ヴィエラ山脈の麓の村での臨時会議の続き
ヴィエラ山脈の麓の村での臨時会議が続いている。
奴隷のゴブリンについては、土木作業員と警備員で決まりだ。
この2つの仕事が、しっかりできるのであれば、他の重要な仕事にまわせるようにしようとなった。
「では決まりだ。ゴブリンの処遇は、土木作業員と警備員とする。簡単な仕事もできないようであれば、ただの無駄飯食らいだ」
「その通りネ。様子を見てみましょうョー」
賢者でもあるメグミが応えてくれている。
そんな、無駄飯を食わせられるだけの食糧などは、この村にはまだ備わっていないのだ。
ちゃんと言うことが聞けて、知能や技能があるゴブリンについては、活用することになった。
「能力さえあれば、ゴブリンであっても取り立てることにする。まぁ、そんなゴブリンはいないと思うけど・・」
「その辺りは、様子見をすれば、いいのではないかな」
ウォーレンが、応えてくれている。
話は、オストマルク王国の地図の事になっている。
「オストマルクの、この地図やばくない?」
ルークが、本音を言っている。
実際、オストマルク王国から持ってきた地図は、中途半端な箇所が多かった。
適当とまではいかないが、ドワーフとエルフが作った地図と比べれば、だいぶん精度が粗かったのである。
「まぁ、予想はしていたがな・・」
これには、仕方の無い部分もある。
オストマルク王国では、南にある海側の都市の方が発展している。
海岸の西側に商業都市国家のゼルトブルクがある。
そして、海岸の東側に宗教都市国家のテーベがある。
この2つの重要な国家が、オストマルク王国の南側に隣接しているのだ。
オストマルク王国の北側については、大きな都市は数える程しかない。
なぜなら、オストマルク王国の北側にはヴィエラ山脈のような山脈も多く、森林や丘や山や崖なども広がっているエリアである。
そして、海抜も、ざっと500m位の高さにある場所なのだ。
ヴィエラ山脈の麓の村からでも、一番近い都市まで、約450㎞も離れている。
北側には無数の亜人の国もあり、昔の国境の砦の外側でもあり、危険度も高いと認識されている土地となっている。
今いる麓の村については、しっかりと再建をしても、それ程発展しないのではないかと意見が出た。
潰してから、再建をしても、その間の仮設をつくることも、金と時間と労力と人材がかかってしまう。
それならば、最低限の再建だけ、奴隷になったゴブリンにさせて、様子をみることになりそうだ。
ちなみに、村が壊れている原因のひとつに、ゴブリンが暴れたこともある。
『自分のケツは、自分で拭け』というのが基本方針なのだ。
「壊した分は、ゴブリンに、しっかりと働いてもらおう」
こんなところでは、甘さは出さない。
本拠地については、新しく2㎞東側の川沿い近辺に建設することになった。
滝からは3㎞西側の川沿い近辺となるのだ。
エルフのヴェロニカも、その辺りを希望していた。
神聖なヴィエラ山脈の麓の滝に近すぎてもいけないし、最終的に大きな都市になったことを想定した考えからのようだ。
そして、今の村人について、新しい村には、強制的に連れては行かないことになった。
無理やり村人を連れて行っても、さしたる仕事もできないので、希望者のみ移住可能とすることにした。
老人が多く、どこまで仕事ができるかは未知数だ。
そして、別に村人全員を奴隷のようにするつもりはないからだ。
また、エルフとドワーフの人員が確定してから、大規模工事になる予定となっている。
戦いを挑んできた部族があれば、撃破・捕獲をして奴隷にする方針が決まった。
亜人については、本人の意思によって奴隷にすることもあるが、とりあえずいきなり侵略者になるつもりはない。
ただし、博愛主義をするつもりもない。
そんな絵空事では、この世界で生きて行くことはできない。
ここは、弱肉強食の世界なのだ。
「弱い者がいくら叫んだところで、負け犬の遠吠えとなる」
負け犬の遠吠えは、避けなければならないのだ。
それは、言い訳になったりもして、見苦しいのもある。
「何にしても、金が必要となってくる」
商業でも工業でも、建築物についても、先立つモノがなければならない。
『領地経営』では、必然的に金が必要になる。
ボランティアでは、『領地経営』はできないのだ。
それは、奴隷などに対しても同じである。
「金があるなら、金を出せ」
「金が無いなら、知恵を出せ」
「知恵が無いなら、体を動かせ」
奴隷などについては、このような基本の方針が決まった。
『領地経営』では、決めなければならないことが多い。
会議をするのも時間がかかるのだが、私は独裁者ではない。
そして、自分自身が大天才であれば、そのような会議は必要ないかもしれないが、色々な意見があって、始めて前進することも多い。
本来、無駄な会議は、減らしたり、無くしたりすることも必要ではある。
だが、今は色々な会議をして、色々な意見を掬い上げる必要がある。
私は、未来の見える占い師ではない。
そして、いくら勇者だからと言っても、何でもできる神様ではないのである。
高さに誤りがあったので、訂正をしております。
何かおかしな点がありましたら、指摘をしてください。
よろしくお願いします。




