第50話:加工は出来るらしいよ?
折れた剣は布で包んで、クックさんに持っててもらうことにした。
だって、私じゃ重くて持てないからね。
で、そのまま街にある鍛冶屋さんに行くことにしたよ。
場所はこの住宅地から正反対にある区画。
王都は広くて把握しにくいけど、お城の周りには騎士さん達の階級の高い人達の屋敷があって、その周りに一般の住宅、そして、外周に向かって商業、産業って並んでる感じかな。
もちろん、商業や産業区の中にも、そこで働く人達の家があるんだけどね。
王都の大きさに改めて驚きながら、何軒かあるうちの1つの鍛冶屋さんに到着。
カスケールさんの話だと、ここの主さんは昔ドワーフから修行を受けて腕は王都1なんだって。
「いらっしゃい! 今日はどんな御用で? そっちのあんちゃんの鎧の修理かい?」
ドアを開けて入ると、見た目若い青年風な男の人が愛想よく言ってきた。
どう見てもドワーフから修行受けた人に見えないけど。
「いえいえ。この鎧に見えるのは私の体の一部なので、傷を付けられても自然と直るのですよ。クックック」
「すげーな!」
私もビックリだよ!
「え~っと……まぁ、客の素性は深く検索しないけど、どんな用で鍛冶屋に来たんだ? 武器防具を買うなら販売店に行ってもらわないとだが」
「えっと、折れた剣を修理してほしいんですけど」
クックさんが持っていた剣をカウンターに置いて、布を解いて見せてみた。
「これは……ちょっと待っててくれ。親父を呼んでくる」
難しい顔をして奥の部屋に入って行っちゃった。
親父ってことは、店番をしてた人は息子さんなのかな?
で、今から来る人が、本当の職人さんかな。
しばらく待ってると、奥から息子さんと、タオルで汗を拭いながら親父さんが出てきた。
親父さんの右腕を見て一言。
「腕ふっとい!」
体は小柄だけど、腕が私の胴回りと同じくらいあるよ! カスケールさんよりも太いよ!
「ガハハ! 何年も鋼の大槌を振ってたらこうなったわい!」
「すご~い! 私は毎日腕立て3回やってるけど全然だよ」
「「「……3回」」」
回数は少ないけど毎日の努力はいつかは実を結ぶはずだよ!
「ま~それはいいとして、どれ、息子が慌てて言いに来た剣を見せてもらうか……」
布ごと持って、目の前で見たり、上に掲げてみたり、刃になってる部分を指でなぞったりしてる。
そして、カウンターに戻して、ふ~と深い息を吐いた。
ドキドキ。直るかな? かな?
「結論から言うとな。元に修復は無理だ」
「え~」
「いやいや。どんな剣でもそうなんだがな。折れた部分にまた焼きを入れて、叩いてくっつけるのは出来るんだがな、そうやって修復された剣は、くっつけた部分の強度が脆くなって、斬ったり受けたりしたときにそこに力が加わって、またそこから簡単に折れちまうんだ」
「「え~」」
「そんな期待してたのに~って顔されても無理だぞ? それにな、問題はこの素材だよ。今までこんな素材で出来た剣なんてみたことないぞ。鉄でも鋼でもなく、ミスリルでもない」
「クックック。まぁ、伝説の勇者の剣ですし」
「はっはっは! それなら納得だ! な、ステファン!」
「そうだね」
……。
「「えええぇぇぇ!!」」
2人で納得! ってポンと手叩いた後に、剣をみてビックリしてるよ。
「ちょ! なんでそんな物がここに! え? 折れた? なんで?」
「落としたら折れちゃった! テヘ」
「いやいやいや! テヘって、可愛く舌出されてもな! どうしてこうなったか詳しく説明してくれ!」
そうなるよね~。
で、詳しく説明したよ。
私が魔王であることの証拠として、軽く剣に触ると剣が凄く輝いたよ。
折れてても凄いね。
「話は分かりました。サクヤ様がお使いになるのでしたら、修復ではなく、折れたところを柄に入れる部分に加工してみましょう。ロングソードからショートソードになりますが、サクヤ様の小柄な体にはちょうどいいでしょう」
「ありがとうございます!」
「いえいえ! 魔王様からお礼を言われるなんて、もったいなき名誉です!」
「あの、私はただの冒険者ってことで」
「……ガハハ! こっちもそのほうがいいや。敬語なんて使い慣れてねぇもんでな」
うん。私も敬語を使われ慣れてないから、やっぱりこっちのほうがいいね。
出来上がりは3日後ということで、宿に戻って普段の冒険者スタイルに着替えた。
リリーはまだモフモフさんと遊んでるし、イザベラちゃんはカスケールさんの家にいるし、これからどうしようかな? って思ってると、ジスケルさんの使いという人が尋ねてきた。
「サクヤ様。ジスケル様がお会いしたいと申しております。ご同行願えますか?」
「イヤです」
どうして私があのムカつく次男に会いに行かなくちゃいけないの?
会いたいならそっちから来いって感じだよね!
「お願いします! 来てくれないと、私の首が撥ねられてしまいます!」
そこまで深刻なことなの!?
「クックック。まあ、いいじゃないですか。やることもなく暇だったんですから」
「そうだね」
何の用かは教えてもらえなかったけど、暇つぶしになるかな?




