1話 アトレーユの大事なもの
本編に特に関係のない話ですので、どなたでもお読みいただけます(*^-^*)
※以前活動報告にて、お試しでUPした番外編です。
ここは隣国ラーデルス王国の城の中にある一室。
騎士としてキャルメ王女に付き従いやってきたアトレーユは、寝起きで非常に困った事態に陥っていた。
男装をするために胸を押さえるサラシが一枚もないのである。
寝ている間は胸が苦しいのでサラシは外しているのだが、まだあると思っていた替えのサラシがない事に気が付かず、全てを洗濯に回してしまっていたようだ。
「……どうしよう……」
ラーデルス王国に来ている現在は女性用の上半身につける下着は持ち合わせてはいない。騎士として激しく動く為、胸の大きなアトレーユはきつくサラシを巻かなければ不便で仕方ないのだ。
「……誰かに借りる……そんなことできるわけがないな……くそっ!」
うっかりしていたとはいえ、自身の油断に呆れかえる。男装していることを打ち明けてはいないので、王城の侍女に頼むこともできない。
「どうしよう、どうしよう」
薄手のシャツ一枚着たままの恰好でうろうろと部屋の中を歩き回る。
そうこうしているうちに時間がだいぶ経っていたようだ。
「隊長~、ちょっといいですか?」
ノックもせずにいきなり居室のドアが開け放たれた。
「!!」
そこにいたのは王女の護衛隊の部下で、赤髪のガノンであった。
「――え?……うわっ!!すみません!!」
ガノンはアトレーユがシャツ一枚にその下に何も下着を着けずにいることに気が付くと、顔を真っ赤にして固まってしまった。
すらりと伸びた真っ白い脚が艶めかしくシャツの裾から際どい位置で見えている。薄手のシャツの下には大きなふくらみがその存在をしっかりと主張していた。
しかも女性用の下着を何もつけていないのは明らかである。
ゴクリとガノンは喉を鳴らすと、その美しい肢体に目が釘付けとなった。まるで女神の水浴びでも覗き見ているかのような心地だ。
アトレーユは顔立ちもさることながら、女性としても非常に美しい身体を持っていた。
隊長に怒られることにも気が付かないほどにその美しさに見惚れていると、地獄の底から聞こえてくるような声が響いた。
「おい……」
その低い声に天国から一気に地獄へと突き落とされる。
じりじりと近づいてくる恐ろしい悪魔のような形相に、ガノンは膝が笑うのを感じながらも、真正面から見るアトレーユの豊かな胸から目が離せないでいた。
上のボタンがいくつか外されており、真っ白な真珠のような胸の谷間がはっきりと見える。
凄まじい殺気と色気とで逃げることもできず、そのまま顔を真っ赤にしながら固まっていると、がっしりと肩を掴まれた。
ガノンは瞬時に自らの死を理解する。
(――終わった……俺の人生……でも最期にいいものが見れてよかった……)
美しい天国の景色を見ながら死ねることに、半ば意識を失いかけていると――
「助かった!!よく来てくれた!ガノン!困っているんだ!助けてくれ!!」
「へっ!?」
思いもよらないアトレーユの言葉にガノンは目を丸くする。
「サラシがないんだ!一枚も!どこかから調達してきてくれないか!?お願いだ!!」
アトレーユは自身があられもない姿をしていることなどまるで気が付かない様子で、ガノンに懇願してきた。
少し潤んだ瞳と興奮して頬が紅潮しているその顔は、とても艶めかしく蠱惑的で、ガノンはアトレーユを押し倒しそうになるのを何とか堪えた。
「わっ、わかりましたからっ!手をっ……」
背の高いガノンがアトレーユに両肩を掴まれていると、位置的に色々と全部見えてしまいそうだ。必死で離れるようお願いすると、アトレーユはようやく解放してくれた。
「あぁ、すまない……ところでサラシの件、お願いできるか?――お礼はちゃんとするから」
気まずそうに上目遣いで見上げてくるアトレーユ。
潤んだ瞳に薔薇色の頬。少し乱れた衣服、下着を付けていない美しい身体。
もう色々と限界に来ていたガノンは鼻を押さえながらクルリと回れ右すると、そのままダッシュで廊下を走って逃げるしかなかった。
「ガノン!!私のサラシ―――!!」
残されたアトレーユはその後無事にサラシを手に入れたわけだが、しばらくの間、ガノンとは目を合わせてもらえなかった。
お読みいただきありがとうございました<(_ _*)>
作者の性癖ががっつりとばれますねw
彼シャツが好きです☆
しかも普段男装している女子のw
この挿絵が描きたかったが為に、この話を1話目にしたっていうw
シャツの色は白で考えていたんですが、ポップな配色的にこの色がいいかなと思い変えました。
白いシャツの透け感も捨てがたいですがwぐふふ(おいw)
更新はイラストと同時UP予定ですので、ゆっくりになります。
また本編『薔薇騎士物語』は下のボタンから飛べます☆(本編はかなりシリアスな内容となっております)
本編の挿絵はまだ全然途中なので、ご了承くださいませ★