表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/186

第75話:奇跡は忘れた頃にやってくる?

 私達が到着したところは、城壁にある小さな通用門だった。

 食材とか、いろいろな物を運び入れるための出入り口かな。

 そこから中に入ると裏庭みたいなところになっていて、その広場に沢山のテントが張られていた。

 歩道になっている石畳の通路を進んでいくと、疲れきって剣にもたれ掛かって座り込んでる兵士さんや冒険者さん達がいっぱい居た。

 

「みんな気力がないね」

「まあ、バリアが修復できたといっても、一時しのぎですからね」

「お姉様の到着でみんな元気になるはずですわ!」

「そうだといいけどね」


 包囲されてる状況で楽観はできないけど、持ってきた回復薬で少しは好転するかな?

 そういえば、負傷者さん達やラグルさんはどこにいるんだろ?

 このテント郡にはそれらしい人達は見当たらないな……。

 近くに居た兵士さんに聞いてみようかな。


「すみません。負傷者さん達とラグルさんはどこに居るんですか?」

「あ? なんだお前は?」


 て、睨みつけられた瞬間、モフモフさんの大きく開けた口が、その人の頭からお腹にかけてスッポリと咥え込んじゃった。


「クックック。身体を2つにされたいですか? 腹から上はモフモフさんの胃の中ですが……」

「ぐぉぶお! ずびまぜんでした!」


 手足をバタつかせながら謝ってきたけど、これってどう見ても私達のやりすぎ……。

 で、冒険者さんは泣きながら、負傷者は城の中に居るって教えてくれたよ。

 最初から素直に教えてくれたら泣かずに済んだのに。


「クックック! いいですか良く聞きなさい! この方はサクヤ様! 私達の主で勇者なのですよ!」

「ここで私の名前出すの!? 私が命令して泣かしたみたいになっちゃうじゃない!」


 私はちょっと聞いただけなのに、トラブルの主犯格にされようとしてるよ!

 そうなる前に私はお城の中に急いで向かった。

 周りからの視線が痛かったよ……。


 お城の裏口から中に入ってしばらく廊下を歩くと、大広場に出た。

 普段はここでダンスパーティーとかやってるんだろうけど、今は野戦病院って感じになってる。

 沢山の呻き声と血生臭さが充満してる。

 私はそこでラグルさんを見つけることができた。


「ラグルさ――」


 駆け寄って、言葉を無くした。

 ラグルさんの右腕と左脚が無くなって、力なく横たわってた……。

 その傷口からは、包帯の上から今も血が滲み出てきてた。

 呆然として立っていると、ディックさんが声をかけてきた。


「魔柱石探索破壊作戦の途中で魔族に襲われて、ラグルの旦那が撤退の時間を稼いでくれたんだが、見ての通りだ。あの魔族、クックさんよりも強いぞ……」

「クックック……。模擬戦のときは私も本気ではなかったですが、このラグル殿をここまで傷つけることが出来るとなると、その言葉は真実でしょうね」

「……そうだ! 今はそんなことよりも回復薬を!」


 周りには腹を切り裂かれて息絶えようとしてる人も居る! こんな重傷者さんや、身体の一部を失った人に持ってきた回復薬が役にたつかどうか分かんないけど!


 急いで荷台から薬の入った箱を運び込んで、箱の蓋を開けた。

 そこには、1枚の張り紙があった。


 『急いで掻き集めた回復薬なので、品質はよくて中級までしかありませんが、どうかこれで皆様の助けになりますように』


 中級回復薬……どこまで効果があるのか?

 とにかく、ラグルさんに飲ませなくちゃ!

 箱の中に並べられた回復薬の入った小瓶を手にとって、ラグルさんの元へ駆け寄った。

 そのときに、近くに居た兵士さんが、「回復薬ってあんなに光っていたっけ?」とか言ってたけど……。


「ラグルさん……」

「サクヤちゃん……なんだ、ここまで来ちゃったのか……」

「うん……。これ飲んで。私達がここまで持ってきたんだよ」

「ああ……」


 瓶の蓋を開けて渡すと、一気に飲み干した。

 傷口だけでも塞がってくれるといいなって思ったんだけど、ラグルさんが薬を飲み干した瞬間、身体全体が光り輝いて、その光が失った右腕と左脚のほうに集中していって、腕と脚の形になったと思ったら、

一気に光が弾けた!

 その光を見て皆が集まってきて……。


「おい……あんた右腕と左脚を失っていたよな? それなのにどうして今、右腕と左脚があるんだ?」

「ああ……あるな」


 ラグルさんが不思議そうに、右手を握ったり左膝を曲げたり伸ばしたりしてる。


「元通りになってるだと! その回復薬か? おい! アイテム鑑定できる奴はいるか?」

「私ができます!」


 と、呼びかけに若い女性が駆け寄ってきて、中身の入った瓶に右手をかざして魔法を唱えると、文字が浮かび上がってきた。


【普通回復薬(最大級のエール付与)】


 一瓶飲めば、身体の欠損箇所も再生可能にまで強化された回復薬。

 生きてさえいれば、効果は発動され、瞬時に回復が可能。

 飲むことが困難なときは、その部位に振り掛けることでも効果は発揮できる。

 

 10倍に薄めても上級回復薬と同等の回復効果がある。


【注意】


 エールの目的がこの場に限定されているため、エリア外で使った場合、その効力が消滅する。

 転売目的で触れた場合も同じである。




「「「うおぉぉい! なんじゃこりゃ!」」」


 説明を見てた人達から驚きの声が上がったよ。


「……クックック。サクヤ様。分かっていて聞きますが、回復薬に何かしましたか?」

「エールって、お姉様だけが使える固有スキルでしたわよね?」

「うん……。あれかな。出陣式の前に、頑張って皆を助けてねって言ったら、光り輝いたことがあったけど」

「それですよ!」

「ですわね!」


 やっぱりそうなんだね。あの時は何気なく言っただけだけど。そして今まで忘れてたよ。


「重傷者にはそのまま使え! それ以外の者は水で薄めて使え! いいか! 10倍に薄めて上級だぞ!」


 と、動ける人達が皆で分担作業で手際よく回復作業をしていって、このホールにいた負傷者さん達は全員回復していった。


 このホール内でしか効果が発揮されない、他に使い道がない奇跡の回復薬……。

 まぁ、とにかく、私達の最優先クエスト完了だね!

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ