表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/186

第90話:無理なものは無理なんです。

「まあまあ! どうされましたのお姉様! 泥だらけではありませんか!」


 手を繋いで帰ったら、私の惨状に驚いてイザベラちゃんが大声を上げた。

 その声に皆が集まってくる。

 手を繋いでるのが恥ずかしくなってきて、私は手を離そうとしたんだけど、クックさんがしっかりと私の手を握ってた。

 恥ずかしいけど、まあ……いいかな。


「森に行って魔物と戦ったんだけどね(クックさんが)、食べられるものがどれか分かんなかったよ」

「なんだ? 嬢ちゃんも森に来てたのか? しかし、おかしいな? 俺達の誰とも会わなかったみたいだが……。嬢ちゃんはどこの森に行ったんだ?」

「え? あっちだよ?」


 すでに日が当らなくなって、真っ暗になった森を指差した。


「あ~。逆方向の森に行ったのか。いいか嬢ちゃん。食料になる草を探すときは、嬢ちゃんが行った森よりも、俺達が行った森のほうへ行くべきだ」

「どうして? 森に違いでもあるの?」

「ここらの地形は山と山の間にある狭い平野だ。そういう地形だと、太陽の光を受ける時間が、場所によっては長くなったり短くなったりするんだ。食料になる草だったり木の実なんかは、日照時間の長いところじゃないと育たない。特に山の麓にある森なんかだと、その日照時間の影響は大きいな」

「ロイさんは凄く物知りだね」

「クックック。よく覚えておいてくださいね、サクヤ様」

「私じゃなくて、クックさんが覚えたらいいよ」

「私では無理ですね……。難しいことを覚えても、3秒リセット機能がありますから」

「それって、覚える気がないってことだよね!?」


 皆と大笑いして、笑って出てきた涙を手の甲で拭いていたら、クックさんが頭を優しく撫でてきた。

 完全にそのクックさんの行動は不意打ちだった。

 心臓の動きが速くなって騒ぎ出す。

 

 このドキドキは吊り橋効果~! 収まれ~!


『ボス』

「うひゃ!」


 ドキドキを抑えようと集中してるところに、後ろから声をかけられてビックリしちゃったよ。


「な……何?」

『これはどこに置いときましょう? 早速、捌いて食べますか?』


 問いかけてきたモフモフさんの足元を見たら、長さが5メートルくらい、太さが50センチくらいの縞々模様のロープみたいなのが転がってた。

 何だろ、これ?


「お、トショクビッグスネークじゃね~か」


 スネーク……へ……蛇!?


「あう……」


 て、こんなことで気を失っちゃダメ! 貴重な食料なんだし、これからも冒険者として旅をするなら、何度も見ることになるかもだし!

 力が抜けて倒れそうになるのを気力を振り絞って踏みとどまる。

 私は勇者! 皆に強いところを見せなくちゃ!


「す……凄い蛇を取ってきたんだね。このお腹の辺りが膨らんでるのは何なのかな?」

『こいつが食べたウサギかネズミが、半分溶けて入って――』

「……はふぅ……」


 変な声を出して意識を失いました。

 皆に強いところを見せる? ごめん。無理だったよ。

 余計なことを聞くんじゃなかったよ……。




「う……うん?」


 目が覚めて辺りを見回すと、いつも見慣れた馬車の室内だった。

 どうやら気を失って、馬車の中にある椅子に寝かせれていたらしい。


「お姉様! お目覚めになられたのですね!」


 イザベラちゃんが勢い良く抱きついてきて、ポヨヨンと柔らかくも弾力のある胸を顔に押し付けてくる。

 ……イザベラちゃん成長してるなぁ。13歳でこれだから、もっと大きくなるんだろな~。お姉さんはちょっと悲しくなってきちゃったよ……。


「ささ。お姉様。泥で汚れたお召し物を着替えましょう」

「う……うん」


 私が返事したと同時に、イザベラちゃんの手によって服とホットパンツが脱がされていく。

 あ……あれ? 強制お手伝いから抜け出せない流れかな?

 気絶から目覚めたばかりで力が入らないから、有り難いんだけどね。


「お姉様って体系がお変わりませんのね。半年前に買った服がぴったりですもの。私なんて、お姉様と一緒に買った魔導師ローブがもう小さくなって、そろそろ大きめの物に買い換えないといけないですわ」


 お姉様って体系が変わらない……私なんて大きめの物に買い換えないといけないですわ~ですわ~……ですわ~。

 ――断崖絶壁から絶望の谷底へ叩き落されました!




 着替えが終わって馬車から外に出ると、既に日が沈んで暗くなっている広場に篝火が灯されていて、その明るく照らされた所に皆が集まって人の輪が出来て、何やら明るい声が聞こえてきた。


「なになに? 皆楽しそうだね?」

「お、サクヤちゃん目が覚めたか」


 ラグルさんに手招きされて、トコトコと歩いていって、背が高いラグルさんの脇腹のところから顔を覗かせた。


「モフモフさんが野生の豚を数匹狩ってきたんでな。これから解体するところなんだ」

「へ~。モフモフさん凄いね」


 皆の輪の中心にそれが見えた。

 モフモフさんに喉を噛み千切られて、目玉が飛び出ている豚がね……。


「……はほぅ……」


 本日2度目の気絶です。無理です。ごめんなさい。

 

 ……いいんだもん! 違うところで役に立ってみせるから!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ