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第4話:勝手にキャラメイキング?

「落ち着いたかい?」


 40歳半ばくらいの、どこでもいるって感じのおばさんが私の背中を「よしよし」と2回撫でた。

 その伝わる感触から、私は何も着てなくて裸だって事が分かった。でも、恥ずかしさは無くて、私はコクリと小さく頷いて微笑んでみせた。


「さて……。体の調子を見ましょうか。5日間も寝込んだままだったからね」

「5日間も?」

「そうそう。だからちゃんと体が動くか見てみないとね。あと怪我の具合もね」

「うん」


 おばさんの言う通りに体を動かしていく。腕を上げたり、回したり。そして、脚の調子を見るからとベッドから降りて立ったときだった。

 バ~ン! と、扉が勢いよく開いて。


「おう。お姫様はまだ目を覚まさないのかい?」

「可愛い寝顔を拝見しとこうかね」


 2人のおじいさんが入ってきた。

 目と目が合って、数秒間、時が止まった。


「キャァァァァァ!!」


 悲鳴を上げると同時に、ベッドに勢いよく潜り込んだ。

 信じられない……信じられない! 全部……見られた~!




「な~、許してくれんか~。顔しか見てないから。細くて可愛い体なんて見てないからの~」


 ベッドに潜り込んだままの私に謝ってくるけど。

 細くて可愛いって……絶対見てるじゃない! あっ! そうだ、私の服はどうなったの?


「私の服は?」

「あ~そうだったね。ほらっ! お前さん達! お姫様のお着替えだよ! 出ていきな!」

「お……おう。服着たら呼んでおくれな」

 キ~~バタン。と、音がして、おじいさん達の気配が部屋からなくなった。


 おばさんから学校のブレザーの制服を受け取って着ていく。白い上着に赤いスカートでデザインも良くて、すごく可愛い。

 生き返って違う世界に来ても、死んだときに着てた服のままなんだ……。

 刺されたときの背中の穴は何故かなかった。


「とりあえず、いろいろ話をする前に顔を洗っておいで。洗面所はそこを出て右に行ったらあるからね。ちゃんとお花も摘んでおくんだよ」

「も~~~! 行ってきますっ」


 私とおばさんはお互いに笑った。おばさんは「あ~はっはっはっ」って、豪快にだったけど。



 洗面所。水道がないらしく、水の入った桶が置かれているだけだった。

 う~ん……。この世界は元の世界よりも文明が発達してないのかな? 海賊船もそうだし、部屋の窓もガラスの窓じゃなかったし。

 そんなことを考えながら、顔をタオルで拭いて見上げると、壁に鏡がかけてあった。

 ガラスは無いけど鏡はあるんだ……。

 鏡を覗き込んでみると――。


「誰……これ?」


 顔の作りはいつもの私。でも、黒色だった髪の色は輝く金髪に、ブラウンだった瞳の色は赤くなっていた。

 可愛い……。生きてた元の世界では、自分のこと可愛いなんて思ったことはなかったけど、今の私は数倍可愛くなってる。

 この金髪のせい? 

 腰まである髪に指を通して上にかきあげると、サラサラ~っと、元に戻っていく。5日間も寝込んでたのに、まるで洗いたての髪みたいに。


「う~ん。考えても仕方ないかな。転生ってこういうものなんだろうな」


 1人で納得して、赤いリボンでポニーテールにセットする。これがいつもの私のスタイル。

 一段と可愛くなった私自身に「お~~~」と感激したのは秘密……。



 部屋に戻ると、あばさんたち3人の他に、皮の鎧みたいな防具を装備した男の人が増えていた。腰には剣が携えてあって、筋肉すご~~~て、感じの40歳くらいのおじさん。

 おばさん、おじさん、おじいさん2人。若い人がいないな~。


 テーブルに対面するように、私と兵士みたいなおじさんが座り、私の後ろにはおばさんが立っている。兵士さんの後ろにはおじいさん2人が立っていて、ジ~~~っと見てくる。さっきあんなことがあったばかりで少し恥ずかしいな……。


「さて。ちょっとお話聞かせてくれるかな?」


 兵士さんがノートみたいな物を開いて、羽ペンにインクを付けながら聞いてくる。


 話って言われてもな~……。

 ちょっと迷ってると、おばさんが私の肩をポンポンと優しく叩いた。


「まずは自己紹介でもしようかね。私はヴェリラ。そっちのジジイどもは右からドリュー、ディアゴ」


 紹介された2人の左頬に赤い手形がついてる。ノックもしないで入ってきたからすごく怒られたみたい……。

 2人はへへっと頭を掻いて頭をペコっと下げてくる。

 許してあげようかな。心配? してくれての行動だし。


「自分は、冒険者で任務でこの村に来ているラグルといいます」


 『冒険者』という単語に私は目を輝かせる。だって、ゲームとか小説を読んで知ってる言葉が聞こえたんだよ? 冒険者ギルドとかあるのかな~? 任務でって言ってたし!

 1人で興奮していると、ヴェリラさんが少し屈んで私の手を優しく握ってくる。興奮してるのを怖がってると勘違いしたみたい。冒険者っていう言葉に興奮してたなんて言えない。

 私も自己紹介して誤魔化さないと……。


「私は藍田咲耶です」

「うん。アイーダ・サクヤさんね」

 ラグルさんがノートに名前を書いていく……って、ちょっと待って! アイーダって何? 誰? あっ! そうか、外国だから苗字と名前を逆に言わないとダメなのかな?


「違います! サクヤ・アイダです!」

「うん? サクヤ・アイーダさん?」


 アイーダから変更不能!

 両手で頭を抱えて、どうしよう? って俯く。


「この子はサクヤちゃん。それだけでいいだろうさ」


 ヴェリラさんの助けに顔を上げると、『まかせな!』 とばかりにウインクしてた。


「じゃ~、この村の人達に助けられるまでのこと話してもらえるかな?」


 私はその質問に言葉がつまった。転生したところが船の上で、海賊に襲われてました。なんて言っていいのかな?

 助けて! そんな想いでヴェリラさんを見ると。


「可哀相に……よっぽど怖い目にあって記憶喪失になったんだね~」


 怖い目にあったっていうのは間違ってないかな? でも、記憶喪失? 私はこの世界のこと何も知らないから間違ってないのかな?


「魔王軍に攻め滅ぼされたどこかの国のお姫様で、逃げてる途中で魔物に襲われて船が遭難して、この寂れた漁師村に流れついたんだろね」


 ……魔王軍? お姫様って何ですか? 襲ってきたのは魔物じゃなくて海賊ですけど? 


「綺麗な髪。幼いながら整った顔。わたしゃね、すぐにどこかのお姫様だって気づいたよ」

「あの! 私、お姫様なんかじゃ――」

「やはりね。その上等な衣服。それに左胸に施されているどこの国かはしらないけど、立派な紋章の刺繍。自分もそうだろなっておもってましたよ!」


 否定より先に肯定されちゃった!

 この服は学校の制服で、左胸のは、なんの威厳もないただの校章です! なんて信じてもらえないんだろな~~~!


 その後も勝手に私のキャラメイキングは続いて……。


 金髪で赤い瞳のどこかの国のお姫様。名前はサクヤ。魔王軍に国を滅ぼされて、護衛の兵数名と一緒に船で国を脱出。護衛の兵は、追っ手の魔物と勇敢に戦うも、1人また1人と倒れていき、最後の兵が倒されたときのショックで記憶喪失に。船は大破して今にも沈みそうだったけど、奇跡的にこの村に流れ着いた……。


 うん……もう、それでいいです。

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