第84話:恐怖の対象になっちゃった!
瓦礫の爆弾が収まったと同時に、私を包んでた鎧が光り出し、空に浮いていって、クックさんの姿になった。
オーバードライブの効果も切れて、ステータス1に戻っちゃった。ヴァルキリーモードも時間制限があるみたいで、ちょっと残念。
「お姉様の身に纏っていたその鎧がクックさんでしたの?」
「うん。リンクがオーバードライブして合体したんだよ」
「クックック。サクヤ様との合体は心地よかったですよ。まさに一体となった訳ですからね」
と、クックさんがうっとりしながら言ったら、ピキーンと、時間が凍りついたような静寂の後、周りの男の人達から殺気みたいなのを感じたけど、どうしてだろ?
「お姉様!」
「え? 何?」
イザベラちゃんが、フンス! フンス! と、鼻息を荒くして、両手を前に出してゆっくり近づいてくる。
ヤバイ予感しかしないよ。
「私ともぜひ物理的に合体をしてくださいませ!」
「ちょ! 物理的にってどういうこと!?」
飛び掛ってきたイザベラちゃんをヒョイっと避けて、翼を広げて空に逃げた。
この翼はクリエイトでマントを変化させたものだから、ヴァルキリーモードが解除された後でも残ってたんだけど、魔力が1に戻っちゃってる影響からか、フワフワと浮かぶのが精一杯だったよ。
翼は目立っちゃうし、マントに戻しておくことにしたよ。
爆発で大炎上してた街の火を魔導師さん達が水魔法で鎮火したあと、そこから救出されてきた負傷した騎士さん達や兵士さん達が、ガラガラガラと荷車に乗せられて大ホールに運ばれていく。
落ち着きを取り戻していた大ホールが、今や野戦病院の如く、負傷者で溢れかえっていた。
私の魔法でだけど。
「サクヤっち~。こっちに来て手伝って~」
「あ、うん」
リリーに呼ばれて、負傷者さん達が一箇所に集められている中央に駆け寄った。
幸いにも死者は出なかったみたいで、重傷者もいないみたい。
でも、みんな痛そう……。
「何をしたらいいの?」
「えっとね~、頑張って~って応援して~」
「エールを使うの? リリー頑張れ~」
リリーの体が僅かに輝いた。
窮地でもなんでもないから10%くらいの効果だけど。
「おお~。魔力がちょっと戻ってきた~」
「え?」
「バリアが破壊されたときにね、私の魔力も吹き飛ばされちゃったんだよね~」
「そうなんだ?」
バリアを維持するだけでも凄く魔力を消費してたのに、そのバリアが破壊されたことで、術者の魔力が霧散しちゃったらしいよ。
「あ、そうだ。リリーとはリンクしたことなかったよね?」
「そういえばそうだね~。私は戦闘タイプじゃないし」
「だったらリンクしようよ。私も回復魔法で手伝うよ」
リリーとリンクしたら、私も回復魔法が使えるはずだよね? クリエイトもあるし。
と、いうことで、リリーとリンクしたあと、負傷者さん達に向かって両手を伸ばして。
「エクステント~!」
「「「うわぁぁぁ!」」」
寝込んでた人も跳ね起きて、大ホールに居たみんなが蜘蛛の子を散らすように逃げて行っちゃったよ!
大ホールに残ってるのは、呆然とその様子を見ている私とリリー。そして、転げ回りながら床をバンバン叩いて大笑いしてるクックさん。
「あれだね。みんなサクヤっちの魔法を怖がってるね」
「え~……」
西地区を壊滅させて、多数の負傷者を出しちゃった私の魔法は、皆にトラウマを与えちゃってた!
と、そんなことをやっていると、盗賊さん達が大ホールに入ってきた。
ラグルさん達と無事に合流できたみたいでちょっと一安心。
「師匠~!」
叫びながら、ジスケルさんが猛突進してくるのが見えた!
これは攻撃とみていいよね! まだ操られてるんだよね!
今の私はリリーとリンクして防御特化になってる。使えるのは回復と結界魔法くらいだけど……。
「リフレクト!」
前面に盾形の結界が出現した。私の姿をすっぽりと隠せるだけの小さな盾型の結界だけど。
その反射する作用を持った結界にジスケルさんが激突。結界が光り輝いて、その突進エネルギーを数倍にして反射カウンター炸裂。
空中に弾かれて、どんな回転をしてるか分からない錐揉み状態になって床に落下した。
ダメージは確実にあったはず……勝ったね!
「この旦那はホーリーフィールドっていうので、既に呪縛から開放されてたんだがな……」
「「「すごく謝りたいと言ってたが、こりゃヒデェ……」」」
あ、あれ? 私またとんでもないことしちゃった?
でもあれだよね! 今まで不意打ちに近い攻撃されてきたんだから、疑って当然だよね?
騒ぎが一段落して、私に用意されてた部屋で休んでいたら、1人の兵士さんがやってきて謁見の間に来るようにと言われた。
王様が待っているらしいけど、これってやっぱり、街を破壊しちゃったことを怒られるパターンだよね?
何か言われる前に入った瞬間に謝っちゃおう!
そう作戦を決めて、後ろにクックさん、モフモフさん、イザベラちゃん、リリーを従えて謁見の間に向かったんだけど、なぜか私達は、正面入り口じゃなくて、その先の王様が入るときの横の扉に案内された。
ここから入ると、私達は玉座のほうから入ることになるけど……。
悩んでると、兵士さんにそのまま入るように促されて、仕方なくそこから入ることにした。
そして、先に謝っちゃおう作戦決行!
「あの、街を破壊しちゃって」
そこまで言ったとき、玉座の横で私に向かって跪いて頭を下げてる王様が目に入った。
もしかして、王様にも怖がられてる?
「サクヤ様! 国を守っていただいたこと、心から感謝いたします!」
その言葉を合図に、謁見の間で跪いてた騎士さん達と兵士さん達が、一斉に立ち上がって整列した。
この場に居るのは、ベラジュール王国の人達だけらしい。
「掲げ~剣!」
皆が鞘から剣を抜いて、両手で持って剣を前に突き出した。
最上級の敬礼らしいけど、私ってそんなことまでしてもらうことしてないよね? 逆に街を破壊しちゃった訳だし。
「あの……私、街を破壊しちゃって」
「何を言うのですか。あのまま城が落とされていたら国が滅んでいたのです。街の被害などそれに比べれば些細なこと」
「そう……ですか」
とりあえず国を守れても、まだ半分は魔王軍に占領されてるから、復興は大変だと思うけど、私にはその辺の知識はないから、ここは素直に受け止めておくしかないのかな。
「そこでじゃ、この功績を称え、伯爵の位を授けたい」
「え? いやです」
あ、思わず即答しちゃった! だってだって、フェルド王国でも貴族の位をもらっちゃって、流れに乗せられて公国まで作っちゃったのに、この国でも貴族になっちゃったら、冒険者という自由に動ける権利がなくなっちゃう!
「なぜ拒否させるのか、理由を伺いたいのですが」
「えっと……」
「クックック! 私が答えましょう!」
クックさんが割り込んできた! でも、断る理由に悩んでいたから、クックさんに任せちゃおう!
自信満々に答えるって言ってるんだから、きっと上手に私の考えを説明してくれるよね!
「何を隠そう、サクヤ様は、人族の王などよりも高貴なお方! そう、魔王なのですよ!」
ちょっと~~~~! それって王様に口止めされてたことだよね! 私が皆から怖がられちゃう!
「「「うん。皆知ってた」」」
………………。
……チ~ン。
『ボス!』
静寂を破って、モフモフさんの声が謁見の間に響き渡った。
いったい何!? と、皆が一斉にその声の方向に視線を向けると。
『扉が小さくて、体が嵌ってしまって身動きが取れなくなってしまいました! クゥゥゥン……』
扉から頭だけ覗かせて、悲しそうな顔をしてるモフモフさんがそこに居た。
当然の如く、重苦しい雰囲気だった謁見の間は大爆笑に包まれました。




