第70話:モンスターよりも怖いもの。その名は説教!
最強のボディガード、プニプニさんに相手のコウモリ男は姿も気配も消すことを忘れて、何度も剣を振り下ろしてた。
もちろん、剣の攻撃は全て無効化されて、魔法も超回復でダメージ無し。
ただ、残念なことに、プニプニさんも私も、反撃能力が0……。
でもね、相手が気配を消してないってことは?
「クックック! 丸見えですよ!」
「ぐお!?」
クックさんが飛び込んできて、回し蹴りをコウモリ男の脇腹にめり込ませた。
もろに蹴りを受けたコウモリ男は吹き飛んでいって、ホールの壁に激突した。
それを確認したように、プニプニさんがまた1体に戻って、魔柱石のほうへ跳ねていった。
「あ、そうか」
魔柱石までは3メートルの距離。
プニプニさんの後を追うように私も駆け出して、魔柱石に触れることが出来た。
触れてしまえば、あとは私の魔力を流すだけ。
プニプニさんって、意外と冷静で賢い? リュックの中で寝ていたのを起こされて、怒ってるだけっていう可能性もあるけど。
魔柱石を私の魔力で上書きしてすぐに、皆が周りに集まってきて、私を守るように円陣フォーメーションを取った。
「お姉様! どうして1人で陣形を離れたのですか!」
「ごめん……」
泣きそうな声で言われて、謝ることしか出来なかったよ。
「サクヤ様への説教は後ですよ」
『だな。あいつはまだ生きてるぞ』
「ですわね」
そう。コウモリ男はクックさんの蹴りだけでは死んでない。
そして、私への説教は確定事項みたいだよ。
「キキキ! よくも領域を消してくれたな! だが、我自身の魔法で気配を消すことが出来るのだ」
私には、気配がどうのとか分からないけど、クックさん達が私を守るように一層密集したから、危険な状況なのかな?
でも、魔法が使えるようになったから、ちょっとはこっちも有利になったんじゃないのかな?
「ねぇねぇ、魔法を使わないの?」
「は? 相手の姿も見えないのに、どうやって使えと?」
『闇雲に撃って、外れて天井に当ったら、このトンネルが崩壊しかねませんからね』
「せめてこの暗さをどうにかできれば……ですわね」
と、いうことらしいよ?
ただ、攻撃を躊躇ってるのは相手も同じみたいだね。
なぜかというと、プニプニさんが私達の周りを跳ねながら動いて、ときどき止まって身体を伸ばしてるんだよね。
プニプニさんには相手の姿が見えてるみたいだよ。
で、コウモリ男は攻撃を防がれて、反撃されるのを恐れてる……のかな?
明るかったら状況が分かるんだけどな……って、明るくしちゃえばいいんじゃないかな!
それに、これには一石二鳥の作戦があるよ。
「今から使う私の魔法から目を離さないと、凄いことになるからね!」
「なんだと?」
「フロアライト・フラッシュ!」
右手から放たれた淡い光の玉が浮かんでいって、膨れ上がった後、急速に収縮していって光が弾けた。
「ぐおぉ!」
うめき声を上げながら、コウモリ男が明るくなったホールの床に落ちてきた。
そう、ここまでに居た魔物さん同様に、光に弱いってことだね。
コウモリだし……。
「クックさん! 今だよ!」
と、クックさんを見たら、目を押さえて片膝を付いてたよ!
「え? どして?」
「目を離せ、と言われたら逆に凝視してしまう心理をついた作戦……お見事です。クックック」
「再びお姉様の光に包まれましたわ!」
「って、イザベラちゃんもなのね!」
イザベラちゃんはワザとの可能性が高いけど。
『この馬鹿共は! フェンリルクロースラッシュ!』
駆け出したモフモフさんとコウモリ男が交差すると、コウモリ男が3つに裂かれて、光となって消えていった。
モフモフさんが居てくれて助かったよぉ~!
「で。クックさんは私の魔法を体験してるよね?」
「いや……見るなと言われれば見てしまう天邪鬼な性格なので。クックック」
「うわ~納得」
「お姉様の一挙手一投足を見逃すなんて出来ませんわ!」
「すっごい納得だよ!」
相変わらずグダグダな展開だったけど、なんとかこのトンネルを開放することができたかな。
先に続く道まで明るく照らされてるし、帰りは皆で安全にこのトンネルを通れるね。
『よし。みんな乗り込め。時間をとられたから急ぐぞ』
「そうだね。このトンネルを抜けたらベラリュージュ。気を引き締めていこうね」
「ええ。そしてサクヤ様の単独行動の説教は荷車の中で……。クックック」
うわ~。しっかりと覚えてたよ。
「プニプニさんが居たから良かったものの――」
「……そうだね」
「お姉様。そもそもマントはどうしたのですか? あれはミスリルが編み込まれていて、お姉様の装備出来る数少ない防具なのですわよ!」
「あれって、ごわごわしてて暑苦しかったから……」
「防具というものを理解してくださいまし! 身につけていないと意味がないでございましょう!」
「……うん」
「だいたいサクヤ様はですね――」
「お姉様は――」
誰か終わらない説教から助けて~!




