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第65話:創作料理って難しいね。

 牧場の真ん中で地図を広げる。

 キラービーを倒した後、ここがどこか分からず、動いてないんだよね。


「西門から真っ直ぐに3回くらい跳ねたから、この辺かな?」

「そうですわね。だとしましたら、街道からは少し逸れましたわね」


 大体の現在地を確認した後、クックさんが荷車を持ち上げて地面に置いた。

 もちろん、リリーの強化魔法は解除してるよ。

 荷車に強化魔法をかけなおした後、牧場地の小道を進む。

 この小道を進めば、街道に出るはずなんだよね。

 キラービーを倒すのに時間がかかっちゃってるから、早く行きたいとこなんだけど。


「クックック。モフモフさん、もう少し早くいけませんか?」

『ば……馬鹿言うな! 身体を固定されたまま地面に何回も叩きつけられた俺の痛みが分かるか?』

「凄いトラウマになっちゃってるよ!」


 クックさんの隣に座って、モフモフさんの後姿を見てるんだけど、尻尾も力なく垂れちゃって、恐る恐る走っているって感じ。

 それでも、普通の馬車と同じくらいのスピードが出てるんだけどね。


「ちょっと! 調整はちゃんとしたから今度は大丈夫だよ! このリリーを信じなさい!」

『その言葉が1番信用できんのだ!』

「ひど~い! だったら、怪我しても、この可愛いリリーが全力でヒールしてあげるよ」

『……人型などタイプじゃないから嬉しくないな』

「モフモフさんは犬だしね」

『ボス! 俺は犬ではなく狼です!』


 モフモフさんって意外と細かいな~。犬と狼って同じようなものじゃないの?


「じゃ~ね~、早く走ってくれたら、私が撫でてあげるよ」

『いくらボスでも、やはり人型なので……』


 と、言ってるけど、垂れてた尻尾はピンと立って、物凄い早さで横に振ってる。

 それにどんどんスピードが速くなってきて……。

 口ではああ言ってるけど、実は嬉しいのかな?

 なんて思ってると、あっという間に街道との合流のT字路に出た。

 モフモフさんが前脚だけで急制動をかけると、荷台の部分が横滑りして急角度で方向転換した……んだけど、直後に、ボン! と音がして、荷台に少し衝撃があった。

 そして、ぐはぁぁぁ! と言う断末魔が……。

 その方向に振り向くと、ジスケルさんに良く似た人が5メートルほど吹き飛んで、茂みの中に消えていった。


「王子!?」

「隊長~!」


 うん。良く似たじゃなくて、本人だったみたいだね。

 私達がキラービーと戦っている間に、後から出発した輸送部隊の人達が追いついてきて、ちょうど先頭を歩いていたジスケルさんと出会い頭の事故……。


『光の疾風!』


 急加速で輸送部隊から遠ざかっていく。

 降りて謝りたいとこだけど、ジスケルさんだったら大丈夫かな?




 私達は順調に? 街道を走り、2個目の宿場町と3個目の宿場町の中間地点に到達した。

 普通の馬車だったら、ここまでは3日はかかるらしいけど、モフモフさんのスピードで1日経たずに到達。

 まぁ、途中で光の疾風を使って逃げたしね。

 辺りが暗くなってきたということで、少し開けた場所で野営することになった。

 クックさんとモフモフさんは、安全確保のために周辺の見回りに、イザベラちゃんとリリーは近くの川に水汲みに行った。

 私は、リュックから出てきたプニプニさんとご飯の準備。

 魔法のコンロの上に鍋をセットして、宝石に触れると宝石から火が出る。

 宝石には火の魔法が込められてて、魔力を少しだけ流すと発動する仕組み。

 便利だよね~。

 と、感心しながら、水が沸騰したところで食材を放り込んでいく。

 レシピ? そんなの知らないよ。ただ適当に放り込んで、調味料も勘で入れてるよ?

 そんなのでいいの? て、思うけど……。

 確かに、一工夫したほうがいいかな。


 何か工夫できるものないかな~と、辺りを見回すと、プニプニさんがそこらの草に身体を覆いかぶせて、食事してた。

 覆い被られた草がプニプニさんの身体の中で溶けて、吸収されてる。

 プニプニさんの体は半透明だから、その様子が良く見えた。

 しばらく見てたら、プニプニさんは何故か一種類の草だけ避けて食事してるのに気付いた。

 その草は、形はほうれん草と全く同じで、匂いを嗅いだら、シソのような良い匂いがした。

 これ……料理のいいアクセントになりそう。

 ということで、ナイフで刈り取って、細切れにして鍋に投入。

 仕上げに、「美味しくなってね」と、言葉をかけると、鍋ごと光輝いた。

 料理にエールを発動。

 クックさん達が、適当な私の料理をすごく美味しいと言ってた理由はこれだよ。

 ……みんなには内緒だよ?


 みんながそれぞれの役目から帰ってきて、早速、食事タイム。

 小分けした皿にスープを入れて、みんなの前に配った。


「いただき……」

「これは旨いですな!」

『うむ! いつもと一味違うな!』


 ます、と言い終わる前に、クックさんとモフモフさんが食べ始めちゃった!


「もう! ちゃんといただきますってしてからだよ!」


 イザベラちゃんとリリーも呆れて見てる。


「もう食べちゃいましたからね! クックック、しかし、舌が痺れるほど旨いですね!」

『そうだな! 痺れる旨さ! 舌どころか、身体全体が痺れて……」

「クック……ク。痺れ……る」


 2人の言葉が無くなって、バタリと倒れて痙攣し始めちゃった!


「お……お姉様? 何か入れまして?」


 手に持ってたスープの入った皿を地に置いて、恐る恐る聞いてきた。

 で、私はそこに生えてる、ほうれん草みたいなものを指差した。


「サクヤっち! これってシビシビ草だよ! 麻痺の矢とか作る材料になるもので、効果は見ての通り……」

「それにしても、効果が大きすぎるみたいですわね?」

「あ……うん。エールで強化しちゃった」

「「……」」


 沈黙のあと、スープは食べないで皿ごと周りに並べて、代わりにアイテムボックスから干し肉とパンを出して食べたよ。

 クックさんとモフモフさんは、リリーのリカバリーっていう回復魔法でも効果がなくて、そのままご飯抜きになった。


「お姉様のエール……恐ろしいですわ」




 翌朝。


「お姉様! コボルトたちが!」


 イザベラちゃんの叫びに、寝て回復したクックさん達が飛び起きた。


「攻めて来たの?」

「いえ……その……」


 駆け寄ると、目に入ってきたのは、放置してた鍋と皿に群がるようにして倒れてるコボルト10匹。

 ビクビク痙攣して、口から泡を吹いてた。

 あのスープを食べちゃったみたい。


「クックック! もうサクヤ様の料理はトラップの領域ですね」

「……いただきます言わないと、またさり気なく入れちゃうからね」

「『それだけはご勘弁を……』」


 この日を境に、クックさんとモフモフさんは、ちゃんと「いただきます」を言うようになりました。


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