第33話:私は魔王……です?
そういえば、忘れてたけど、イザベラちゃんはリリーが仲間になったあと、リリーのヒールでちゃんと回復したよ。
うん、そのあと予想通りイザベラちゃんが大騒ぎしたけど……。
「お姉様! 気絶した私を忘れてて、気付いたらお仲間が増えてるとはどういうことなんですの! 私もそのファミリーという輝きを見てみたかったですわ!」
そんなこと言われてもね、ファミリーっていうスキルの発動条件が未だに謎なんだよね。
いつの間にか体が光って、プニプニさん、モフモフさん、クックさん、リリーを仲間にしちゃったっていう……。
「ところで、リリーは力が1って言ってたけど、他のも1なの?」
「そんなわけないでしょ。魔力は3000超えてるわよ」
あ、急に遠い存在に思えてきたよ。
共通点は力が1というだけなのね……。
村に戻ってから野菜が元に戻ったことを報告すると、10人の村人さん達が畑に向かっていった。
私達も向かってそこで見たのは、風魔法で空を舞う野菜と、その野菜をコントロールして見事に箱の中に入れていく凄い技だった。
広大な農地を15人の一族だけで経営できてるわけが分かったよ。
収穫した野菜を後日ギュオールの街に届けてくれるって話してたけど、1度魔物化した野菜って食べれるのかな?
街に戻るってことを話したら、荷台を1台貰っちゃった。
使われなくなってたもので、少しボロボロだけど、街までなら余裕で耐えれそう。
馬は残念なことに数に余裕がないみたいだったから、モフモフさんにロープで固定したよ。
「犬馬車~」
『ボス。俺は狼です』
「それに馬車でもありませんわね」
「犬ソリ?」
「あはは。サクヤっちっておもしろ~い。車輪ついてるからソリじゃないよ」
『問題はそこじゃなくて、俺は狼……』
「クックック。モフモフさん、女3人集まればなんとやらですよ。気にしないで、最初から全速力で行きましょう」
『うむ……。スキル、光の疾風!』
光の疾風ってあれだよね! 光の筋になって駆け抜けていくモフモフさんの技!
すごいすごい! 景色が見えないほどの速さで流れていくよ!
そして!
――ぶち! ――ぼこ! ――ひゅ~~~ん……。――どこ~ん!
みなさま、おわかりいただけただろうか……なんて言ってる場合じゃないよ!
ロープが耐えきれないで切れちゃって、バランスを失った荷台が道に転がってた石で跳ねて、空に向かって飛び上がって、空中で砕け散ったよ! 投げ出されたよ!
あ、下に川が見えるよ。あの川の中に落ちるんだね……。
「お姉様……。これは、お約束、というものですわね……」
「イザベラちゃん、分かってるじゃない」
まあ……ね、落ちたよ川に。イザベラちゃんと私だけ2人……。
魔族ってズルイよね! 空飛べるんだよ?
どうして私とイザベラちゃんだけ、ずぶ濡れに……。
「ていうか、クックさん高所恐怖症じゃなかったの? ずるいよ!」
「この高さなら何とか……。それに、文句ならそこに居るモフモフさんに。くっくっく」
もちろん、川の土手で眺めてたモフモフさんを睨んでやったよ。
そしたら後ろ脚で頭を掻いて……。
『俺、ただの犬だから、後悔も反省も……』
「ふっふっふ。そこでお待ちになってなさい……」
あ、イザベラちゃんがキレた。わ……私も!
待て~と駆け出していくと、モフモフさんがキャイ~ンとか言って逃げ出して、しばらく追いかけっこしてた。
しばらく遊んだ後……ちがうちがう! 遊んでたわけじゃないよ?
私達は街に向かって徒歩で進みだした。
まさにトホホだよ。荷台があれば楽だったのに。
最初に泊まった村で帰りも1泊して、街に向かう。
その道中で、急に飛び出してきた熊みたいな魔物を退治したり、追いかけられたりした。(私とリリーだけ逃げ回ってた)
そんな約1週間の旅だったけど、仲間も増えて楽しかったな~。
野菜には苦労したけど、問題も解決したし、ラグルさん褒めてくれるかな~?
そんなことを思いながら歩き続けて、夜になってから街に続く丘が見えてきた。
この丘を越えれば、私の家が見えてくるんだけど、なんか様子が変だった。
丘を囲むように、馬に乗った、フルプレートっていうのかな? 全身を包む鎧を着た騎士が20人くらい居た。
「王国の騎士団ですわね。クックさんとリリーさんは見た目は大丈夫ですが、モフモフさんは念のため後方で待機を。お姉様、いいですわね?」
「うん。イザベラちゃんのほうがこういうことに詳しそうだから、モフモフさんは言う通りにして」
『分かりました』
モフモフさんがスっと気配を断って、後方の林に移動していく。
他の4匹のポチ、ゴン、タロウ、ペスも、林に隠れてたみたいで、モフモフさんが近くまでいくと集まってきてた。
私達は普通の人を装って、騎士の隙間を通って丘を登った。
丘を登る途中で、家の庭と周辺の丘を埋め尽くすくらいに、街の人全員が集まってるのが見えた。
なんか騎士たちと睨み合ってるみたいだけど……。
「あ! サクヤちゃん! こっちに走ってきて!」
「え?」
テオールさんが私を見つけて叫んできたけど、私は咄嗟に言われて立ち止まっちゃった。
そんな私をクックさんが抱きかかえて、少し空を飛んでからテオールさんの側に着地した。
続いてイザベラちゃんもリリーに抱きかかえられて着地する。
「これは……クックック。このときが来てしまいましたか?」
「ええ……」
クックさんの問いにテオールさんが頷いてたけど、なんのことなのかな?
「あやつらは何と?」
「サクヤちゃんを引き渡せって……」
え? どういうこと?
「さっきの見たでしょ!」
と、騎士達の前で私達を指差しながら叫んだのは、街で私に絡んできた3人組の冒険者だった。
「魔族を従えた者など、魔王に違いありませんよ!」
「狼の魔物も仲間にしてるのは調べがついてるんだ!」
男達の叫びに、私の家に集まった人たちが騒がしくなって、私は、力が抜けていくのを感じました……。
ついにこのときが……。
シリアス展開に……ならないかも?




