現地の中間確認
今、王都に残っているメンバーは、私、メグミ、ウォーレン、ランスロット、ランドルフ、そして幻獣である愛馬のユニコーン、獣のグリフォンがいる。
グリフォンは、大鷲の翼と上半身、ライオンの下半身をもつ巨大な獣である。
今いるグリフォンは、空中での戦いや物資や仲間の移動など、何かと役に立つ。
弱い相手だと、グリフォンを見ただけで退散してしまうこともある。
ダンジョンに入った際に、撃破して捕獲すると、その後なついてきた。
前回の魔王討伐の際も、ユニコーンと共に大活躍をしたのだ。
「グリフォンもユニコーンも、見ているだけでカッコいい」
素直に、そのように思ってしまう。
先発隊を派遣して、2日も経過しているので、現地確認をした方がいいかもしれない。
「大丈夫だと思うが、確認は必要かな?」
先発隊のメンバーも優秀なので、軍隊が攻めてくる位じゃないと、ビクともしないだろう。
実際の戦いであっても、人間相手ならば問題なく対応できてしまうのではないだろうか。
それ程、勇者一行メンバーは強いのである。
今は、拠点の選定や今後の方針を伝えなければならない。
朝から、残りメンバーを召集して、中間確認の為に、現地へ視察に行こうと切り出した。
「集まってくれてありがとう」
「やっと、アイーシャの問題が片付いた。トリスタン王とラウニー王妃も動いてくれている。ランスロットは、当分のあいだ、安心してくれ」
「ありがとうございます」
ランスロットは、申し訳なさそうに、うつむき加減ではあるが、返事をした。
貴族の三男坊であるランドルフは、冷やかしの表情をしながら、鼻の下をこすっている。
「それから、メグミも直接アイーシャと話をつけているから、感謝しておいてくれ」
大賢者のメグミも動いていたことも伝えているので、ランスロットは余計に肩を狭めたのだった。
自分自身では、アイーシャの事を片付けられない事を反省しているのだ。
これで、今は、アイーシャの件よりも、緊急で重要な案件が増えてきている。
「先発隊が2日間、ヴィエラ山脈の辺境地で調査・探索をしている。拠点の選定や、今後の方針について伝えなければならない」
「今回は、私、メグミ、ウォーレン、ユニコーンとグリフォンで現地視察に行こうと思う」
「ランスロットとランドルフは、少しの間待機をして欲しい」
「他のメンバーは、すでに辺境地へ行っており、王都などでパーティーメンバーのトラブルが残っていないか確認をして欲しい」
大丈夫だとは思うが、アイーシャのこともある。
トラブルは、予想外の時に起こるモノだ。
転居しているのに、色々な支払い忘れなどがあったら、目も当てられない。
下手なことをして、オストマルク王国からの信用を落とすワケにはいかない。
そして、ヴィエラ山脈の麓の辺境地への移転について知らない人から、訪問や手紙もくるかもしれない。
ランスロットがいれば、アイーシャ以外のことなら、ソツなく解決させるだろう。
もし、アイーシャが現れても、無神経なランドルフが、有無を言わずに解決する。
そのような様子見には、調度良いだろう。
◇◆◇◆◇
【テレポート】を唱え、私、メグミ、ウォーレン、ユニコーン、グリフォンはヴィエラ山脈の辺境地へ移動した。
滝の前に、コテージを建てて、臨時拠点としている。
さすがに、10人全員が揃うと、コテージ1つだけでは狭いだろう。
住居問題は、改善点の一つだ。
「ようこそ。お越しくださいました」
「はいー。ご苦労さーん!」
「ヴェロニカちゃん、元気にしてたァ?」
「はい。こちらは、順調ですよ」
滝の前の臨時拠点のコテージには、先発隊の隊長のアルフォンスと副官のヴェロニカがいた。
ちょっとした物資の差し入れと、臨時会議用にコーヒーや紅茶を用意がされて出てきた。
「お伝えします。今、麓の村のゴブリン退治し、捕虜にしており、ルークとゲンゾウとフィガロが現地に残っています」
「麓の村は、ここから5キロ位西へ行ったところにあります」
「麓の村が襲われていて、死傷者などが出ていた模様です」
アフォンスからの状況報告を聞くと、予想以上に進展していた。
調査や探索も進んでいるのは、もちろんだが、ヴィエラ山脈の麓の村が、ゴブリンに襲撃されていて、死傷者などが出ていたのだ。
それに気づいた、ニンジャマスターのゲンゾウとトレジャーハンターのルークとスナイパーのフィガロは、ゴブリンの集団をやっつけて、生け捕りにしている。
この辺境の地には、ゴブリンも多数住んでいたようなのだ。
「うーん。なるほど」
「あの弱いゴブリンがいるのか」
「もう少し、前に来た時にチェックしておけば良かったかな?」
辺境の地の状況が、少しわかったのである。
たった2日間であっても、状況が動いているのだ。
ゲンゾウとルークとフィガロの三人は、今は滝から5㎞西側にあるヴィエラ山脈の麓の村にいるのであった。
ユニコーンに乗り、メグミを連れて、ヴィエラ山脈の麓の村に行ってみることにする。