2話 アトレーユ危機一髪! 前編
本編の2話の後くらいのお話☆
本編読んでなくても全く関係なく読めますw
むしろこんなコメディ仕様はパラレルワールドの可能性も・・・w
ロヴァンス王国の騎士アトレーユ・ポワーグシャーは、従兄妹でありロヴァンス王国王女のキャルメ・デローザ・ロヴァンスの護衛騎士隊長である。
銀髪で紫の瞳を持つ、見目麗しい騎士アトレーユは、本名をティアンナ・トレーユ・ポワーグシャーという、れっきとした女性だ。
女性でありながらすらりと背が高く、美しさを兼ね備えた銀髪の護衛騎士は、見た目だけではなく、剣の腕前も相当なものだ。
そんな彼女は女性達からの人気が非常に高く、ティアンナは常に騎士アトレーユとして周囲の期待を背負っていた。
――勿論彼女自身は、騎士として動きやすいように男装しているわけだが。
幼い頃から騎士として育ってきたおかげで、アトレーユとしての姿がすっかり定着してしまい、ティアンナ自身も自分が女性であるということを忘れがちであった。
そんな中、キャルメ王女の婚約者候補に会いに行くため、隣国ラーデルスへとやってきた彼等だったが――
「やれやれ、慌ただしい一日だったな……」
ラーデルス王国へと到着したその日の夜。
国境沿いの深い森を抜ける際に、盗賊の一味に王女の馬車が襲われ、それを退ける為にアトレーユをはじめ、護衛騎士の面々は激しい戦いをする羽目になった。
ようやくラーデルス城へとたどり着き、アトレーユはキャルメ王女の居室の向いに部屋を用意してもらっていた。
今は他の者が王女の護衛を担っているため、アトレーユは休憩中だ。この僅かな時間に食事と、睡眠をとるのである。
「……それにしても風呂くらいは入りたいな……」
昼間の激闘で埃まみれの汗まみれである。流石に王女の側に仕えるのであるから、見た目はもちろんのこと、汗臭くあってはならない。
早速アトレーユは王城の侍女に湯の用意をしてもらうよう、お願いすることにした。
「あぁ、すまないがそこの君」
「はっ、はいぃ!な、なんでございましょう?アトレーユ様っ!」
廊下に通りかかった侍女の一人に声をかけると、何故だかすごく慌てた様子で返事をされた。
「?……いや、その……ちょっと湯を使いたいんだが、用意してもらえないかな?」
「湯ですか……?も、もしかしてご入浴をっ?!」
「あ、あぁ……そうなんだが、身体を拭ける程度でいいんだ。湯をたくさん沸かすのは大変だろうから大きめの桶に――」
「すぐにご用意させていただきますっ!!」
侍女はきりりと表情を引き締めたかと思うと、踵を返してあっという間に廊下の奥へと消えていった。
「……えーと……部屋で待っていればいいかな?」
少しだけ不安を感じながら、アトレーユは部屋へと戻った。
――20分後――
「きゃあ!ちょっと押さないでよ!私がアトレーユ様に頼まれたのよっ?!」
「何よ!生意気ねっ!あんたの方が後輩なんだから、ちょっとは遠慮しなさいよ!!」
「ずるいわ!先輩後輩なんて関係ないじゃない!私たちだってアトレーユ様のお世話をしたいんだから~!!」
激しい女同士の争いを繰り広げているのは、お湯を持ってアトレーユの部屋へとやってきた侍女たち。7~8人はいるだろうか。一体どこからこんなにでてきたのか。
アトレーユは若干顔を引き攣らせながら、彼女達を必死で宥める。
「あ、ありがとう。その……湯を持ってきてくれて。おかげで湯船にたくさん湯が張れたので、ゆっくり浸かれるよ」
「「「いいえ~♪とんでもないですわ~♪何なりとおっしゃって下さいまし~♪」」」
先ほどまでの鬼の形相はどこへやら。満面の笑みで全員がアトレーユへと振り向く。
――しかしその手は未だお互いを掴み合ったままだが。
「そ、そうか……じゃあここはもういいから。その……自分の仕事に戻っていいよ。どうもありがとうみんな」
湯船に湯が張れたのならば、早速風呂に入りたい。
しかし侍女たちのいる前で裸にはなれない。男装していることを、隣国の王城に仕える彼女達は知らないのだ。
アトレーユは元は公爵家の生まれであるが、令嬢としてより騎士として育ってきたため、自分の事はなんでも自分でするのが身についている。風呂だって当然一人で入るし、他人に見られながらというのはとても居心地が悪いのだ。
「はい!お仕事ですね!勿論お任せくださいませ♪」
一人の侍女がにこやかにそう告げると、アトレーユの肩に触れた。
「――え」
お読みいただきありがとうございます<(_ _*)>
後編へ続きます☆
1話だいたい2000字くらいにしようとおもっておりますので、数話に区切られているのもあります(番外編なのにね・・w)
その分作者の挿絵が増えるっていう寸法なわけで、私が大変なだけなんですがね(´・ω・`)
1話がそれくらいの長さが、読みやすいと個人的に思いますので☆
変なとこでぶったぎるな~と思われた方、誠に申し訳ございません(;´Д`)
挿絵をたのしみにしててください(*^-^*)