第38話:王都へ向かうことになったよ
イザベラちゃんが似てない父親に抱きしめられて、なんだか嬉しそう?
久しぶりの再会だもんね。
最初は危ない人かと私も警戒したけど、そのオーガに似た体格から分かるけど、凄い威厳のある人なんだろな。
「イザベラ~ちゅわ~ん! どうして帰ってきてくれなかったんだ~!」
「お父様! お髭で顔をグリグリするのは、おやめくださいまし! て、どうして来たのですか!」
「だってだって~、俺の誕生日だから帰って来てって手紙出したのに帰ってきてくれなかったから~。一緒にお祝いしてほしかったのに~」
威厳なんてなかったよ! 激甘な親バカか~~~!
イザベラちゃんを抱きかかえたままグルグル回っちゃって。
もうね、ポカ~ンと見てるしかないよね。
「お父様! 皆様の前でそのような振る舞いはおやめください!」
「ふも?」
変な言葉を発して、周りをゆ~~~くり見回しているよ……。
ここまでの言動から、この後どんな反応をするのかちょっとドキドキだよ……。
「俺としたことが、敵のマインドコントロールにまんまと嵌まってしまったようだ!」
「「「だぁぁ!」」」
騎士さん達がズッコケて馬から落ちちゃったよ!
え? どいうこと? 敵のマインドコントロールって……。
クックさんとリリーを見ると、右手を顔の前で振って、違う違うってしてた。
「お姉様……。いつものことなのでお気になさらず……」
「いつもこうなの?」
「お恥ずかしいですが、その通りです」
武闘派お笑い集団てことでいいのかな?
あのオーガみたいなお父様? も、みんなに向かって、今のコケはみんな揃っていてよかったぞ! なんて言ってるし……。
イザベラちゃんは、そんなお父さんのお尻を蹴って、私の前に連れてきた。
お父さんは娘に弱いらしいね……。
「お姉様。紹介しますわ。お父様のカスケール・ベンゲスト・フェルドです」
「あ、サクヤです。冒険者してます」
「で? お父様の本当の目的は何ですの? まさか私に会いに来ただけではないのでしょう?」
「イザベラちゅわんは何でもお見通しだね~。おい! 連れて来い!」
と、部下の騎士さんに命令して連れて来たのは、部下の人の肩に担がれた、私を、魔王だ~差し出せ~とか言ってた騎士団の隊長だった。
鎧はボロボロに砕けていて、顔は元の形が分からないくらい青紫色に腫れあがっちゃってた。
スプラッタっていうやつだね……。生きてるのかな?
「この者がとんだ早とちりをして申し訳ありませんでした! 魔王サクヤ様!」
みんな一斉に跪いて頭を下げてきちゃった。
でもね~、ここで訂正しておきたいことが……。
「みんな頭を上げてほしいかな? 私はただの勇者の冒険者で魔王じゃないよ」
「勇者で冒険者ですか! では、そのように我々も振舞いましょうぞ」
よかった。みんな立ち上がってくれたよ。
カスケールさんが握手を求めてきたからそれに応えて握手をしたけど、なんかね、手が大きいな~。
私の顔なんてすっぽり入っちゃいそうだよ。
「そういえば、早とちりってどういうことなんですか?」
「おお。我々がここに参じたのはそのことであった。この街から来た3人組の冒険者の報告を聞き、王が命じたのは、丁重に王都までお連れしろということであったのだが、この者が、連行、もしくは討伐と勘違いして、先の事態となってしまったのだ」
「クックック。主の命を聞き間違えるとは、とんだ不忠者ですね~」
私の言うことをあまり聞かないで、好き勝手やってるクックさんがそれ言っちゃうか~。
カストールさんが、まったくその通りでお恥ずかしい、と言って、ペコペコ頭を下げてきたよ。
私はそれに、いえいえ、と、顔の前で手を振って応えた。
で、公国を作っちゃったけど、どうしたらいいか聞いたら、ここは元々領主が納めてた地域だから、そのままサクヤ公国として継承したらいいということだったよ。
これで正式に公国として認められたってことかな?
「でだ、私の口から申そう。サクヤ様、王都へとご足労願えないだろうか?」
「えっと……王都まで何日かかるんですか?」
それなりにかかるなら、いろいろ準備しなくちゃだしね。
「馬でなら3日、馬車だと5日ですかな。徒歩だと10日ほどかかるかと。あ、それと、受けてくださるのなら、従者は1人までにしてもらえますかな。大勢で来てしまわれると、皆が警戒してしまうので」
王都では魔王が誕生したって噂が広まっちゃってるみたい。
もちろん、その噂を流したのは例の3人組の冒険者。
「ちょっとみんなと相談させてください」
徒歩で10日か~。結構、離れてるんだね。
それに連れて行けるのは1人か~。
モフモフさんに乗って行けば楽だけど、魔獣だから大騒ぎになっちゃうよね。
てことは、クックさんかリリーだけど……。
「で、どうしようか?」
「クックック。私はサクヤ様が行くなら行きますよ」
「私も行きたいけど~。護衛として適任なのはクックさん先輩だよね~」
『うむ。今回は俺とリリーでここの防衛をしておこう』
うん。すんなり決まったね。ていうか、これしか選択肢はなかったようなものだけど。
「私もお姉様と同行いたしますわ!」
後ろから抱きつきながら言ってきた。
イザベラちゃんもいたね~。
あれ? でもイザベラちゃんは別に従者ってわけじゃないからいいのかな?
「イザベラちゅわんは俺と一緒に……」
「イヤですわ。お父様と一緒なんてウザイだけですわ」
「うわ~~~~ん! みんな~イザベラちゅわんがいじめるよ~」
「「「よしよし」」」
部下の人に慰められてるし!
カストールさんがどういう人なのか分かんなくなってきた~!
結局、行こうということになって、それだったらカストールさん達の馬に乗せてもらおう、ということになった。
イザベラちゃんはイヤがってたけど、なんとか説得したよ。
重い荷物を持たなくていいし、3日で着くしね!
「あ、あの。王都へ行きます。それでですね、一緒に……」
「おお! ありがたい! 我々は先に戻って報告してきますぞ! 魔王ではなく勇者であったとも街の皆に言い聞かせておくからの~~~……」
の~~~~、と、素早い動きで馬に乗って駆け出していって、あっという間に見えなくなっちゃった。
話は最後まで聞いてほしいな! せっかちな人だな~!
「馬車で行こうか?」
「それがいいですわ! お姉様!」
「クックック。サクヤ様は乗馬ができないですからね~(おこちゃまだから)」
最後のボソっとつぶやいてるの聞こえてたからね、クックさん……。
ということで、私は王都へ向かうことになったよ!
ギュオールよりも大きい街は初めてだから、ちょっとドキドキしてるよ!




