第91話:甦る大地! (ちょっと失敗)
2度目の気絶から目が覚めたときには、既に食事の用意がされていて、皆と一緒に食べたんだけど。
「クックック。仕方ないかもしれませんが、あまり美味しくないですな」
「お姉様が作る料理は大雑把ですが、美味しくて一口食べれば疲れが取れますものね」
「井戸も枯れちゃてて~、水もほとんど使えなかったみたいだしね~」
豚肉は塩をまぶして焼いただけ。取ってきた野草やキノコは、皆の飲み水をちょっとずつ出し合って軽く洗って少量の塩で炒めただけ。
私の作る料理とあまり大差ないけど、1番の決め手はエールの存在だよね。
この料理もちゃんとした野菜があればマシだったんだろうけど、食べられる草だしね。
やっぱり、料理は愛情だよ!
ご飯を食べた後、篝火の近くで歯磨きに使う薬草を噛んで、ミントの香りで満たされたあとコップ1杯の水を口に含んでペッと吐き出す。
吐き出された水が、あっという間に吸収されていった。
ここは元々は畑だったのかな?
手で土を掻いてみると、私の知っている適度な水分を含んでしっとりしている畑の土と違って、色が白っぽくなっていて、すごく乾燥しちゃってた。
手で掬ってみても、手の平からすぐにパラパラと落ちていった。
こういう状態を「土地が痩せていく」って、どこかで聞いたことがあったな~。
この村に人が戻ってきても、作物を育てるのに何年も苦労しそうだね……。
村人さん達が戻ってくるまで、このままだったら、この土地は完全に死んじゃう?
今日1日、私は役立たずだったけど、今ここで何か出来ることないかな?
ホーリーフィールドは……ダメだね。リンク・オーバードライブ状態じゃないと使えないし、悪の魔力を中和して魔法を使えるようにする効果だから、土地を復活させることは出来ないかな。
……この枯れた土地に直接エールを使う?
最近はエールのレベルも上がって、窮地以外でも使えるようになってるけど、この広い畑にエールなんて使ったら、その後の副作用が怖いね。
多分、数日間は声が出なくなるだろうね。
う~ん……。エール、クリエイト、魔法……。組み合わせたら、エールの副作用を最小限に抑えれるかも!
私はそう根拠の無い確信をして、腰に差していたシャイニングソードを抜いた。
光り輝く刀身を畑に突き刺して柄に手を添えて……。
「サクヤ様。何をしようとしているのですか? 魔法は禁止されてるはずですよ? クックック」
肩を引かれて、剣から引き離されちゃった。
私はプク~と頬を膨らませて、クックさんを睨んでやった。
「ラグルさんから見張りを頼まれたの?」
「いいえ……」
クックさんが私と視線が合うように屈んで、頭を撫でてきた。
「サクヤ様の普段の魔力は1です。その状態でクリエイトで魔法を作り出せば、足りない分の魔力を補うために、自動で魔力吸収が発動するでしょう。そうなれば、体内の容量を超えて魔力が溢れ、死ぬ場合だってあるのですよ?」
その言葉に、あの城壁を壊しちゃった場面が浮かんできた。
魔力吸収で、私の体から黒い稲妻が出て……。あれって、容量を超えてたから? 魔力6400なんて、私よく死ななかったな……。すぐに放出したから助かったんだろうけど。
クックさんに理由を聞いた。でも、私はこの土地を助けたいよ……。
「クックック。私とサクヤ様がリンクすれば話は別ですがね。魔族の魔力容量を見せてあげましょう」
「え?」
「リンクで繋がった私が魔力を制御しサポートします。さぁ、やりたかったことを見せてください」
「うん! リンク!」
頭の中に自然豊かな風景をイメージする。
畑には種類豊富な野菜が実り、川には清流が流れ、山は新緑に満ち、草原に青々と草花が生い茂る。
大地さん、まだ諦めないで! いつかここに戻ってくる人達に希望を! 頑張って!
「クリエイト! 豊穣の祝福! ハーベスト・ブレーシング!」
あ、英語これで合ってたっけ?
そんな私の疑問を打ち消すかのように、シャイニングソードを中心にして巨大な魔法陣が浮かび上がった。
今までに見たことも無い13重円の魔法陣だ。円と円の間には複雑な模様が描かれて、金色に光っている。
「く! まさかの神の領域ですか……。私の予想を遥かに超えてましたね」
クックさんが崩れ落ちて片膝を着いちゃった!
魔力吸収でクックさんでも耐え切れない量の魔力が流れ込んじゃってる!
それに神の領域って何?
私はただ、この死にかけた土地を元気にしたいだけだよ?
「ク……クック。つかぬことを聞きますが、対象を定めるか、範囲指定はしましたか?」
「……」
思わずクックさんから目を逸らしちゃったよ。
「ちょっ……サクヤ様!?」
私がイメージしたのは自然豊かな風景と、エール対象は大地さん……だったよね? 大地ってどこまでのこと? もしかして、この世界全体が対象になっちゃってる? それって、どれだけ魔力が必要なの?
「サクヤ様! 強制発動してください! 私が耐えられません!」
「う……うん!」
突き刺してた剣の柄を握って、体重をかけて更に押し込むと、光ってた魔法陣から光の柱が天高く伸びて、周囲を照らしながら広がっていって、村を越えた辺りでス~と消えて行った。
よかった……途中で強制発動したから世界全体じゃなかったよ。クックさんも助かったみたいだし。
光を追っていた視線を畑に向けると、乾燥して白っぽくなっていた土が水分と栄養をたっぷり含んだ茶色に変化していって……。
バッシャァァァ!
畑の変化を感動して見詰めていたら、突然水が降り注いできた。
遠くで皆が慌てている声がする。
もしかしてもしかしなくても、やっちゃった?
「クックック。行ってみますか?」
「うん……」
大騒ぎしている村の中心まで来ると、あの降り注いできた水が何なのかがすぐに分かった。
村の中心にある井戸から、凄い勢いで水が噴き出してる。
「おい! 溜め池が地下水の湧き出る泉に変化して、用水路だったものが小川になっちまってる!」
「報告します! 正体不明の光が通り過ぎて行った草原に、季節外れの花が咲き乱れてます!」
「枯れかけの大木が、息を吹き返したように新緑の葉で覆われたぞ!」
「今まで何もなかった畑に野菜が実ってます!」
皆が報告、確認と、右往左往して大混乱です!
私のイメージ通りになってるみたいだけど、これヤバイよね? こんなに大事になるとは思わなかったよ。
「クックさん。馬車に行こうよ」
「はい? なぜでしょう?」
「馬車の中で寝てたふりするんだよ!」
「さ……サクヤ様……後ろ……」
クックさんが恐怖を宿した顔で私の後ろのほうを指差した。
皆が大混乱してるの分かってるのに、今更なんだっていうんだろう?
「寝てたふり? まさかとは思っていたが、正解だったようだな……」
「はうぅ!」
背後から聞こえたラグルさんの声と共に、大きな手で頭を鷲掴みされた!
この状態だと、リンクが続いてる今でも、とてもじゃないけど逃げられないよ……。
「今回はクックさんも共謀者か……」
「いえ……あの……クックック。サクヤ様は凄かったのですよ? 神の領域である大地改変の魔法をですね、豊穣の祝福! ハーベスト・ブレーシング! と……」
神の領域って……そういうことだったの? 凄く魔力を消費するはずだよ!
「なぁ、1つ聞いていいか? 豊穣の祝福とハーベスト・ブレーシングって同時に唱えたら、魔法の重ね掛けになってないか?」
「「……あ」」




