自販機
人は見た目が第一印象
「…ごめんなさい。ありがとうございます」
自販機の併設された多目的ホールにとりあえず連れてくると、彼女は可愛らしい声でそう言った。
アッシュベージュに染められた髪がふわふわと揺れて、頭を下げた彼女の首筋からはほわんと甘い香りが近寄ってきた。
限りなく、さりげなく計算された香水の香りが鼻先をくすぐる。
「…大丈夫?あれ、上司かなんかじゃない?」
話しかけながら、俺は目の前の白いブラウスに目をやる。
さっきまで露わになっていた胸元も、
今はきちんと整えられている。なんとなく、ピンクの色味とレースが見える気がするけどオレの思い込みだろう。
まあ服の下が見えなくても充分だ。
何せ、彼女は俺が今までに目にしてきた中でいちばん整った顔をしていた。
色白、小顔、薄いくちびる、平行二重に黒目がちの目、天然ものの涙袋、
極めつけに小柄で華奢ときている。
はっきり言って喋らなければお人形さんだ。
オレがそんな下卑た思考をしていることも露知らず、彼女はミルクティーの入った紙コップをぎゅっと握った。
「…たまにああいう目に遭うんです。二人きりになったりすると。
お見苦しいところをお見せしてしまって、本当にごめんなさい」
「いや、オレは大丈夫だから。
この後は戻んなくて平気?」
腕時計は昼12:12を示している。
まだ昼休みだし、なんならオレは下に降りて飯を食いに行こうとしたのだがそれどころじゃなくなったし。
可愛い女より大事な生き物が他にあるわけがないだろうよ。