第36話:みんで冒険者登録してみたよ
あれから3日が経ったけど、特に変化らしい変化はなかったよ。
イザベラちゃんが領主になったからといって、どう変わるでもなく、今日も普通に学園に行ってる。
私はというと……。
リリーと市場に来た。
昨日、あの農村から野菜が届いたって知らせを聞いたからだけど。
「お、サクヤちゃんとリリーちゃん、おはよう」
と、挨拶してくれたのは肉屋のご主人さん。
お金がないときにオマケしてくれるいい人だよ。
「おはよ~ございます」
「おはよう~。あ、それから~、私はこれでも100歳超えてるの。意味分かる?」
「へ~、長生きなんだね~リリーちゃんは」
「……ぷっ」
「ちょっと~サクヤっち! そこ笑うとこ? 年上に対して、ちゃんはないよね~」
「だって、年齢なんて関係ないよ。見た目が重要なんだよ」
「え~~~」
「私なんて15歳なのに、背が小さいっていうだけで12歳と思われてるし……」
私達は見詰め合ったあと固い握手を交わした。
まぁ、魔族の年齢なんて、あってないようなものだと思うんだよね。
クックさんなんて、生まれてから半年もたってないんだから。魔族って不思議だよね~。
そんなやり取りをしながら歩いていると、今までと変わらない挨拶をしてくれる街の人達。
本当にいい人達だよね。
そして目的の野菜店に到着~。
並んでる並んでる! キャベツに白菜に大根にその他もろもろ!
「サクヤちゃん、いらっしゃい。サクヤちゃんのおかげでまた野菜が売れるようになったわ」
「よかった! で、おばさんはもうこの野菜食べた?」
「ええ。美味しかったわよ」
「よかったよ~」
本当によかった。1度魔物化した野菜でも普通に食べれるみたいで……。
おばさんを実験台にしたわけじゃないよ? 聞かなくても買って食べるつもりだったし……。
で、いっぱい買っていこうとしたんだけど、ここでやっと気付いちゃったんだよね……。
「おばさん。このキャベツと白菜を2個づつ買います……」
「はいよ。ありがとね」
で、買った物をリリーと分けて持つでしょ。
私は両手にキャベツを1個づつ。リリーは両手に白菜を1個づつ。
「サクヤっち。野菜って重いね……」
「うん……」
力1コンビ。能力炸裂。
悲しいね。
野菜を買って帰る途中、冒険者ギルドの前を通ったときにある考えが浮かんできた。
クックさん達って、冒険者登録したらどうなるの? そもそも出来るのかな?
試しにやってもらってもいいかな?
クックさん達を連れてきた!
モフモフさん達はさすがに門番の人に怒られたけど、モフモフさんだけでも~とお願いして街の中に入れてもらえたよ!
「テオールさ~ん。クックさん達を冒険者登録してみていい?」
「え?」
凄いビックリした顔でクックさんとモフモフさんを見てるよ。
クックさんはいけると思うんだけどな~。見た目は鎧を着た普通の残念イケメンさんだし。
問題はモフモフさんだよね。魔物の狼だし。
「クックック。まあ、やるだけやってみればいいじゃないですか。登録できなくても我々は別にいいですし」
「だよね~。サクヤっちの思いつきのお遊びだし~」
「遊びじゃないよ! みんなもギルドに登録しておけば私と堂々とパーティー組めるんだよ?」
今思いついた言い訳……。これ内緒ね。
その言い訳にテオールさんが納得して、登録の魔法陣を用意してくれた。
そして私達の周りに冒険者さん達が集まってきた。
その先頭にいるのはラグルさんだった。興味津々な様子で見ちゃってる。
「最初はクックさんからいく?」
「そうですね。クックック」
クックさんが魔法陣に右手を置いて、テオールさんが詠唱すると、魔法陣がピンク色に輝きだした。
私の時は黒い稲妻がバリバリーって感じだったのに、クックさんは普通だよ……。
空中に出てきたカードにみんなが覗き込む。
職業―守護聖騎士
「「「はぁぁぁぁ!?」」」
「「「いやいやいや! まてまてまて! おかしいだろ!?」」」
みんなからちょっと待ったがかかりました!
みんなの反応は当たり前だよね! だって、魔族なのに聖騎士って……。
「守護じゃなくて、お笑いの聖騎士だろ!?」
そっち!? お笑いっていうのは私も否定しないけど。その的になってるのは私だし!
「クックック。私もお笑いのほうがよかったのですがねぇ」
「転職しちまえ!」
周りから笑いが起こったけど……。
みんな聖騎士っていうのはスルーなんだね。まぁいいけど。
次はリリーだね。
結果は……。
職業―守護聖導師
「あはは。魔族なのに聖っておかしいよね~」
「リリー! ありがとう!」
「え? どういたしまして?」
気付いてもらえた嬉しさで思わず抱きついちゃったよ!
でも、2人とも魔族なのに聖ってどういうことなんだろ?
もしかして、モフモフさんも?
『いやいや。俺はただのウォーウルフですよ。2人と違って魔獣ですからね。そんな聖なんて付くわけが……』
「いや、あんた普通のウォーウルフよりもかなり大きいからな。進化して変わってるんじゃないか?」
ラグルさんの言葉にみんなが頷く。
私はウォーウルフのことよく知らないけど、確かにポチさんとかよりも遥かに大きいよね。
『進化してるといっても、グレートウルフくらいじゃね~かな~?』
その結果は……。
職業―守護聖狼王
「「「は?」」」
みんなが変な声を出して固まっちゃった。
予想通り、守護と聖がついてるんだけど、狼王ってもしかして……。
「モフモフさんってケルベロスだったの!?」
『ボス! それは犬です!』
「しかも王じゃなくて、地獄の門の番犬だな」
「わははは! それでこそサクヤちゃんだ!」
素で間違って大笑いされて顔が真っ赤になったよ!
そんな私をクックさんが優しく頭を撫でて慰めてくれる。
私が笑いをとったときだけクックさんが優しいよ~~~!
「サクヤっち。狼王っていうのはね、伝説の魔獣、狼王フェンリルのことだよ」
「へ~……って、モフモフさん進化しすぎだよ!」
『そんなこと言われましてもですね……。ほら狼王って言っても、フェンリルって決まったわけじゃないですし』
座って右手を左右に振って、ないない、ってアピールしてるけど、カードに書かれてるスキルを見るとね……。
「スキルの技に、フェンリルクロースラッシュってあるね……。他にもフェンリル波動っていうのも」
『そんなスキルあったの知らんかった……』
今まで光の疾風と普通に牙と爪で攻撃してたから、本当に知らなかったみたいだね。
これは今度、みんなでスキル検証してみないとだね。




