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第45話:テントの謎?

「おっきい門だね~」


 前方に見えてきた王都を見て、そんな声が漏れちゃった。

 見えてるだけで、実際にはまだ1キロメートルくらいはあるんだけどね。

 王都を囲むように城壁が聳え立ってる。

 その見えてる城壁の大きさや長さだけで、ギュオールの街の何倍も大きい街だっていうのがすぐに分かった。

 城壁の外の周辺が牧農地になっているようで、畑が一面に広がって、柵の中には牛が飼われてた。

 城壁の中じゃなくても大丈夫なの? って、思ったけど、魔物が襲うのは基本的に人間のみ。

 その魔物も王都のような、兵士もいっぱいいるし、冒険者の出入りも激しいところに近寄ってこないよね。


 しばらく眺めてから街道沿いに門へ向かっていくと、何故か門の前に、街道を挟んで向かい合うように沢山の野営用テントが張られていたよ。


「クックック。街の中に入るために、野営しないといけないほどの厳しい審査があるのでしょうかね?」

「順番待ちしてる人たちのテントってこと?」

「こんなに厳しい審査は今まで行われていなかったはずですわ。お姉様」


 王都出身の1番詳しいはずのイザベラちゃんが首を傾げながら言った。


「ふむ……。とりあえず、もう日が沈むまであまり時間がありませんし、門まで行ってみましょうか」

「そうだね。じゃ~出発~!」


 モフモフさんに荷台を繋いだまま、テントの並んでいる街道を抜けて門まで移動した。

 人が並んで順番待ちをしてる様子はなくて、ただテントが並んでいるだけみたいだけど……。


 門まで到達すると、当然の如く門番をしてる兵士さんに止められちゃった。


「狼が引いている荷台……」

『あぁ!? なんか文句あるのか?』


 モフモフさんが威嚇するように言って睨むと、兵士さんは尻餅をついちゃった。

 モフモフさんを知らない人がそれやられちゃうと怖いよね~。


「怖がらせちゃダメだよ」

『すみません。ボス』

「しゃべる狼……あの、あなたがサクヤ様で間違いありませんか?」

「あ、はい」


 荷台から降りて、ギルドカードを見せた。


「確かに本人様ですね」

「じゃ~、通っていい?」

「あ、お待ちください。お連れの方々は……」

「『保護者です!』」

「お友達~」

「婚約者ですわ!」


 みんなが胸を張って宣言したよ!

 ていうか最後の!


「イザベラちゃん! 婚約者じゃないよね!」

「お姉様! すでに私達の仲は婚約者ですわ!」

「え!? イザベラちゃんの頭の中ではそこまでいってるの?」

「もちろんですわ! お姉様にはベンゲスト・フェルド家に入ってもらいますわ!」

「……とりあえず、落ち着こうかイザベラちゃん」


 私が深呼吸の真似をすると、イザベラちゃんも深呼吸して段々と落ち着いてきた。

 う~ん……。この世界では同姓結婚って日常茶飯事的にあるのかな?


「すみません、お姉様。少し取り乱しましたわ」

「うん。少しじゃなかったけどね」


 イザベラちゃんが特別なだけだよね?


「手順を飛ばしてましたわ。お姉様にはまず、男性になっていただかないと」

「無理だから!」


 イザベラちゃんの財力で改造手術とか本当にやられかねないよ!

 クックさんの後ろに隠れると、クックさんが苦笑いしてたよ。

 兵士さんは放心状態で固まってるし……。

 誰か助けて!




 そんなこんなで、なんとかイザベラちゃんが平常心を取り戻して街に入ろうとしたら、兵士さんにテントの先の開けた場所で待ってるように言われたよ。

 これ以上時間をかけるのはイヤだから、素直に従って来た道を引き返した。

 兵士さんは誰かを呼びに行ったのか、街のほうへ駆け出して行っちゃった。


 しばらく待つと、1人の兵士さんが街の方からやってきて、ラッパを3回鳴らした。

 すると、テントの中から沢山の兵士さんが飛び出してきた。

 そしてテントを片付け始めちゃった。


「クックック。兵士が中にいたようですね」

「うん。でも、どうしてテントなんかにいたんだろね?」

「さぁ? わかりませんな」

「それよりもサクヤっちー。時間がもったいないから、ここで料理つくって食事にしちゃおう~」

『その意見に賛成です。腹が減りました』

「クックック。そうですね。私も腹が減って暴れちゃいそうですよ」

「わかったよ。急いで作るね」


 いつまで待たせられるのか分かんないし、時間を有効活用しないとね。

 イザベラちゃんがアイテムボックスから簡易コンロを取り出して、スイッチの部分に魔力を送ると火が着いた。

 これって便利だよね~。スイッチの部分に炎の力が込められた魔石が使われているみたいで、値段はすごく高いそうだけど。

 野菜と肉を取り出して、ナイフで切り分けて鍋の中に入れた。

 相変わらず肉と野菜のスープしか作れないけど、栄養はバランスよく取れてるはず……。

 問題は同じものばかり食べてると、飽きちゃうってとこかな。


 もう少しスープがいい感じに出来上がるというとこで、テントがあったところから勇壮な音楽が聞こえてきた。


「何やらやかましいですな」

「だよね~。音楽を聴きながらサクヤっちの料理を食べるのもいいかもだけど」

「ちょっと騒がしいけどね。あ、クックさん味見して~」


 クックさんが小皿にスープを少しだけ入れて飲むと、親指を立てて、バッチリです、と言った。


「クックさん先輩は、サクヤっちの料理だったら何でもバッチリって言っちゃうじゃん」

「当たり前です! サクヤ様が自ら作ったのですよ? 例えこの前のように、焦がして炭になりかけた焼肉でも、私にとっては至高の料理です! さらにショボ~ンとなった顔が最高の調味料ですな!」

「ショボ~ンってなってないし!」


 そんなことを言って笑いながらスープを食べてると、音楽が徐々に弱くなって、しばらくすると完全に止まっちゃった。

 どうしたんだろうと思って目を向けると、楽器を持った兵士さんが次々に倒れていっちゃってたよ!

 そして、門番をしてた兵士さんが勢い良く走り寄ってきた。


「すみません! 説明が抜けていました! 音楽がなったら街道を通って、音楽隊の中を進んで門まできてください!」

「え~! 食事を始めたばっかりなんだよ?」

「歓迎セレモニーなんです! お願いします!」

「クックック。それは分かりましたが、何故、音楽隊のみんなは倒れたのですかな?」

「カスケール公爵様が歓迎セレモニーを計画して、予定では3日前に到着するだろうと言うので、みんな門前で待っていたのですが予定日になっても来る気配がなく、それから3日間の間、テントを張って待機してたのですが、みんなさすがに体力の限界で……」

「えー……」


 最後に残った体力でなんとか音楽を弾き始めたけど、私達が食事を始めちゃったのを見て、燃え尽きたらしいよ……。


「お父様ったら何を考えていますの! お父様の馬と私達の速さだと同じ日数で着けるわけがないじゃありませんか!」


 3日と6日の違いだからね~。

 本当は5日で到着の予定が、いろいろ寄り道してたから、1日余分にかかってるし。

 それにしても、イザベラちゃんのお父さんに兵士のみんなも振り回されてるんだね~。

 使いどころが間違ってると思うけど、脳筋っていうものなのかな?


「とりあえず、我々も残った命をかけて音楽を奏でますから、どうか門まで進んできてください」


 命かけて音楽を奏でるって、どんだけなの!?

 あ、イザベラちゃんのお父さんの命令だからか~。


「えっと……うん。みんな頑張って!」


 と、声をかけたら、兵士さん全員が光輝いて、雄叫びをあげて音楽を弾き始めたよ!


「なんだこれ? 体力も回復して眠気も吹き飛んでいるぞ! 力が溢れてくる~~~!」





 こんなとこでエールが発動するって、みんなどれだけ窮地だったの~~~!



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