第46話:親子の証明。遺伝子の力はすごかったよ
ちょっと恥ずかしい思いをして音楽隊の人達の間を抜けて門を潜ると、街の人達が拍手しながら出迎えてくれていた。
あ、そうそう、私の声はエールのクールタイムで出なくなってるよ。
人数が多かったしね~。20人くらいのオーケストラの楽団みたいだったよ。
街の人達が私たちを見てなんか話してるね。
「一番ちっちゃい子が勇者様なのかい?」
「一番弱そうだがな~」
「一番すぐにやられそうだな」
やったね! 一番を独占!
……嬉しくないよ!? ちっちゃい、弱い、やられそう。間違いじゃないけどね!
強くなろうと努力はしてるんだけどね。
毎日の日課で腕立て伏せ3回を3セットでしょ~、腹筋は3回で~……全然ダメじゃん!
ほら、私って実戦で強さを発揮するタイプなんだよ。
運の強さだけどね!
「そういえば、お父様はいらっしゃらないのですか?」
イザベラちゃんが周りを見回しながら、近くに居た兵士さんに聞いてた。
確かに、あのお父さんが真っ先にイザベラちゃんに会いに来ないのはおかしいよね~?
街の人たちを吹き飛ばしてでも駆けてくるような気がするよ。
「なかなか到着されないサクヤ様達を心配して、2日前に飛び出して行かれましたが……」
「何をやっているのですか! お父様は!?」
「クックック。しかし、おかしいですね。それだったら途中で合流してるはずですが?」
「あ……はい。何しろ、飛び出して行かれたのが、あちらの方に向けてなので」
と、兵士さんは東の方角を指さしたよ。
うん。私達は南から来たんだから、途中で出会うはずないよね~。
「恥ずかしいですわ! 穴があったら入りたい気分ですわ!」
「行動力はあるみたいだけどね~」
方向音痴っていうよりも、脳筋っていう言葉がしっくりくるね。あの体だし。
「さて、これからどうしましょう? サクヤ様の声もまだ出ないみたいですし。クックック」
「お父様も不在ですし、もう夜になってきてしまいますから、今日はこのまま街の宿に一泊しましょう」
ということで、宿で一泊することにしたよ。
モフモフさんはさすがに入れないから、門の前で兵士さんと見張りをするってこの場に留まったよ。
大きすぎるのも問題だよね~。
翌朝。
王様に会えるっていうことで緊張してあまり寝れなかった……なんてことはなかったよ。
疲れてたんだろね~。お風呂に入って、ベッドに入った瞬間に眠っちゃったみたい。
もう朝までグッスリだったよ。
「おふぁ~ようございます。お姉様」
ベッドからムクリと起きたイザベラちゃんが、口元を手で隠しながら欠伸しながら挨拶してきた。
「おはよ~。まだ眠そうだね?」
「ええ……あまり眠れませんでしたわ」
王様に会えるから緊張してたのかな? 寝る前までは普通だったのに……。
「お姉様のベッドに潜り込もうかと悩んで葛藤してたら眠れませんでしたわ!」
「やめてね! 絶対!」
2部屋借りて、私とイザベラちゃん、クックさんとリリーという部屋割りだったんだけど、間違いだったかな~。
でも、資金的にツインルームを2部屋借りるしか手がなかったわけで……。
振り分けをみんなと相談したときに、イザベラちゃんは『お姉様と一緒の部屋がいいですわ』と言って、リリーは『魔族同士、クックさん先輩と一緒が何かと都合がいい』とかなんとか言って……。
あれ? その時点でなんかイザベラちゃんとリリーに仕組まれたような気がしてきたよ……。
部屋割の問題は後回しにして、クックさんとリリーと合流して、宿屋さんの1階にある食堂で朝食を取る事にした。
朝はバイキング方式になっていて、大皿に盛られた料理を好きなものを好きな量だけ小皿に取り分けて席に着いた。
ミルクとコッペパンみたいなのと、レタス、ハム、ウインナーを持ってきた。
コッペパンに縦に切り込みを入れて、そこにレタス、ハム、ウインナーを挟んで、ドレッシングをかけてパクリ。
「おいし~」
ドレッシングは酸味が少し効いてて、くどくなくて食が進んでいくね。
寝起きの朝食にはこのくらいがちょうどいいね。
「サクヤ様。それで足りるのですか? クックック」
「うん。クックさんとリリーが多すぎると思うな」
ウインナーが入った大皿ごとテーブルの上に置かれてるし……。
他にもハムとか焼いたベーコンとか……。バイキングって大皿ごと持ってきていいんだったかな~?
クックさんとリリーがそれを瞬く間に食べて量を減らしていくのを眺めてると、宿屋の入り口のドアを勢いよく開け放って、イザベラちゃんのお父さんが入ってきた。
それを見て、食堂に居た人たちが椅子から立ち上がって片膝を着いた。
やっぱりイザベラちゃんのお父さんって、公爵で偉い人だったんだね~。
「ここは皆の憩いの場じゃ。今は気楽に食事を楽しむがよい」
カスケール……だったかな? カスケール公爵がそう言うと、みんなが一息吐いてから椅子に座り直して……。
「イザベラちゅわ~~~ん。遅かったからパパ心配しちゃったよぉぉぉ!」
「「「だぁぁ!」」」
ガターン! って、椅子に座り直してた人達がみんな転んだよ!
そりゃそうだよね~。入ってきたときは凄い貴族って感じの風格のオーラを漂わせてたのに、イザベラちゃんを見つけた瞬間にこれだもの。
「お父様。公の場ではそのような言動は慎しんでください」
「う……うむ」
カスケールさんも娘にはとことん弱いな~。
そんなカスケードさんが、私の前で跪いてきた。
その様子を見て、その場にいた人達がざわつき始めちゃった。
王の次くらいに? 身分が高い公爵が、見た目普通の女の子に頭を下げてるんだから当たり前だよね。
「サクヤ様。王都フェルビドへの無事な到着、嬉しく思いますぞ」
「ありがとうございます」
途中で川に落ちちゃったけどね……。
「では、1時間後に城までご足労願いますぞ」
そう言って、一礼してから去って行ったよ。
何もしないで立っていたら、凄く威厳のある人だと分かるんだけどな~。
それがどうしてイザベラちゃんの前だとああなるのかな?
『お姉様! お姉様! お姉様!』
『イザベラちゅわ~ん! イザベラちゅわ~ん! イザベラちゅわ~ん!』
親子だからか~~~!!
見た目は全然似てないけど、言動パターンが同じなんだよ!
遺伝子の力ってすごいね……。




