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6話 魔王降臨:前編

前回のつづきとなります。

 王城の庭園でささやかな茶会をしていた王女一行と令嬢達は、騎士団長のラスティグに王城内を案内されていた。この場にいるのは、キャルメ王女をはじめ、その護衛騎士である銀髪のアトレーユ、赤髪のガノン、くすんだ金髪のアトス、セレス兄弟、それとお茶会に参加していた3人の令嬢達だ。


「私たちも兵士の訓練場というのは初めて見させていただきますわ!とってもワクワクいたしますわね!」


 興奮気味に話しているのは令嬢の一人、オレンジ色の髪のそばかすが可愛らしいエレンだ。その様子を少し窘めるようにすましているのは、黒髪の美しい少し気の強そうなミイナという令嬢。


「まぁはしたないわエレン様。私たちがそのように男性ばかりの場所に軽々しく出入りするなんて……」


 そうは言いつつもミイナは頬を少し赤らめて、どこか期待の眼差しをしている。

 もう一人の茶色い髪の令嬢レーンは、特に興味がないといったような様子で彼らの後について行っていた。


 令嬢達が楽しそうにおしゃべりをする中、キャルメ王女の護衛役、アトス、セレス、ガノンの3人は、まるで葬式のような暗い表情をしていた。


「……はぁ。ナイルの奴ラッキーだよな。これに参加しなくていいんだぜ?ずるい、激しくずるい!」


 小声でアトスが隣にいるセレスに愚痴を言った。ナイルという人物は彼等と同じく護衛隊の一員であるが、別の任務を負っており今はいない。


「見ろよ、あの隊長の嬉しそうな顔。悪魔だ……悪魔がいる……」


 セレスが、王女と共に前の方を歩いているアトレーユの顔を盗み見てそう呟いた。


 彼らが今から向かうのは、アトレーユたっての希望で、ラーデルス王国の兵士達の訓練場である。先ほどの茶会にて、令嬢達の熱い視線にデレデレしていた所を、アトレーユの凍てつくブリザードで怒られた護衛騎士達だった。隊長の怒りは収まらず、彼らはラーデルス式の訓練とやらでお仕置きされることになったのだ。


「ガノン、お前なんとかしろよ。隊長とは国境警備時代からの仲だろ?」


 縋るような目を向けられたガノンだったが、彼の目は完全に泳いでおり、足取りも引きずられるようにズルズルとついて行くのみであった。



挿絵(By みてみん)



「ダメだこりゃ、意識失っちゃってるわ。ガノンー、おーい」


 そうこうしている間に、一行は兵士の訓練場へとやってきていた。


「……つ、ついに到着してしまった……ここが俺たちの墓場か……(泣)」


「何をしている?早くこっちに来い」


 護衛達が訓練場へ入るのを渋っていると、痺れを切らしたアトレーユが声をかけた。


 その表情には怒りというよりも、早くラーデルス式の訓練を目の当たりにしたいという悪魔、いや魔王のような恐ろしい笑みが浮かんでいた。


 兵士の訓練施設は王城の城壁内の一角に作られており、そのすぐ近くには兵士の宿舎も備えられている。広大な訓練場の敷地には広々とした土の地面や、樹木が所々生えている草地、そして砂地や岩場など、実戦を想定して作られたものだった。


「あちらの方に屋内の施設もありますが、今日はよく晴れておりますので、屋外での訓練をご覧に入れましょう」


 ラーデルス王国の騎士団長であるラスティグがそういうと、彼の指示によって既に準備をしていたラーデルス王国の騎士や兵士たちが模擬戦を始める。急遽集められたとはいえ、それでも100名ほどの兵士たちが集まっていた。彼らは皆腕に赤色と黒色の腕章を身に着けている。


「赤と黒の両軍分かれての模擬戦なのですね」


 訓練場を眺められる少し高い所に作られた見物用の櫓の上で、キャルメ王女は感心したように言った。


「そうです。それぞれの軍があのように自軍の陣地にそれぞれの色の軍旗を掲げて戦います。そして相手側の軍旗を奪えばそれが勝利となります」


 は~なるほど、とそれまでびくびくしていた護衛達も、皆一様にラーデルス王国のより実戦に近い訓練に感心しきっている。


「幸いな事に我が国は自然の守りが強固でございますから、中々実際の戦闘というものがないのが実状でして。その為にこういったより実戦に近い形をとっています」


 彼の部下の一人が号令をかけて、両軍の模擬戦は始められた。両軍の陣営が各々の陣形を保ちながら、相手側に攻め込んでいく。相手の戦略を予想してその都度、将となる人物は指示を出しているようだ。


 両軍の見事な戦略にアトレーユも嬉しそうに拍手を送っていた。そんな隊長のご機嫌な様子に、護衛の面々はもはや自分たちへのお仕置きを、アトレーユが忘れているのではと淡い期待を抱いた。


 その時、赤色の軍旗を守る兵士の一人が、黒側の兵士の弓矢に当たり、岩場の上から落ちてしまった。


「――あ。まずいですね赤軍」


 アトスがぼそりと呟いた。


「ふむ、あの場所の守りが手薄になると確かにキツイかもな」


 アトレーユがアトスの分析に同意を示した。


「なんならお前たちも参戦してみたらどうだ?面白そうじゃないか」


「「「えっ!?」」」



挿絵(By みてみん)

ご覧いただきありがとうございました(*^-^*)


この辺りの話は本編ではバッサリカットしたのですが、実際の展開とは違うと思います。今回はコメディ仕様ということでこんなへんてこな展開(*´Д`)


今回の挿絵は少し画風を変えて、油彩ブラシを使用してます。色んな画風に挑戦です(^^♪


次回もお楽しみに☆

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― 新着の感想 ―
[良い点] ガノンー!! お前はイイヤツだったよ…… 線香の1本くらいたててやるからな…… RIPガノン(´;ω;`)
[良い点] 強気な表情のアトレーユ様、格好いいです!(^^*) 可愛かったり格好よかったり色っぽかったり、その時々で様々なアトレーユ様の魅力を書ける&描けるのが凄いなあといつも思っています。 油彩ブ…
[良い点] うおー。アトちゃんのこの笑みは、美しくも怖い。 三人組。ご愁傷様ですー☆Ωチーン
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