『働いたら負け』のような、無責任なニート的な考え方をしているワケではない。
二手も三手も先を考えてもいるのだ。
「じゃあ。行こうか」
「ヒヒーン」
「わぁ。嬉しいワ」
幻獣であるユニコーンに、二人でまたがり、ユニコーンの魔法の力で、空を駆け抜ける。
「パッカ。パッカ」
すると、大自然がパノラマのように広がっている。
空から見るだけで、キレイな山々や森林や川あり、すごく絶景なのだ。
たしかに、飛行での近隣調査は、デートをするには調度良い。
すでに、先発隊により大概の調査が済んでいるので、別名でサボりとも言う。
公私混同が激しいと言われるかもしれないが、この調査であるデートは、業務を円滑にするために、メンバー全員からも認められての行動なのだ。
「ストレス発散で、大きな魔法をぶっ放されると、あちこちに大きなクレーターができてしまう恐れもある」
「流れ弾を喰らったら、はね返すこともできず、大変な目に遭うこともわかっているのだ」
私やメグミも浮遊魔法ができるが、【索敵スキル】を発動しながらだと、MPとSPの消費が半端ない。
MPとSPを使いすぎると、吐き気がして、クラクラし、立つこともできなくなる場合もあるのだ。
そのことを考えると、浮遊魔法については、日常で使うには効率的ではない。
「ヒャッホー」
滝の辺りまで、飛んで行き、山脈の頂上まで行ってから旋回した。
まぁ、断崖絶壁で、こんなところに城をつくっても、誰も登ってこれないなと理解したであろうか。
調査を兼ねたデートを喜んでいるようにも感じる。
これ以上、ワガママを言わないことを願う。
空中から、新しく建築する村の場所を確認して説明をする。
上下水道と、村から町、町から都市に成長することまでを計算してのことなのだ。
建物を建てるにも、設計図がなければ、建築することができない。
村や町をつくるならば、それも同じことだ。
ましてや、都市をつくるとなると大規模な計画まで必要となってくる。
今なら、設計変更も可能だが、だいたいの案は出来上がっている。
まずは、新しい村をつくるところからスタートなのだ。
「どう。デートは満足した?」
「うーんと。まあまあかなー。もうちょっと何かあると嬉しいなァー」
ユニコーンに乗っていて、前回だまって来た謝罪の指輪を買っていないことを思い出した。
「ああ。やばいな。指輪が必要だ」
と思ったが、声には出していない。
「今から、ついでに、ゼルトブルクに行ってみる?大丈夫そう?」
「大丈夫ヨ」
急に思い出されて、キレられたら厄介なので、後で一緒に、商業都市国家のゼルトブルクの宝石商の所に顔を出そうと思う。
「ちょうど良かった。ゼルトブルクの宝石商の所へ行ってみようか?」
「わーい。ありがとウ。うれしいワ」
メグミから胸を押し付けられているような気がするが、それはそれでいいのかもしれない。