第61話:太いのがいけなかったんだよ!
大惨事になったお店を出た後、最後の目的地に向かうことにした。
どこかというと、勇者の剣を預けている鍛冶屋さん。
短剣を買ったから今は必要ないと思ったんだけど、向かう先は最前線。出来上がってるなら持っていったほうがいいよね。
鍛冶屋に着いて、勢い良くドアを開けた。
ドアは開いてたんだけど、誰もいないようだった。
「すみませ~ん。いないですか~?」
と、呼んでみたら、奥から親子揃って走ってきて。
「すまねぇぇぇ! 加工するどころか、どんな素材の道具でも傷1つ付かないでお手上げだ!」
揃って座り込んで腹を切りそうな勢いで謝ってきた。
まあね。伝説までになった勇者の剣なんだから、普通の道具で傷を付けれるほうがおかしんだけどね。
「ふむ。謎の素材でできた剣ですからね。仕方ないでしょう。それを折っちゃったのはサクヤ様ですがね! クックック」
「それは不可抗力だったんだよ! 重かったから手から滑っちゃったの!」
わざとじゃないもん! と言いながらクックさんの膝を蹴ってやったよ!
もちろん、私の足のほうが痛かったけどね!
加工は成果なしってことで、折れた本体と柄の部分を受け取って、本体はクックさんに、柄の部分はリュックに入れた。
リュックの中には、スライムのプニプニさんが居るけど、まあ、狭くはならないからいいよね。
「あ、そうだ! 柄の部分見て思ったんだけど、おじさんって武器に詳しい?」
「鍛冶屋だからな、それなりに詳しいぞ。それがどうしたんだ?」
「えっと、剣を振るとね、すっぽ抜けちゃうの。装備出来るレベルにはなってるはずなんだけど」
「……」
私のことを上から下までシロジロと見てくる。
「まぁ、簡単なことだな」
「ほう? サクヤ様をスケベーな目で見ただけで分かったと? さすが鍛冶屋の主人ですな!」
「いやいや! 見てないから! というか、どうして今までみんな気付かなかったのか不思議なくらいだぞ」
「え? そうなの?」
「おう! 普通は装備レベルに達してるから、振っただけですっぽ抜けるなんてないんだが、まぁ、サクヤちゃんの体の大きさを見れば分かるわな。柄の太さに対して、手が小さいんだよ。それでいて握る力もなくて、そりゃすっぽ抜けるわな! ガッハッハ!」
うわ! 私の身体的な問題だったみたいだよ!
……違うね! 柄が太すぎたんだよ! きっとそうに違いないよ!
「ちょっと待ってな」
おじさんが短剣を奥に持っていって、削る音が聞こえて……。
「ほれ、柄の部分を削って細くしたから、これでマシにはなっただろ」
受け取って、振ってみる。
「光の防壁!」
「ウサリス! 結界を!」
「ディフェンスフィールド!」
みんなが一斉に結界を張ったよ! クックさんに至っては、最強の結界だし……。
「て、私が武器を振るとそんなに危険なの!?」
そりゃ~ね、前のお店では大惨事で金貨50枚の被害を出しちゃったけどさ!
おじさんが加工してくれたんだから、大丈夫だよね!
と、信じて振ってみたら、すっぽ抜けないでヒュンっていい音がして振りぬけたよ。
みんな警戒しすぎだよね!
翌日、太陽が街を明るく照らし出した頃、出陣式が行われる闘技場に向かった。
クックさん達は先に向かって、準備を手伝ってる。
闘技場に着くと、1人の兵士さんが幌付きの荷台に荷物を運び込んでた。
「おはようございます。サクヤ様」
「おはようございます」
「この荷車が今回からサクヤ様たちの乗り物になります」
「へ~」
国から支給された物で、今までは木の軸に車輪をはめただけのものだったけど、この荷車は車輪の軸にスプリングというものを使っていて、走行時の安定性と、荷物が今まで以上にいっぱい積めるようになっているらしいね。
で、兵士さんが積み込んでたのは、大量の回復薬。
今回の私達の最大の任務は、この回復薬を届けるというもの。
「聖王国フェルブナンドから、数人のヒーラーが救援に行っているみたいですが、魔力にも限界がありますしね。魔法には及びませんが、回復薬も貴重な戦力ですよ」
「そうだね。頑張って届けるね」
「では、次はジスケル隊の準備にいきますので」
兵士さんは一礼して去っていった。
私は荷台に上がって、回復薬が詰められてる箱の前に立って。
「みんなを頑張って癒してあげてね。回復薬さんたち」
と、願いを込めて声をかけると、積み上げられてた箱が一斉に光り輝いた。
えっと……秘密にしておこうかな。
案内役で立っていた兵士さんに誘導されて、半壊した闘技場の通路を進むと、観客席の中の1つ、王族観覧場所に出た。
普段はこの場所は立派な装飾品で飾られて、特別な場所みたいだけど、今は半壊状態でその装飾品も全部片付けられていた。
「クックック。サクヤ様、こちらに並んでください」
クックさんに手招きされて、並んでるみんなの中央、ジスケルさんの隣に立つ。
「「「うおぉぉぉぉ!!!」」」
私の登場を待ちわびてたかのように、下のグランドに居た50人の兵士さん達から街全体を揺るがすほどの歓声が巻き起こった。
え? 何? 私ってそんなに人気なの?
そんなわけないか~と思いつつ、緊張の? 出陣式が始まるね!




