第74話:世の中、うまくいくことばかりじゃないよね。
城に張られているバリアは、そう長く持ち堪えられなそう。
戦闘経験があまりない私にだって、それくらいは分かった。
私達の到着は、まさに間一髪ってとこだったのかな?
「王都正面の平野に陣取っているのが魔王軍の本陣ですね。それ以外の部隊は街に入り込んで、城を攻撃しているようです」
「浮遊魔力がすごく濃いね。サクヤっちの優しい魔力と違って、やっぱり禍々しい力の魔力だね」
「リリー。魔法使える?」
「ここだったら荷車の強化魔法は使えるけど、お城のバリアを強化しようとしても途中で掻き消されちゃうね」
「てことは、王都の近くに魔柱石があるのかな?」
「でしょうね。さてさて、クックック。魔法が使えないとなると、少々やっかいですね。ここまで防衛側が追い込まれたのも納得です」
「うん……」
集団戦闘では、魔法の援護はすごい助けになる。
攻撃でも防御でもね。
それが一方的に封じられるってことがどんなに辛いかだね。
王都の外周の防壁までは、ここの見下ろしてる地点から直線で500メートルくらい。
リンクでモフモフさんと繋がって俊敏を上げればすぐに到達出来そうなんだけど、その前にバリアが消えちゃいそうだよ。
「リリー。飛んでお城まで行ける?」
「クックック。バリア補強のために先行させるのですね? 幸い、飛行型の魔物はいないようですし、バリアもサクヤ様の祝福を受けた我々なら、魔族と言っても通過できるはずです」
「おお~。ナイス作戦だね、サクヤっち! 先に行ってくるね!」
リリーが翼を広げて舞い上がって、お城に向かって飛んでいった。
次は私達が取る行動だけど。
「私達はなるべく戦闘を避けて、城下町を駆け抜けてバリアの中に到達するよ! モフモフさんは私とリンク! その後は荷車を無事にお城の中に届けることを第一目標に! イザベラちゃんは魔法が使えないから荷車の中に!」
「クックック。私はどうしましょう?」
「クックさんは、私の後方に付いてきて!」
「御意!」
私を全力で守ってって言いたかったけど、まあ、いいかな……。
荷台からマントを取って羽織り、腰に短剣を差して準備完了!
……これだけで準備が終わっちゃう私の装備って不安だらけだけど、これ以外は装備出来ないから仕方ないね!
しばらくして、お城を守っているバリアが再び光を取り戻したのが分かった。
リリーのほうは成功したみたいだね。
今度は私達の番だよ!
「じゃ~、行くよ! ミッションスタート!」
合図と共に、急斜面になっているところを勢い良く滑り降りて……。
ボコ!
あ……あれ? 小さな岩の出っ張りに足が当って体が浮き上がりました!
なんとか右足で着地! でも勢いを殺せないで左脚が前に出る! 止まれないから今度は右脚が出る!
あれだね、急な下り坂を勢い良く走っちゃうと何故か足が自然と前に出ちゃって止まれない現象……。
「うっ……わわわぁぁぁぁ!」
止まらなくなった足で一気に崖を駆け下りたよ!
今の私はモフモフさんとのリンクで、力150、俊敏500、魔力120になってるんだけど、よく無事だったな~って思うよ。
て、まだ勢いが収まらないのに、目の前に大きな岩が突き出てる!
「とお!」
軽くジャンプでそれを避けて……あ、あれ?
ほんのちょっと跳んだだけで、100メートルくらいジャンプしちゃいました!
すごい速さで景色が流れていって、地面が迫ってきてまたタイミングよく右足で地面を蹴ると、また軽く100メートルの距離をジャンプ。
これあれだね。私の体重の軽さと力150ていうパワーと駆け下りた運動エネルギー? が合わさった結果?
とにかく、あっという間に、50匹くらいのゴブリンの集団を率いている指揮官みたいなオーガが目の前に……。
て、ダメじゃん! このままだと集団の真ん中に突っ込んじゃうよ!
ゴブリンはともかく、オーガなんて相手にしたくないよ!
そうだ! このままの運動エネルギーだけでオーガだけを攻撃できたら……。
「三段跳びキ~~~ック!」
空中でクルクルと前転をして右足を勢い良く突き出す!
ヒュ~ン。ストン。
はい! 余計な前転で勢いを完全に殺しちゃって、技の叫び声を聞いて振り向いたオーガの目の前に綺麗に着地しちゃいました!
「こ……こんにちわ」
「……」
……。
「グオァァァ!」
「だよね~!」
私のいきなりな登場に驚いて呆然としてたゴブリン達が、オーガの咆哮と同時に気を取り戻して、一斉に飛び掛ってきた!
「わわ!」
振り下ろされた剣を短剣で弾くと、何故か振り下ろしたゴブリンのほうが吹っ飛んでいっちゃった。
力が150だと、ゴブリンの力を軽く凌駕しちゃってるみたいだね。
加えて、俊敏500で、簡単に攻撃を避けることが出来た。
後は、攻撃の問題だけど、何も考えないで突っ込んでいってみよう!
「たあぁ!」
足に力を溜め込んで、一気に地を蹴る!
その瞬間、ガシ! と、太い腕が伸びてきて、脇に抱きかかえられちゃった。
「たあ! じゃありません! 何やってるんですかね! このお子様は!」
クックさんだったよ。で、お腹を抱きかかえられて、まるで荷物扱いのような格好になってるんだけど……。
「もうちょっと魔王として扱ってほしいな!」
「何が魔王ですか! 集団の真ん中で半べそかいてたお子様が!」
「かいてないもん!」
と、言い争いながら、モフモフさんの光の疾風でゴブリン達と家の瓦礫を吹き飛ばしてできたバリアまでの道を駆け抜けていったよ。
さすがに、モフモフさんとクックさんのスピードにオーガも付いてくることが出来なくて、私達は無事に? お城の中に入ることができたよ。
それにしても、戦闘は避けるって言ったのは誰? おもいっきり戦闘になっちゃってたじゃない!
……全部私だよ!




