第69話:最強の? スーパーボディガード!
「リカバリー!」
リリーの回復魔法で、徐々に視界が戻ってきた。
私の魔法は、一応は成功したみたいで、壁が光を出して、トンネルの中を昼間のような明るさにしていたよ。
「クックック……まだ目がチカチカしますね」
「光って、痛さを感じるものだったんだね」
クックさんとリリーが目を擦りながら言った。
うん。『一応は』成功だよ。あくまでね……。
「ああ! お姉様の神々しい光が私を包みましたわ! お待ちになって! 消えないで光! 出来れば永遠に光の中に居たかったですわ!」
「……それはやめたほうがいいよ?」
イザベラちゃんは、さっきから光ってる壁に顔面を押し付けて、違う世界に行っちゃってた。
あ、いつものことか。
気を取り直して進むこと1時間。
ここまで魔物は……居たよ? コウモリみたいな魔物が。
暗闇の中で活動してたみたいで、急な強烈な光を浴びて気絶してたけど。
闇の中でもハッキリと目が見えるけど、逆に光に弱いってことだろうね。
その気絶してる魔物達を、モフモフさんが遠慮なく跳ね飛ばしていくと、あっけなく光になって消えていった。
「む? モフモフさん、止まってください」
『おう!』
クックさんの言葉で、モフモフさんが急停止した。
「どうしたの?」
荷車の幌を少し開けて外を見てみると、前方の通路の先に円形のホールみたいなのが見えた。
半径50メートルはあるかな?
ここまでの通路は、私の魔法で明るかったんだけど、そのホールからは薄暗く、中心は真っ暗だった。
「サクヤ様、この空間の中心に魔柱石を感じます」
「お姉様の魔法が魔柱石で阻害され、光が届いてないのですわね?」
「クックック。その通りですね」
『魔物の気配は1体だけだな。魔力値が少し大きい。ボス級だな』
「へ~……」
専門家達の話なんて、素人の私にはサッパリだよ。
魔柱石を感じる? 魔物の気配? どこに?
クックさんが、モフモフさんと荷車の連結具を外して、皆で戦闘態勢を取った。
クックさんを先頭にして、モフモフさんがそのすぐ後ろ、私達は後方から着いていく。
ゆっくり進んで、魔柱石の赤い光がぼんやりと見えてきたところで、クックさんが急に前に飛び出していった。
「モフモフさん! サクヤ様たちの守りを!」
『おう!』
声を掛け合った直後、カキーン! と、金属同士がぶつかり合う音が聞こえてきた。
しばらく音が何度も響いて、クックさんが吹き飛ばされたように、私達の前に後ろ向きに片膝をついた姿で滑り込んできた。
「クックック。やっかいですね。姿が見えなくて、こちらから攻撃を仕掛けることができません」
「キキキ! その通り! 我の姿も気配も、魔柱石の力で消すことができるのだ!」
その魔物の声と共に、姿が薄っすらと見えた。
一言で言うと、コウモリ男。
暗闇でも、コウモリみたいに超音波で私達の位置が見えるのかな?
「キキキ……」
またスーと姿が消えていった。
「警戒を! どこから来るか分かりませんよ!」
「やっぱりこっちの魔法は掻き消されちゃうよ! 結界が張れない!」
リリーの結界も、魔柱石をどうにかしないとダメみたい。
皆も敵も、お互いの力が拮抗してて牽制しあってる状態。
力が弱い私は蚊帳の外? 今ならこっそりと魔柱石まで行けないかな? 敵のコウモリ男もまさか1番弱い私を襲ってきたりしないよね?
そう思った私は、足音を立てないようにゆっくりと魔柱石に近づいていった。
クックさん達は敵の動きに集中してるのか、私がこっそりとその集団から抜け出したことに気付いてない。
そして、魔柱石の僅かな赤い光を頼りにして、あと少しで辿り着くってところで……。
「何をしようとしてるんだ? キキキ」
「わわ!」
真後ろからコウモリ男の声が聞こえてきて。
ドス! と、リュックが突き刺された音と共に、衝撃が後ろからきて、3歩よろけて前のめりに倒れる!
死んだ! って思ったよ。
うん。普通は後ろから心臓を貫かれて死んでるよね? でも、倒れたときに膝を擦り剥いただけで、他は無傷。
「サクヤ様! くっ! サクヤ様の元に行きたいですが暗闇の中で迂闊に動けません!」
そうだよね。迂闊に動いちゃダメだったんだよ。私達が見えなくても、コウモリ男からはこっちの位置が見えてるんだから。
結果、後ろから刺されちゃったんだけど、どうして助かったのかっていうと。
剣で刺されたときのリュックの穴から、緑色の半透明なプニプニさんがミュニョ~って形を変形させながら這い出してきた。
そう、リュックの中には、ずっとプニプニさんが居たんだよ。
「スライムごときが出てきたところで!」
コウモリ男が剣を振り下ろしてプニプニさんを斬りつけたけど。
プニッ! ポヨヨ~ン!
簡単に剣を押し返して、ダメージなし。
今度は突いてきたけど、それは最初の不意打ちの1撃で効果ないって分かってるよね?
結果は、プニポヨヨ~ンだった。
「ウインドカッター!」
剣が効かないと分かると、今度は魔法でプニプニさんを襲った!
さすがに魔法は防ぎきれないみたいで、プニプニさんのゼリー状の身体に傷がついたけど、あっという間に傷が塞がっていった。
「超回復だと!? スライムなのに強すぎだろ!」
うん。私もプニプニさんの強さを始めて知ったよ。そんなプニプニさんに初めて出会ったとき、木の棒で戦いを挑んだ私って……。
「ならば、こっちの弱いお前からだ」
標的が私になったよ!
コウモリ男の姿がスーと消えて、次に姿が見えたときには、私の目の前に剣が振り下ろされてた。
でも、その瞬間にプニプニさんがジャンプして、私と剣の間に割り込んできた。
プニプニさんの体は剣を完全に押し返して、コウモリ男のほうがその押し返された反動で後ろによろめいた。
まぁ、またコウモリ男は姿を消しちゃうんだけど、それを確認したように、プニプニさんがプルプルと震えて4体に分裂して、私の前後左右にフォーメーションをとった。
これって、物理完全耐性? と、超回復を持った最強のボディガードだよ!




