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第57話:魔王の威厳!

「ちょ……お姉様! クックさんがおかしくなりましたわ!」

「う~ん、怒ってるんだと思うよ?」


 さすがのイザベラちゃんでも、クックさんの魔力には怖気づいちゃったみたい。

 だって、イザベラちゃんは普通に人族だしね……。

 私はほら、魔王だけど、能力がね……。どうすることも出来ないよ?


「モフモフさん! やっておしまいなさいな!」


 イザベラちゃんがクックさんを指差しながら指示を出した。

 私もクックさん対モフモフさんの戦いには興味あるけど。


「クックック。犬には負けませんよ?」

『は? 犬だと?』


 クックさんの挑発にモフモフさんも怒ったみたい。


『いいだろう。狭い闘技場を壊さぬように手加減していたが、本気でいくぞ!』


 グルルル! って唸って、牙を剥き出しにした瞬間、モフモフさんが体に稲妻を纏って、足元から風が巻き起こった。

 クックさんの魔力とモフモフさんの闘気のぶつかり合いだよ!

 て、これやばくない? 近くに居たら私達まで巻き込まれちゃうよ!

 離れようとしたけど、ジスケルさんとリリーはまだ気を失ってた。

 リリーはなんとかイザベラちゃんと2人で運べるとして、ジスケルさんの巨体は2人じゃ無理!


「デオドールさん! いつまでも倒れてないでジスケルさんを運んで!」


 て、言ったら、顔の前で右手をムリムリと振って、自分から光になって消えちゃった。


「逃げましたわね……」

「うん……」


 光になって消えたところを呆然と眺めていたら、とうとう戦いが始まっちゃった。




 まず最初に動いたのはモフモフさんだ。

 光の疾風で一気に距離を詰めてからのクロースラッシュ。

 闘技場の中央でぶつかり合って、クックさんは左腕の盾で正面から受けるんじゃなくて、少し角度をつけてそれを受け流した。

 それでもクックさんは後ろに少し飛ばされたけど。

 受け流されたモフモフさんは、その勢いのまま闘技場の端まで駆け抜けて、壁を蹴って軌道を変えた。

 蹴られた壁は吹き飛んで、観客席まで大きな穴を開けた。


 モフモフさんが何回か壁を蹴って勢いを殺して着地して止まると、それを狙っていたかのように、そこへクックさんが斬り込んで剣を振り下ろした。

 完全に捕らえた! と思ったんだけど、剣は何故かモフモフさんの体をすり抜けて地面を切ると、モフモフさんの体が薄くなって消えていった。


「クックック。着地した瞬間に残像を残して高速移動とは、なかなかやりますね」

『フェンリルに進化した俺を甘く見るなよ』


 離れたところにズザザーと横滑りしながらモフモフさんの姿が現れた。

 これあれだね。……巻き込まれたら死んじゃう!


「お姉様! ウサリスを召喚して結界を張りますわ!」

「うん。お願い!」


 ということで、召喚されたウサリスが結界を張ったけど、強度はどれだけあるんだろね?


「光の疾風で横を駆け抜けただけで結界が吹き飛ぶでしょうけど、無いよりはマシですわ……」


 この状況詰んでる!


「リリー! 起きてリリー!」


 ほっぺたをパンパンと叩いて、なんとかリリーを目覚めさせようとする。

 不意打ちでクックさんに気絶させられたリリーだけど、リリーの結界だったら防げるはず……だよね?


「う~う……ん」


 リリーが目を覚ましてくれた!

 けど、リリーは起き上がるとペタンと座り込んで、私に抱き付いて泣き始めちゃった。


「サクヤっち~! 私見てただけなのにクックさんに殴られた~! うわ~~~ん」

「あ~……よしよし」


 頭を撫でてあげる。

 リリーはショックで戦力外! もうお手上げだ~!

 困っていると、今度はジスケルさんが勢い良く飛び起きた!


「うお! 魔神誕生の夢を見た!」


 魔神かどうかは分かんないけど、夢じゃなくて今まさに、目の前で狼王フェンリルと魔族クックさんの戦いが繰り広げられてるね。

 地はぶつかり合いで大穴が開いて、観客席は半分消し飛んでる。

 2人が交差した瞬間に衝撃波が襲ってきて、それだけでウサリスさんの結界にヒビが入る。

 イザベラちゃんはウサリスさんの結界維持で魔力消費中。

 リリーは、クックさんに吹き飛ばされたショックで戦意喪失。

 ジスケルさんは元から戦力外……。


 どうしよう? って悩んでると、後方から私達を飛び越えて、大きな巨体がクックさんとモフモフさんがぶつかり合ってる中央へ舞い降りていった。


「双方共それまで――ぐべらひゃ!」


 巨体の主は、当然の如く吹き飛ばされて、壁を破壊してめり込んでいった。


「師匠! 今父上の姿が見えた気がしたのですが!?」

「きっと気のせいだよ……」


 見なかったことにしよう。きっとビスケールさんなら大丈夫……死んでないよね?


「師匠! 何とかしてください!」

「お姉様! 結界が限界ですわ!」


 うわ~、どうしたらいいんだろ?

 弱気になっちゃダメだよね! 


「ここは私が魔王の威厳を発揮するとき!」

「おお! さすがは師匠ですね!」

「かっこいいですわ! お姉様!」


 いくよ~! 魔王の威厳発動!


「2人ともいい加減にしなさ~い! これ以上暴れたらご飯抜きだからね! 私の手作りのご飯食べさせてあげないから!」


 シ~ンと訪れる静寂。


「「魔王の……威厳?」」


 言わないで! ツッコミもしないで!

 だってこれくらいしか出来ないじゃない!


「あ、でもでもサクヤっち! 2人の動きが固まってるよ!」


 リリーが指差したほうを見てみると、大口を開けて噛み付こうとしてるモフモフさんと、それを剣で迎え撃とうとしてるクックさんが、見事にピタっと動きを止めて固まってた。


「サクヤ様。これは暴れていたわけじゃなくて訓練の一環でして……クックック」

『そうです! いい運動になりましたよ!』

「本気で戦ってたよね! モフモフさんなんてフェンリルモードだし! 闘技場を半壊しておいてそれか~……てっ、2人ともどんだけご飯が大事なの!?」

「いえ! ご飯ではなく」

『うむ! ボスの手作りが重要なのですよ!』

「そうです! 毎食、肉と野菜のスープ1品ですが、味が薄かったり濃かったり、飽きさせない工夫を凝らしている至高の料理!」

『それを抜きにされるなぞ、死んだも同然!』

「それは……褒められてるのかな?」


 そういえば、王都に来る途中でも料理の一件で2人は大暴れしたんだったな~。

 ま~、今回の件で分かったことは、味見はちゃんとしよう! そしていろんな料理をもっと覚えよう!

 それがこの2人の暴走を止める武器……最強の切り札になるよ!


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