第63話:クックさんからの相談?
空高く舞い上がった荷車は、地面に着地すると、またスプリングの力で2度、3度と飛び跳ねて、最後は牧場の隅に詰まれてた藁の山に突っ込んで止まった。
荷台の幌の中に居た私とイザベラちゃんとリリーは、スプリングの効果で衝撃が全然なかったんだけど、荷車を引いてたモフモフさんは、何度も地面に叩きつけられてグッタリしてた。
回復薬の入った箱は、しっかりとロープで固定されてたからダメージは無かったよ。
「みんな大丈夫?」
「はい、お姉様。スプリングが衝撃を完全に吸収してくれたおかげで……」
「そのスプリングでこんなことになったんだけどね」
「わ……私は悪くないよ! こんなになるなんて予想できなかったし!」
リリーがそう言って、距離を取るように後ずさっていった。
誰も予想できなかっただろうね……。
『リリー、怒らないから、言い訳は後にして俺を回復してくれ』
「う……うん!」
リリーがモフモフさんを回復するために、荷台から飛び降りていった。
さて、ここですごい物足りなさに違和感が……。
そうだよ! こんなになった状況で、1番真っ先に怒り出しそうなクックさんが居ないんだよ!
どこか遠くの方に落ちていったけど、クックさんだし平気だよね?
―――
さて、突っつかれる感触で目を覚ましましたが、ここはどこでしょう?
上半身だけ起こすと、視界に映ったのは広大な雑木林と、コボルト共が居ました。
さっきから、私をナイフで突いていたのはこのコボルトでしょうねぇ。
さらに周りを見ると、赤く光った石柱が見えますね。
どうやら私は投げ出され、魔柱石の魔物の巣穴に落ちたようですよ。クックック。
こんな王都の近くまで魔柱石が侵食してきてるのですねぇ。
とりあえず、どうしましょう? サクヤ様たちと逸れてしまいましたね。
サクヤ様を探したいところですが、まずは……。
「私の体を突いてたのは誰でしょうね!」
剣を抜き、魔力を込めて横薙ぎに払うと、真空の刃が飛んでいき、コボルト共を真っ二つにしました。
コボルトは犬を人型にしたような魔物で、大きさはゴブリンと変わらないですが、数の多さに連携まで使ってくるので、脅威度でいうとゴブリンよりも高いかもしれないですね。
ま、ご覧の通り、私の敵ではありませんが。
「さて、この魔柱石はどうしましょう?」
この場で壊してしまうのもいいかもしれませんが、出来ることなら、サクヤ様に魔力の上書きをしてもらって、サクヤ様の陣地を増やしたいところですがね。
サクヤ様はこの場にいないですし、仕方ないですね。
「壊しますか」
抜いた剣をそのまま魔柱石に向けて振り下ろす――!
カキーン! パカーン!
粉々に砕け散り、細かい破片となって宙に舞い上がりましたね。
細かく砕いて、あとは私の魔法で消し飛ばすだけ……。
と、思ったのですが、破片が光を放ちながら、魔物の姿になっていったではないですか。
ブ~~~ンと羽音を鳴らしながら、体長30センチほどのハチの姿をした魔物……。
キラービーですね。
それが50匹ほど。
「クックック。数が多くても、私の敵ではないですね。ファイアストーム!」
キラービーを中心にして火の嵐が吹き荒れ、瞬く間に……魔法が消えてしまいました。
これは……ギュオールの防衛戦のときのゴブリン共と同じ状態。
ゴブリン共は魔柱石の欠片を埋め込まれて、魔法防御を高めていましたが、欠片からそのまま魔物化したキラービー共は、防御を高めるのではなく、魔法そのものが掻き消されてしまうということですかね?
「ならば!」
剣を直接当てればいいのですよ!
スカ! と、剣が空を切りましたよ!
素早く飛び回っているものに当てるのは難しく、簡単に避けられました。
今度は少しジャンプして、横薙ぎに払う!
……やはり、キラービーは縦横に素早く飛び回り、難なく避けられました。
しかも、空振りで体勢が一瞬崩れた隙に、キラービー共が一斉に尻を突き出し、そこから伸びた針を飛ばしてきました!
「光の防壁!」
展開された防壁に次々と針が当り、ピキっと防壁にヒビが入ったではないですか。
クックック。これは……油断しましたね。この私の周りを飛び回っているキラービー共が、全てボス級の力を持っているようですね。
魔法も効かない、剣も当らない……となると、私の次の行動はこれしかないようです……。
魔力を脚に集中させて、俊敏を高めます。
そして、キラービー共が次の針を飛ばそうとしている隙をついて……。
「サクヤ様ぁぁぁ! 助けて~~~!」
逃げるんですよ! サクヤ様の魔力を感じる方向へ!
―――
「クックさんてどこに落ちたんだろうね?」
「検討もつきませんわ」
「クック先輩が自分で目を覚まして、ここに来てくれることを待つしかないね」
私達の場所わかるのかな? 凄い勢いで放り出されて、何故か真横に飛んでいったからね。しかも、気絶したまま……。
う~ん……クックさんを探したほうがいいのかな? でも、いくら街の近くで魔物の出現率が低いといっても、バラバラに探して1人になったら危険だしね。私が!
『ボス! 地響きとともに、クックさんの気配が凄い速さで近づいてきます!』
モフモフさんが耳をピンと立てて、その方向を見ながら言ってきた。
私達も見てみると、確かに、凄い土煙を上げながら走ってくるクックさんが見えた。
その姿は、100メートル競走の全力疾走してる選手みたいだったよ。
スピードは全然クックさんのほうが早いんだけどね。
私達の目の前で、クックさんがズザーと、地面に足をめり込ませるようにして止まった。
「クックさん。おかえり。どうして全力で走ってきてたの?」
クックさんの速さだったら、もっとゆっくり走ってきても十分に余裕はあったのにね。
「クックック。ただいまです。サクヤ様、実は相談したいことがあるのです」
「え? 相談って、何を?」
「助けてください」
と、走ってきた方向を指差して、私達も視線をそこへ向けると、空一面を黄色と黒の縞々に染めたハチの大群。しかも、一匹一匹が大きい。
「えっと……」
助けてって……どういう状況でこうなってるの?
「クックック。藪を突いたらハチが飛び出してきました」
「なにしてるの!?」




