第66話:クックさんに任せちゃダメってことが分かったよ。
王都を出発して3日後、国境付近まで来た。
ここまで来ると、草原だったのが段々と荒野に変わってきてた。
地面は岩肌が多くなってきて、草木も所々に茂みになって点在してるって感じ。
この先を少し進むと、国境を守る砦の街があるらしいね。
この街から先には山脈が連なっていて、山越えには、この街でいろいろと準備しないといけないらしいよ。
街を目指してしばらく進んでいると、モフモフさんが急に止まった。
どうしたんだろ? と思い、荷台の前の座席に移動して前方を見てみると、皮の鎧を着込んだ男3人が道を塞いでた。
手には斧が握られてて、とてもじゃないけど兵士には見えないね。
『ボス。あの者達の臭いは、かなり前に追い払った盗賊ですよ』
「まだ盗賊してたんだね……」
してたのかは謎だけど……。
盗賊たちが斧を振りながら近寄ってきた。
「荷物を置いていってもらおう……て、お前達はあのときの!」
「クックック。覚えていましたか。では、あなた達のボスのところまで案内してもらいましょうか」
ていうか、モフモフさんが荷車を引いてた時点で気付かなかったのかな?
「まだそんなことしてたの? 前に言ったよね? 同じことしてたらモフモフさんが食べちゃうって……」
「に……逃げるぞ!」
クルリと反転して逃げようとしたけど。
『逃がすわけ無いだろ』
モフモフさんの右手が振り下ろされて、1人の男が地面にうつ伏せの格好で押さえ込まれた。
他の2人も、降参と両手を上げた。
クックさんとモフモフさん、この2人から逃げるなんて無理だよね~。
それから3人を同行させて、盗賊のアジトに向かった。
アジトは、山の中腹にある山小屋だった。
小屋の周囲は平地で開けてて、斧で切られた切り株があちこっちにあった。
アジトになる前は、キコリさん達が木材を作る場所だったのかな?
「この盗賊たちは、ただの盗賊ではありませんわね」
「どいうこと?」
「あの槍掛けと、弓置きなど……」
イザベラちゃんが言ったところを見ると、槍は木材を組み合わせた、物干し竿みたいな物に整然と並べられて、弓は木をくり貫いた器みたいなのに1つ1つ丁寧に置かれてて、その横に矢が入った矢筒がセットで取りやすくなってた。
「こんなに装備を丁寧に扱うのは、訓練された兵士ですわね」
確かに、盗賊なんて武器とかもっと乱暴にあつかってそうだよね。
ここに置かれてる槍を見ても、槍の刃の部分なんて、磨かれてピカピカだしね
アジトに居た盗賊達は、私達が捕まえた盗賊に呼ばれて小屋から出てきたんだけど、私達の姿を見た途端に、戦意喪失してた。
もっとこう……リンクで強くなった私が、バッタバッタと倒してく予定だったんだけど、その盗賊達は私達の前で正座して座ってる。
その数15人。なんだろ、この構図は?
「えっと……」
どうしよう? 王都に連行……してる時間なんてないよね? この先の砦の街に連行……今は厳戒態勢で、砦の兵士さん達も15人の盗賊の相手なんてしてられないだろうし……。
悩んでると、クックさんが、お任せくださいと、私の前に出た。
よかった。クックさんにいい考えがあるみたいだよ。
「クックック。あなた達、今まで人を殺めたことは?」
「ないない! 脅して積荷を少し拝借してただけだ!」
盗賊のボスが、両腕でバッテンを作って、首を勢い良く横に振りながら否定した。
「クックック。それだけでも犯罪は犯罪です! 面倒ですからミナゴロシに……」
「よかったじゃないよ!? いい考えがあるって思った私が馬鹿だったよ!」
クックさんの性格を考慮してなかった~!
「えっとね、お手数掛けるけど、私達も時間ないし、自分達で王都まで自首しに行ってくれないかな?」
「は……はい」
「お姉様! それだと事実上は放免ということになりませんこと?」
『大丈夫だ。お前達の臭いは覚えたからな。逃げ出そうものなら、俺が1人残らず食ってやる。いいか? 3度目の正直、仏の顔も3度まで、猫に小判だぞ?』
「そうだよ。3度目はないからね?」
……猫に小判ってどういう意味だったかな?
「はい! ところで……その小さいお嬢様がリーダーのようですが、あなたはいったい……」
「クックック。この方は勇者サクヤ様! これから彼の地に救援に向かっているところなのですよ!」
「クックさん。そんな私をアピールしなくていいから、早く街に行こうよ!」
と、驚いて身を固めてる盗賊さん達を残して、私達は砦の街に入った。
このときの、盗賊さん達の存在が、後の戦局を大きく変えることを、今の私達は誰も知らなかったんだよね。




