第94話:魔族襲来!
クックさんとイザベラちゃんは防壁の上に移動してもらって、突破してきた敵を遠慮なく魔法で攻撃して、と指示を出して、私は門を出た。
右側がすぐに山間部となっていて、前面と左は、起伏は穏やかだけど丘のある草原。
魔物の集団はその草原を向かってきているらしい。
獣耳を澄ませれば、その足音がよく聞こえた。
小型が220……大型が50……獣タイプが30くらいかな。ここまで分かるなんて、モフモフさんの探索能力って凄いね。
(距離は300を切りましたね。一気に光の疾風で切り込みますか?)
「そうだね」
脚に力を込めて、地を蹴る。
「光の疾風!」
目の前に、光る闘気で出来た牙が剥き出しの犬の……狼の顔が出来て、瞬間的に加速して、あれ? と思ったときは、集団の先頭に到着。かかった時間、約4秒。
うん。びっくりだよ。
一直線に魔物を牙で薙ぎ払い、最後尾まで駆け抜けた。
小さい爪のあるブーツで地を踏みしめると、しっかりと大地を捉えて、ザザザー! と止まる事が出来た。
この間だけでも、約30体の魔物が光となって消えていったよ。
最初は何が起きたのか分からなかった集団が、土煙を上げながら止まった私に気付いて向きを変えた。
ゴブリンが大半だけど、大型はトロルと、人間の体に頭が牛のミノタウロスが数体いた。
トロルは巨人種で、体長は3メートルを超えてる。ミノタウロスはそれよりも少し小さいくらいかな。
(ボス。数が多いですから横薙ぎにクローを)
「うん。フェンリルクロースラッシュ!」
横に腕を振り抜くと、グローブから出てる光の爪から扇状になって光の刃が飛んでいって、その範囲に居た魔物を光に変えた。
でも、ミノタウロスには構えた盾で防がれちゃった。
(さすがにあいつは無理か。ボス、今度は踏み込んでいって縦にクローを。あの盾を粉砕するつもりで)
「うん! いくよ~! フェンリルクロースラッシュ!」
踏み込んで間合いを詰めて振り下ろすと、3本の光の刃が飛んでいって盾を切断、そのままミノタウロスの体を引き裂いた。
うん。大体分かった。横薙ぎは威力はそこそこの扇形範囲攻撃。縦型は威力が高い一点集中型単体攻撃だね。
そしてもう2つ分かったこと。
1つ目、ぬいぐるみのような獣手グローブだと、剣が握れない。まぁ、グローブの指先から出てる爪が強いからいいけど。
2つ目、クリエイトで翼が出ない。これは単純にモフモフさんが地上タイプだからかな。
「わん!」
バシュ!
「わんわん!」
バシュ! バシュ!
ゴブリンを爪で切り倒して光に変える。
スキルは疲れちゃうから乱発は出来ない。
弱い魔物だったら、爪で切りつけるだけで対処できた。
(ボス……犬じゃないんですから、わんわん、というのはちょっと……)
「細かいことは気にしたらダメだよ? それよりも、ベラルージュで戦った魔物よりも弱いね」
(魔王軍と違い、野生の群れですからね)
囲まれないように、倒した後は疾風で距離を取る。
魔物は弱い……弱いんだけど、数が多い。
「砦に向かっちゃった数は?」
(0です、ボス)
「……え?」
(いや、あのですね、ヘイトを使ったのは俺で、したがって魔物の攻撃目標は俺であって、この魔物達は最初から砦を攻める目的じゃないというか……。で、俺と同一化したサクヤ様に全てのターゲットが向いている状況なんですよ)
「あ~。そっか~~~」
ケモミミになって砦から飛び出す必要なかった~~~! クックさん達を防衛に残す必要なかった~~~!
(ボス! 囲まれました! 真上にジャンプを!)
「わん!」
(……いや、もういいです)
両足を揃えて屈み込んで勢いをつけてジャンプすると、あっという間に20メートルくらいの高さに到達した。
まだ上昇しているよ。力と俊敏が桁外れに高いとこうなるんだね。
(横の空気を蹴って軌道をずらして、手薄なところに着地しましょう)
「待って……空気を蹴れるんだったら……」
クリエイトはこの状態でも使えるから……。
クルンと回転して、頭を真下に向ける。
「クリエイト! 空気の壁!」
真上……ていうか、足元に空気の壁を作って、その壁をおもいっきり蹴る。
地面からジャンプしたときと違って、今度は真っ直ぐ急降下。
「クリエイト! フェンリル・ストライクインパクト!」
勢いをつけて普通のパンチを地面に叩きつけただけなんだけど。イメージとしては隕石落下?
ぶっつけ本番だったけど、地面に大きなクレーターを作って、その衝撃波で範囲に入ってた魔物を殲滅することに成功したよ。
でもね……目の前に地面が急速に迫ってきて怖かったよぉぉぉ! ちびっちゃうかと思ったよぉぉぉ!
このスキル、封印決定……。
残った敵をパンチとキックで倒してたんだけど、突然、目の前に空間の裂け目が出現した。
クックさんが来てくれたのかと思ったら違うみたい。
裂け目から感じるのは、ドス暗く、粘りつくような殺気。
感じる魔力も、あの魔族のあんまんよりも大きいよ……。
その裂け目を警戒して見てたら、足元から気配がして、全身に鳥肌が立った。
(ボス! 後方に避けて!)
「――つ!」
後方に跳んだ後、立っていた地面から剣が出てきた。
間一髪だった。
モフモフさんの的確なサポートがなかったら串刺しだったよ。
空間の裂け目から1体、地面から1体、合計2体の、真っ黒な鎧と骸骨みたいな仮面を被った魔族が現れた。
その2体の魔族が、同時に剣を振りかぶって襲ってきた。
急に攻撃を仕掛けてくるとは思わなかったから、反応が遅れちゃった!
スローでなんとか……。
(ボス! 真上にも魔族の反応が!)
スローを発動する前に、2体の魔族と私の間に着地で土煙を上げながらそれが降ってきた。
「がはは! 強い波動を感じて来てみれば、小さい魔王ではないか」
あんまんまで来ちゃったよ! 3対1はさすがにきついよ……。
でも、突然のあんまんの登場は予定外だったのか、2体の魔族が攻撃を中断して距離を取った。
あんまんはその様子を見てから、私に視線を移して。
……。なんかじっと見詰められてる。
「……小さい魔王よ。その耳と尻尾は反則だ……」
「え?」
何が反則なの?




