第59話:子供ですけどね!
明日の出発に備えて、私達も街でいろいろ準備することにした。
「クックック。今までは、魔物の集団程度でしたが、今回の相手は軍隊ですからね。装備も揃えていたほうがいいでしょう」
クックさんの言う通り、私って未だに学園の練習着だしね。
靴だってもうボロボロだし。この際、全て買い揃えたほうがいいかも。
「その前に資金だね」
「ここまで来るまでに、かなりの数の魔物を討伐しましたから、ギルドに行けば討伐報酬が貰えるのでは?」
「お姉様! 資金なら私が出しますわ! その条件として、今夜は私と添い寝……」
「却下!」
イザベラちゃんの暴走を言葉で制したよ!
ていうか、これから魔王軍と戦うことになるかもしれないって言うのに、イザベラちゃんは普段通りだね。
そのおかげか、少し残ってた焦りと不安が消えていったよ。
冒険者ギルドに到着した。
ギュオールと同じように、街の中心にあると思って歩き回ってたんだけど、冒険者ギルドは王都の正門の近くにあったよ。
王都の中心にはお城があるんだから、当然といえば当然なんだけどね。
王都の冒険者ギルドも、高ランクの人達が救援に行ってるからか、中にある食堂と酒場にあまり人がいなくて、活気があまりなかった。
食堂に座ってるのは、どう見ても20歳くらいの人達。
活気がないのは、人がいないのに加えて若い人が多いからかな?
みんな筋肉はそれほどついてなくて、それでも装備だけは立派。
まさに都会っ子~って感じ。
「サクヤ様。そんなにジロジロ見てると喧嘩を吹っかけられますよ。まぁ、そうなったらミナゴロシ……ですけどね。クックック」
「うわ! ダメだよ!」
本気でやりかねないと思って、クックさんの背中を押して……手が届かなかったから、腰を押してカウンターに向かったよ。
で、ここのカウンターも高さがあって、辛うじて顔を覗かせられるくらいだったよ。
踏み台もなくて困ってると、クックさんが私の両脇を抱えて持ち上げてきた。
抱っこ……。うん、物凄く子供扱いされてるみたい。……別にいいけどね。
「あら? お若いのにお子様連れの冒険者さんですか?」
カウンターのお姉さんもすご~~~く子供扱いしてきたよ!
実際に『15歳の!』 子供だけどね!
「いえいえ。このおこちゃま……このお方が私共の主、パーティーリーダーですよ」
「「……」」
私とお姉さん、しばらく沈黙。
「ねぇ、今、私のことおこちゃまって……」
「言ってませんよ! ね? お姉さんもそんな言葉聞かなかったでしょ?」
「え? ……あはは」
クックさんから急に話しを振られたお姉さんは苦笑いしてた。
こんな展開は慣れてるけどね……。
「あの、報酬を受け取りに来ました」
「はい。では、ギルドカードをお貸しください」
ウエストポーチから取り出して、お姉さんに渡すと、お姉さんはカードを見て固まっちゃった。
「あの……本当にサクヤ様で間違いないですか?」
「はい。サクヤですけど」
「キャァ~~~! 魔王様と会話しちゃった~~~! え? 本当に15歳? 小さくて可愛い!」
悲鳴に近い叫びを上げて大興奮だよ。小さいは余計だけど。
「魔王様の威厳が滲み出てますね!」
「えっと……」
抱きかかえられてる私のどこに威厳があるのかな?
何もしなくても、どんどん私の評価が上がっていってるのは納得いかないな。
……何も出来ないけどね!
ギルドでいろいろあった後、報酬を受け取って外に出た。
資金として手に入れたお金、銀貨300枚。
魔法陣から出てきたお金だけど、これは単純に魔物討伐と、村を魔物の襲撃から救った報酬と、王都の手前で魔物に襲われてた商人さんを救助した報酬。
ギルドでクエストを受けなくても、こうした突発的な救助でも報酬が支払われるみたいだね。
村を襲ってた魔物は、仲間になったキバキバさん達だけどね……。
で、もう1つ、麻で出来た袋の中に金貨50枚……。
これはお姉さんが直接渡してきた。
お金の出所は不明だけど、多分、ジスケルさんかバスケールさんの根回しかな?
「クックさん。この袋を預かってて。絶対使っちゃダメだよ」
「クックック。せっかくの大金を使わないのですか?」
「だって、後が怖いもの」
使っちゃった後で、それを条件に交際を迫られたりとか……怖くて使えないよね。
ただでさえ、出所が不明なのに。
「お姉様って、見かけは子供なのに、考えは妙に大人びてますのね」
「サクヤっちじゃなかったら、パ~っと使っちゃってるよね~。サクヤっち小っちゃいのに大人~。えらいえらい」
リリーに頭を撫でられる。
「……」
私の中で、何かが切れた。
「クックさん……リンク」
「は? えっと……は、はい。リンク」
「ちょ! お姉様! 何をそんなにお怒りになられてますの!?」
「サクヤっち! 落ち着いて!」
きゃ~~~! って悲鳴を上げて逃げる2人を追いかけて……。
リンクの効果が切れるまで、追いかけっこは続きました!




