クリスマス特別番外編 聖なる夜の贈り物 前編
長くなりすぎましたので2話に分かれます☆
そして投稿遅れてごめんなさい(ノД`)・゜・。
さらに作中ふざけすぎた事……先に謝っておきます<(_ _)>
特別編は下記の設定でお楽しみください(*^-^*)
・時節は本編の設定とは異なってます。
・アトレーユが女性であることは周知の事実となってます。
・ラスティグとアトレーユの関係は友達以上、恋人未満……かな?
「さ、アトレーユ様♪そろそろご準備をしませんと♪」
満面の笑み、もとい有無を言わさぬような威圧感を漂わせながら、数人の侍女達が一人の男装の騎士を囲っていた。
「こ、このままでよくないだろうか?何故着替える必要があるんだ……?」
獰猛な肉食獣のような目をした女性達に、その男装の騎士アトレーユは必死の抵抗を口にして後ずさる。
「まぁ!今更何をおっしゃいますの?」
「そうですわ!アトレーユ様の為に何日も前から準備をしていたのですよ?」
「王女殿下も期待なさっておいでですわ」
「くっ……」
アトレーユを逃がさんとばかりに、侍女達はじりじりとその距離を詰めた。
いくら見事な剣の腕を持っていたとしても、興奮気味の女性達に詰め寄られてしまっては流石のアトレーユも敵わない。ましてやキャルメ王女の名前を出されれば逆らうことなどできないのだ。
ついにアトレーユは壁際に追い詰められてしまった。その哀れな男装の騎士を、嘘偽りのない姿にするために、侍女達の手が騎士服のボタンを一つ一つ外していく。アトレーユの柔らかな肌の上をたくさんの指が滑るように這う。気が付けば胸を押さえつけていたサラシも外されてしまっていた。
「やっ……ダメ……」
真っ赤になって必死に身を捩るがそれをものともせず、侍女達は責め立てるように次々と手を伸ばす。ついにアトレーユは全ての衣を剥がされてしまった。
アトレーユの真っ白な真珠のような肌が、羞恥で薔薇色に染まる。腕で必死に隠すも、納まりきらない果実が今にも零れ落ちそうになってしまっていた。
「まぁ……なんて見事な……!」
侍女達から思わず感嘆のため息が漏れた。勇ましい騎士服の下には甘く瑞々しい果実のような乙女の姿。そのあまりにも魅惑的な姿に、侍女達は同じ女性でありながら歓喜に打ち震える。そして気合十分腕まくりをすると、可哀そうなアトレーユにとどめの一言を言ってのけた。
「さぁ、まずは湯あみからですわ!お覚悟をっ!!うふふふふふ♡」
「い、いやだぁーーーー!」
アトレーユの虚しい叫びが夕焼け空にこだましていた頃、ラーデルス城の別の場所ではパーティーの準備が着々と進んでいた。
「おぉ~!部屋の中に木が生えているぞ!」
驚嘆の声を上げたのはキャルメ王女の護衛隊の一人、アトス。
「家の中に木を生やすなんて、ラーデルスは不思議なことするもんだねぇ」
酒を片手に木が鮮やかにデコレーションされていく様を眺めているのは、同じく護衛隊の一人、アトスの弟のセレスである。
今日はラーデルス王国の冬至を祝う日である。その祝いのパーティーに王女をはじめ護衛隊の面々も呼ばれていた。今夜の護衛は別の者達に任せるため、アトスとセレスの二人はここぞとばかりに早くも酒をあおっている。
「この飾りはここでいいのかな?」
ガノンは背の高さ買われて、客間に設置されたモミの木の飾りつけを手伝っていた。ラーデルス王国では冬至にこのようにモミの木を室内に設置して、それを美しく飾り付ける文化があるようだ。部屋には緑と赤を主として、金銀の色鮮やかな飾り付けがたくさん施されている。
「ふふふ。こうして準備を手伝うのも楽しいわね」
ロヴァンス王国の王女、キャルメも、侍女達と共に飾りつけを手伝っていた。冬でも枯れることのないモミの木の青々とした枝葉。そこに星や人形など、様々な可愛らしい飾りをつけていく。一つ一つ丁寧に手作りされたそれらの飾りを取り付けていくのは、キャルメにとってとても新鮮で、楽しいものだった。
「やぁ、綺麗に飾り付けるね。私もやろうかな」
楽しそうにしているキャルメ王女の横に、遅れてやってきたノルアードが立つ。王女の小さな手から優しく飾りを受け取ると、彼女では届かない高い所にそれを取り付けた。
「あら、王太子殿下自ら飾りつけをされるのですか?ふふ、素敵ですわね」
揶揄うようにわざと仰々しく褒めたたえるキャルメ。その悪戯っぽい笑顔にノルアードは苦笑しつつも、ふわりと笑って可愛い小悪魔の頬にキスを一つ落とした。
今回のパーティーの招待客はキャルメ王女達のロヴァンス王国一行、そしてその婚約者であるノルアードと、騎士団長のラスティグである。誰もが気心の知れた仲である為、室内は温かみのある雰囲気に覆われていた。
また王城でのパーティーといっても、この国の文化をキャルメ達に知ってもらう為、今回は一般家庭と同じような形での冬至の祝いをすることになっている。
「ところで殿下の大事な騎士殿はまだ来られていないのですか?」
ノルアードと共に客間にやってきたラスティグが、室内をキョロキョロと見回して王女に尋ねた。彼の言う騎士とは勿論、王女の護衛騎士隊隊長のアトレーユのことである。
「アトレーユには特別な任務があるのよ。今はその準備に忙しいはずだわ」
キャルメが何やら楽しそうに声を弾ませている。
「任務……?」
「えぇ。ノルアードからこの国での冬至の文化を聞いて、アトレーユにその役目がふさわしいのではと思って」
「ロヴァンス王国には我が国のような文化は無いみたいだね。子供たちにはちょっと寂しいだろうなぁ」
ノルアードがキャルメの言葉を継いで話す。
「あぁ、もしかしてサントクロストのことですか?」
ラスティグは合点がいったようで、なるほどとうなずいた。しかしアトス達、護衛隊の面々は何のことかわからず首を傾げている。そんな彼らの為にラスティグが説明を始めた。
「サントクロストというのは、冬至の日の夜、子供たちが寝静まった後に現れる精霊の事で、良い子にはプレゼントをくれるというものなんだ」
「へぇ~!プレゼント!それは夢があるなぁ!」
アトスが子供のように目を輝かせてラスティグの話に耳を傾けている。すでに大分飲んでいるのか頬が赤い。
「それでそのサントクロストと隊長の任務となんの関係があるんだ?」
ガノンが未だよくわからないといった顔で問う。アトレーユが任務中なのに、自分だけがパーティーを楽しんではいけないと思っているようだ。
「大抵の家庭でサントクロストをやるのは親の役目なんだよ。冬至の夜に子供たちの枕元にプレゼントを置くっていうね」
ノルアードが楽し気にウィンクをつけて説明をした。どうやらキャルメの思惑に一枚噛んでいるようで、アトレーユの任務についても知っているようだ。
「アトレーユ隊長がそのサントクロストの役をやるっていうわけですか?なんだか楽しそうですね~♪」
セレスがへらへらと笑いながら次の酒へと手を伸ばす。こちらも大分酔っているようだ。
「サントクロストは白い髭の年寄りなんだが、赤い衣装と帽子が特徴でね。この時期だと商店とか街中でサントクロストの恰好をする者も多い。それだけ皆に親しまれている精霊ってことだ」
「てことは隊長は白髭の年寄り姿で現れるってこと?それは面白そうだ☆」
ラスティグの説明に、相変わらずセレスはへらへらとしながらまた別の酒に手を伸ばし始めた。
「飲みすぎだぞセレス。隊長がまだ来てないってのに……」
ガノンがセレスを窘めて、その手から酒瓶を奪う。奪われたセレスはブーブー文句を言いながらも今度は用意された料理に手を出している。どうやら彼の中ではすでにパーティーは始まっているようだ。
「あら?来たんじゃない?」
そんな護衛達の様子を楽し気に見ていたキャルメが声を上げた。どうやらお待ちかねのアトレーユがやってきたようだ。
(や……こんな格好で入れないよ!やっぱり着替えさせて!)
(アトレーユ様、それは出来ませんわ……どうしてもというのなら、わたくしたちクビになってしまいますもの……)
(でも……)
(さぁ!お早く!皆様お待ちかねですよ!)
扉の向こう側では何やら侍女達と揉めているような声が聞こえてくるばかりで、アトレーユは中々部屋に入ってくる様子がない。その問答を耳にしたノルアードがクスクスと笑いながら、ラスティグに言った。
「どうやら今年のサントクロストは随分と恥ずかしがり屋なようだ。ラスティグ、招き入れてあげてくれ」
ノルアードの言葉にラスティグはふっと笑みを浮かべると、わかったと言って扉の方へ足を向けた。そして扉に手をかけると、その向こうにいるアトレーユへと話しかける。
「さぁ、みんなが待っているぞ、サントクロスト!部屋の中に入ってくれ!」
その言葉と共に一気に扉が開かれた。
そこに現れたのは――――
「「「「!!!???」」」」
ノルアード以外の男性全員が息を飲んだ。
見慣れた男装の騎士の姿はそこには無く、いたのはサントクロストの姿をした一人の女性。しかもそれは白髭の年寄りの姿などではない。
赤いベロアの生地はとても短く太ももまでしかない。長く健康的で美しい脚が惜しげなく灯りの下に曝されていた。
足元にはくるぶしまでの茶色い革のブーツ。そして普段は決して見せないであろう白いレースの網タイツが程よく引き締まった太ももまで伸びている。完全に肌を隠さないそれはとてつもない色香を纏っており、素足よりもよほど官能的に見える。
その華奢で甘美な生地を支えるのは、短いスカートの下に伸びる細いガーターベルト。そのベルトが消えゆく奥の世界がどうなっているのか、天の御使いですら堕天させてしまうほどの悪魔の誘惑がそこにはあった。
そんな罪深い無防備な色香を漂わせる下半身とは打って変わって、上半身は羞恥で必死に自身を隠そうとする健気な姿があった。
たわわに実った胸の果実は、柔らかな生地の下にまろやかな曲線を描き、隠そうとする腕から今にも零れ落ちんばかりだ。
紐で編み上げた中央の部分は胸が収まりきらないせいか、下の肌がその網目から見えてしまっている。それでなくともその衣装は肩を思い切り露出する大胆なデザインであり、薔薇色に染まったデコルテの部分には美しく深い谷間が作られていた。
ゴクリと誰かの喉が鳴った。
しかし誰も言葉を発さない。
まるで魅入られたかのように、その美しい精霊の姿に目が釘付けとなっていた。
じっと皆に見つめられたままのアトレーユは、羞恥に瞳を潤ませ頬を紅潮させている。怯えてプルプルと震えるその姿はまさに追い詰められた小動物のよう。ちょうどなぜかサントクロストの衣装である帽子にうさぎの耳のようなものと、お尻の部分には可愛らしい尻尾が添えられている。
そんな恰好で怯えているアトレーユの姿は、一種の官能的な嗜虐性を誘い、見る者の欲望をこれでもかと掻き立てていた。
「……っ……!!」
誰よりも間近でその魅惑的な姿を見てしまったラスティグは、激しく動揺し後ろへとのけぞったまま固まってしまっていた。
「……め、メリークロストマス……」
小さく消え入りそうな声で、教えられた冬至の祝いの言葉を言うアトレーユ。黙って見られるだけの状況に流石に耐えられなくなったようだ。
「……」
「……」
「……」
「……あの……?」
……誰も何も反応しない。
アトレーユは首を傾げた。決死の思いでやってきたのに皆は無反応で戸惑いを隠せない。縋るように一番身近にいるラスティグの方へと腕を伸ばした。
その拍子に支えを失った大きな胸がフルンと震え――弾んだ。
――バターン!!――
「「!!??」」
激しい音がしたかと思うと、モミの木の飾りつけをしていたガノンが、脚立から落ちていた。落ちた時に顔を打ったのか鼻から血を流している。
しかし何故か仰向けだ。
「ガノン……?」
ガノンの様子を心配するアトレーユだったが、可哀そうに、誰もガノンの為には動こうとはしない。その代わりに二人の酔っ払いがアトレーユの下へとやってきた。
「隊長~~~!可愛い~~~♡」
アトスがキラキラと子供のような目で上から下までアトレーユの姿を舐めまわすように見つめる。興奮気味に間近で見てくるアトスに、アトレーユは一歩後ずさった。
「あ、アトス……近い……」
普段の騎士姿だったならば覇気のある声でアトスを注意できるが、今は無防備な姿。羞恥心もあって強く出れない。必死に腕で身体を隠そうとするのが関の山だ。
「あ!隠しちゃダメですよ!こんなに素晴らしい芸術品を、独り占めしてはいけません!隊長!それはみんなのものですよ!」
よくわからない持論を展開して近づいてきたのはセレスだ。先ほどまではへらへらとしていたのに、色気たっぷりのアトレーユの姿を目にするや否や、その目は恐ろしいほどに真剣である。
「み、みんなモノって一体なんの事……」
動揺するアトレーユに対し、少し目の座った様子のセレスは不意に笑い出した。
「ふふふ、ふふふふふ。何って決まっているじゃないですか!サントクロストは良い子にはプレゼントをくれるんでしょ?僕たち護衛隊としてすごくいい子にしてたから隊長からのプレゼントが欲しいなぁ~」
「ぷ、プレゼント?……あ、あぁそれなら侍女が今……」
アトレーユはセレスの言葉にようやく合点がいったと思い、サントクロストに扮して皆に配る予定だったプレゼントを、侍女から受け取るために後ろを振り向こうとした。その時――
――パシッ――
「えっ……?」
突然腕を掴まれてアトレーユは激しく動揺した。セレスの目は完全に座っている。セレスはそのままアトレーユの腕を力強く引き、彼女の柔らかな身体を自分の腕の中に閉じ込めた。そして覆いかぶさるようにして顔をアトレーユの首筋に近づける。
「普段隠しているものをこんなに露わにしているなんて……ホントいけない隊長だなぁ」
耳元で甘く低く囁くようにして発せられたその言葉は、ゾクリとアトレーユの心をざわつかせる。なんだかんだで見目の良いセレスは、数多くの女性を落とすテクニックを心得ていた。今は酔いに任せてその技を存分にアトレーユに対して使っているようだ。
そして不届きにもアトレーユを抱きかかえながら、空いた方の手を彼女の柔らかそうな胸へと伸ばし、今にも指が触れそうになったその時……
――バシーン!!――
「イケナイのはお前だ馬鹿者!」
兄のアトスがすかさず弟の頭をはたく。大分酔っていたセレスは、それで完全に意識が飛んだのか、フラフラとその場に崩れ落ちてしまった。醜態を晒した弟に代わって、アトスがアトレーユに謝ってきた。
「うちのバカ弟がほんっとすみません!こいつ酔うと女の子口説く癖があって……これでも悪気はないんですよ」
普段お茶らけているアトスも、こんな時は流石にお兄ちゃんである。その真摯な姿にアトレーユも少し心が落ち着いてきた。
「いや……セレスらしいな、ははは……」
もはや色々と疲れていたアトレーユは、力なく笑うしかなかった。そんなアトレーユの様子にホッとしたアトスは更に言葉を続けた。
「代わりといってはなんですが、憂さ晴らしにその素敵なおみ足で、私を足蹴にしてくださってもいいんですよ?さぁ、ほら!遠慮なく!!」
「えっ!?」
真剣な謝罪をしたかと思いきや、今度は目をらんらんと輝かせたアトスが、おかしなことを言いながらアトレーユに迫ってきた。
「この豚め!とか言いながらその魅惑的な足でぐりぐりとやられたらご褒美……じゃなくて最高の罰になりますから!さぁ!さぁ!どうぞ存分に足蹴にしてください!」
更に近づいてくる尋常じゃない様子のアトスに、流石に恐怖を覚えたアトレーユが小さく悲鳴を上げる。
「やっ……!」
ご覧いただきありがとうございました☆
クリスマス番外編のくせして前編後編にわかれて、尚且つ投稿遅れるという失態(ノД`)・゜・。
誠に申し訳ございません……。
もっと挿絵を入れたかったのですが文章だけですでに間に合わず……。
後編は挿絵を入れてから投稿させていただきます☆もうしばらくお待ちくださいませ<(_ _)>
さて、作中のクリスマスの表現ですが、冬至の祝いということにしており、またサンタの名前も微妙に変えてあります(*^-^*)現実世界ではないので、特にこれといった宗教の設定をしていないのでそのような表現にさせていただきました。
楽しんでいただけたら嬉しいです(*´▽`*)