表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/186

第34話:騙されたままでもいいですか?

 騎士達が、私を捕らえるためにゆっくりと前進を始めて、それを防ぐために冒険者さん達が輪になって対峙する。

 ラグルさんとレオドナドさん、テオールさん、ビィスコさんは私を守るように側に居てくれていた。


「まだ分からないのですか? そこに居るのは魔王なのですよ?」

「うるせーよ! 世の中にゃ魔物を使役するやつもいるだろ~が! 確かな証拠はあるのか!」

「ギルドカードだ! 騎士様、ギルドカードの職業を読ませてみてはどうですかい?」


 騎士たちと冒険者さん達の言い合いに、3人組みの冒険者が割って入って、その場にいた人たちが私に注目してきた。

 本当はね、字が読めるようになってから、おかしいとは思ってたんだよ。

 職業のところに紙が貼られて、その上に勇者って書いてあるんだもん。

 え? 紙が貼られてる時点で気付けって? どうせ字が読めないしな~って、たいして気にしてなかったよ。

 だけど、今この紙を剥がすときが来たんだね……。


「サクヤ様……私があの共を……」

「だめだよ。それこそ取り返しの付かない大事になっちゃうよ」


 クックさんを制して紙を剥がすと、その下から出てきた文字は、3人組の冒険者が言った通り、魔王だった。

 そのことを声に出して伝えると、もう回りは大騒ぎだよね。


「これで分かっただろう? 明朝まで猶予をやろう。引き渡すか、このまま庇ってみんなで国家反逆罪になるか、話し合うんだな。逃げたりしたら街の者の安全は保障できないぞ」


 そう告げると、騎士たちは丘から離れていった。

 どこか近くの草原で野営をしているみたい。



「みんなすまない! サクヤちゃんが魔王だということはギルドカードを作ったときに分かってて、俺達4人がサクヤちゃんに勇者だと騙してたんだ!」


 レオドナドさんの告白に、街の人たちが、隣同士、親しい人達でヒソヒソ話してる。

 納得できないよね。


「サクヤちゃん、すまん。隠してたばかりに、辛い目にあわせちまった」

「ラグルさん、レオドナドさん、私、騎士さん達の元へ行きます。ここにいるとみんなが反逆者になっちゃうから」


 捕まったあとは、クックさん達と逃げ出して逃避行もいいかな……。それだとこの街の人は大丈夫だろうし……。

 そんなことを思ってると、イザベラちゃんが街の人達に向かって仁王立ちになった。

 いつもここぞって時にいつも騒ぎを起こす子がいるのを忘れてたよ!


「あなた達はお馬鹿なんですの! 魔王だからってお姉様のことでこんなに困惑するなんて! 魔王との戦いの世で、殺伐とした街のみんなを笑顔にしてくれたのは誰ですの? ただ戦いの技術を学ぶための学園に笑いをもたらしたのは誰? ゴブリンの集団から街を救ってくれたのは誰? 声を揃えて言ってみて下さいまし!」


 最後のはいいとして、私はいつの間にかお笑いキャラになってたっていう認識でいいのかな?


「そんなの決まってるだろ! 勇者サクヤちゃんだよ!」

「魔王? なんだいそれは? サクヤちゃんはこの街の勇者だろう? みんなそんなことは言われなくても分かってるんだよ!」

「ギルドカードの職業? サクヤちゃんは勇者だよ! 私達がサクヤちゃんをそう騙し続けてあげるさね!」

「私達が話してたのはね、このままサクヤちゃんをどうやって庇っていくか考えてたんだよ!」


 あれ……みんなのこの言葉って……。

 涙が溢れてきた。


「わたし……騙されたままでもいいですか? 勇者のままでいいですか……?」

「ああ。騙されてままでいてくれ!」


 1人がそう叫ぶと、みんなが大歓声に包まれた。




 クックさんとリリーが私の側まで来て、話しかけてきた。


「サクヤっち泣いちゃってる~」

「嬉し涙だもん!」

「うん。ここの人達って優しいね」

「クックック。この時代の人間は魔王というだけで悪と決め付けているようですねぇ」

「え? 私も魔王って悪だと思ってたよ?」

「サクヤっち笑える~。本人が何言ってるの?」

「クックック。いい機会です。みなさんに元初の魔王というものを教えてあげましょう」


 そう言うと、クックさんが翼を出して少しだけ高く浮いた。

 クックさんの足がプルプル震えているのは秘密にしておいてあげよう。


「みなさんは、元初の魔王というのはご存知ですか?」

「おとぎ話のあれか? 4000年以上前の最初の魔王という」

「そうです。このときの魔王とは、魔族と魔物を統べる王というだけで、悪ではなかったのです。それどころか人間とその他の種族と共存し、笑顔の耐えない国を治めてました」

「ああ。知ってる。その魔物を人間が切り殺しちゃったから、復讐で悪になったんだろ?」

「簡単にいうとそうですね。付け加えるなら、その人間は無抵抗な魔物を切り殺すことに酔い痴れ、次々に魔物を斬って死なせ、バレそうになったとき、自らの体に剣で傷つけて、魔物に襲われたと人間の国で言い回ったのです」


 ここからはリリーが説明するね。と、リリーが今度は空を飛んで、入れ替わりにクックさんが降りてきて、地面に座り込んだ。

 クックさん、高所恐怖症なのに頑張ったね……。


「当然、そうなると人間は魔物は危険だと思い込んで魔王の国に攻め込んできたの。でも元初の魔王様はこのとき、話し合いをしようとしてたんだけど、人間はその願いも踏み躙って侵攻を続けた。魔王様は悩んだ。魔族と魔物を守るためにはどうすればいい? その間にも魔物たちは無抵抗なまま倒され続けて、そして……魔王様の悲しみは怒りに変わっていって、湧き上がってきたのは悪の心。守るためには人間を滅ぼせばいい。単純な話だよね~」


 そのあとの話では、元々、魔族と魔物のほうが能力が高くて、凶暴化した魔物に人間達は逆に攻め込まれていって、滅んじゃうかもしれないってところまでいっちゃったみたい。


「それを阻止しようと、魔王様の中で、残っていた善の心の魔王様が抵抗してたんだけど、ついに善の魔王様は体から弾き出されちゃって、魂だけが彷徨い続けて、ある人間の体に憑依することに成功した」


 その人間こそ、後に悪に染まった魔王を倒した勇者。

 勇者と善の元初の魔王って同一ってことなのかな?


 悪の魔王は倒したけど、怨念は消えず、最後に弾けた悪に満ちた魔力が世界を覆って、その魔力が浮遊魔力で、魔物が世界各地に生まれるようになった。


「で、ここが肝心なの。今現在、侵攻しているのが甦った悪の魔王だとして、私達の目の前にいるのは?」

「「「善の元初の魔王」」」

「正解。優しい心を持った魔王様の生まれ変わりの、サクヤ様だね」


 なんか凄いことになっちゃった! 私が元初の魔王……。

 ないない。きっとみんなの勘違い。だって、ステータスがオール1の魔王なんているわけないじゃない!


「サクヤ様、現実逃避している場合じゃないですよ。クックック」

「クックさんの言う通りだ。レオドナドとビィスコさんと……イザベラちゃんとで今後の方針を話し合うぞ。テオールは、街のみんなを解散させてやってくれ」


 その後、街の人達はテオールさんに誘導されて帰っていった。

 みんな私を守るために集まってくれたんだね……ありがとう。

 あ、そうだ、ラグルさんに報告したいことが。


「ラグルさん、あのね、私、西の農村で魔柱石を開放してきたんだよ。これで野菜の心配なくなるよ」

「そうか。頑張ってくれたんだな」


 ラグルさんが屈んで優しく頭を撫でてくれた。

 そして……、グウウ~~~と、お腹がなっちゃった。


「ぷぷ。サクヤっちったら、安心してお腹空かせてる~~~」

「クックック。おこちゃまだから仕方ありませんよ」

「おこちゃまじゃないもん! お昼から何も食べてないからだもん!」


 そう反論してみたけど、夜だし眠気も出てきちゃった。

 結局、私はご飯を食べて寝ることになった。

 話し合いは私を除いてすることになったんだけど、寝ている間に話し合われた内容が、全然予想してなかったことだったよ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ