第77話:押してもダメなら?
「で、説明してくれるか?」
ラグルさんが、私に平伏してる皆を見ながら言ってきた。
ベラジュールの王様だけは、平然と私の横に座ってるけど、若干、額から汗が流れてる。
「グラスを落として割っちゃっただけだよ?」
これが真実なんだから、他に言いようがないんだけど。
「ああ。そいうことか。サクヤちゃんが魔王だということは皆知ってるのか?」
「うむ。我がこの部屋に居る皆に話した。他の者には勇者として通すようにと、フェルド王からの伝書に書いておったので言ってはおらんが」
ラルク王が、汗を拭きながら説明した。
これあれだね。皆は、私が悪の魔王と同じ力を持ってるって勘違いしちゃってるね。
「ラグルさん。皆に説明してほしいんですけど……」
「ああ。そうだな。みんな聞いてくれ。このサクヤちゃんは――」
「クックック! 何故怒ってるのか、簡単なことでしょう!」
今まで居なかったのに、いつの間にかクックさんが部屋の中に居たよ!
そして話がややこしくなるのが確定しちゃったよ!
「さあ! サクヤ様! 思っていることを言ってあげてください!」
「えっと……」
皆の視線が私に注がれてるよ。
ていうか、途中から何も聞いてなかった私に何を言えっていうんだろ?
思考をフル回転させて、この人達が言っていたことを思い出す。
……まあ、あれだね。さっぱり分かんない!
ここは適当に、却下されそうなことを言ってみよう。
「聞いてて思ったんだけど、みんなは国別で部隊を組んでるんでしょ? (ここまでしか聞いてなかったんだけどね)」
「その通りですが……」
「だったら、混成部隊を作っちゃおうよ」
「「「は?」」」
「ヘルブナンドの魔導師さん達の殲滅力はきっと戦力になるよ」
「魔法が使えない状況で魔導師が役立たずなのは知っておいででしょう! ロシキアの軍を預かる身としては、役立たずな魔導師たちを守るなんて手間は裂けませんぞ!」
そうだった! 忘れてたよ!
……どうしよう。ここまで言っちゃって今更撤回なんて出来ないよね。
「押してダメなら引いてみな作戦……みたいな?」
「「「な? と言われましても……」
うん。私も分かんない。
「そうか! そいうことか!」
「クックック。ラグル殿もサクヤ様の意図を理解出来ましたか」
「ああ! サクヤちゃんの考えは凄いな!」
そのサクヤちゃん本人が分かんないんですけど。
そんな私を置いてきぼりにして、ラグルさんが円卓のテーブルの上に王都の地図を広げた。
「いいか。城を囲っている城壁の出入り口は2つ。正面の城門と、裏の通用口だ」
みんなが地図を覗き込んで、私はその後ろで騎士さんの背中を眺めながらお菓子をポリポリ。
「この2箇所から打って出る」
「しかし、それでは前と同じじゃないか? 無駄に負傷者を出し、陥落寸前にまで追い込まれたのを忘れたのか?」
「そこでだ、ここからがサクヤちゃんの押してもダメなら引いてみな作戦なんだ」
ここで繋がった!
「サクヤちゃんが言った混成部隊。押して引く。後はサクヤちゃん本人に説明してもらおう」
「はへ?」
ここで私に回ってきた!
なんとなくなイメージでしかないけど、私にも作戦が浮かんできた。
「あのね、バリアの中だったら魔法をつかえるでしょ? だったら敵のほうをバリアの中に誘い込んじゃえばいいんだよ。最初は押して、そして引いてって。出入り口のところだけバリアを解除してたら、敵は多分だけど中まで追いかけてくるんじゃないかな? で、そこで待ち構えてる魔導師さんたちの魔法で殲滅」
で、合ってるよね?
皆の顔をじっと見ると、今度は跪いて頭を下げてきた。
「感服いたしました! 今までの我々の考えを反省しなければです!」
「だな。外で戦うことばかり考えてしまっていた」
「そうだよ~。押してばっかりでもダメなんだよ」
恋愛はね……。
「クックック。後は我々で細かいところを纏めましょう。もう夜も深い時間です。サクヤ様はお休みになってください」
「うん。そうするよ」
この作戦がどうなるかは分かんないけど、クックさんとラグルさんが居るから大丈夫かな?
私はモフモフさんをモフモフして寝よ。
そして翌朝。
広場に整列した人達。
この人達は、各国からここに集まった人達の中でも精鋭と呼ばれるくらいの強さらしい。
その中でも、冒険者のラグルさんが群を抜いて背が高くて一番強そう!
あ、ラグルさんに会えたことが嬉しくてつい興奮しちゃった!
えっと……部隊構成は、まずは外に出て敵を釣ってくる冒険者さん達。
ある程度の力があって、引き際のスピードも要求されるから、この役目は冒険者で構成された。
次が、広場の中央で中に入ってきた敵を受け止める壁役。
この役目は当然、大きい盾と鎧を装備した重騎士さん達だね。
そして、この作戦の要。魔導師隊と、それを援護する弓隊の人達。
お城のテラスと、兵舎の屋根の上から入ってきた敵を広範囲の魔法で一網打尽にして、撃ちもらした敵は弓隊の人達が狙撃。
イザベラちゃんも魔導師隊に加わってる。
この布陣で、正面の城門に60人。裏の通用口に40人の配置。
バリアの部分解除と閉鎖は、サポート特化のエキスパート、リリーの役目になったよ。
バリアの開閉で処理能力を超えないように、中に入れる敵の量を調整……。リリーが一番責任重大じゃないのかな?
クックさんとモフモフさんは、万が一に備えて後方待機。
そして私も頑張っちゃうからね!
「クックさん。リンク――」
「クックック。サクヤ様は危ないですから、王とお城の中で大人しくしててくださいね」
「あ、うん……」
応援頑張っちゃうからね……。




