第32話:数分前の敵は今日の友?
村に戻ったら、村の人に笑われちゃった。
当たり前だよね。みんなで行って、野菜に襲われて、みんなで逃げ帰ってきたんだから。
「泥まみれだな! な? 分かったろ? あれじゃ収穫なんて無理なんだよ」
本当にね、あれは無理だよ。特に大根! 尖った先っぽから体当たりされたら死ぬかと思ったよ。
で、本題だね。何が原因でそうなったんだろう?
「岩が降ってきたんだよ。畑のど真ん中に。それが赤く光始めたら、野菜が魔物になって、畑に入ると襲ってくるようになったんだ」
「クックック。魔柱石ですね」
「そうだね。でも、都市から離れてるのに、どうしてこんなところに設置したんだろうね?」
「お姉様、ギュオールの現状を思い出してくださいまし。野菜不足で困っていたでしょう?」
『魔王という輩は、兵糧攻めを企てた。と、考えてよさそうですね』
「なるほど」
と、したらどうしよう? 畑の真ん中まで行って魔柱石を上書きしなくちゃだけど、たぶん普通に行ったら近寄れないよ。
「うん。決めた!」
「クックック。何かいい考えが浮かびましたか?」
「街に帰ろうか」
「「「いやいやいや!」」」
あれ? おかしいな? みんなで首を横に振って拒否されたよ。
「原因の報告でクエストクリアだよ?」
「お姉様……魔柱石が絡んでますのよ? 勇者のお姉様がやらないでどうするのですか」
「クックック。冒険者に引き継いだところで、野菜の防衛を突破するのは不可能でしょう。魔法で周囲を吹き飛ばし、破壊するというなら簡単ですが……」
「魔法はやめてくれ! 畑が使い物にならなくなっちまう!」
『と、いうことですね』
結局、私が行かないと駄目なことになっちゃった。
と、なると問題は、あの野菜達を突破する方法だよね。
魔柱石に1番近い畑の隅からでも、100メートルはあるらしいけど、畑の中に5メートル進んだだけであれだよ?
何かないかな~? と、村を見回したとき、納屋の中に積まれていた木の箱が見えた。
収穫した野菜を入れる箱みたい。
箱の大きさは私がすっぽりと入れるくらいだね。
この箱を被っていったら行けるんじゃない? 生き物に反応するんだったら、箱のふりをする。
ダンボールは1番のカモフラージュアイテムだって聞いたことがあるし、それの木箱バージョン。
「ね~ね~。あの箱を被っていったら行けるかな?」
「「「却下です」」」
「即答はやめようよ! どうして却下なの!」
「持ってみたら分かるかと……クックック」
言われたから持ち上げてみたよ。でね、ここでステータス1の恐ろしさが発覚したよ。
重くて持ち上がらないの! 笑っちゃうね!
この重い箱を被っていく? そんな無茶な作戦考えたのは誰?
私だよ!
「私でも少し重いですわね」
イザベラちゃんが軽く持ち上げてるの見ると泣きたくなるね……。
「そうですわ! 私が箱を持って、2人で行くのはどうでしょう? 狭い空間にお姉様と2人……ふふふ」
「却下~~~!」
「それはいい考えですね。クックック」
『それしかないでしょう』
あっるぇ~~? 私の意見は流されるのかな!?
まあ、今はそれしか手がないのは事実だけど。
いきなり実践は危険だということで、クックさんがしゃがんで箱に入って7メートルくらい進んでから戻ってきた。
結果、野菜達は反応しなかった。
これは行ける! ということで、イザベラちゃんと2人で箱に入って10メートルくらい進んできた。
でも、そこから進みが遅くなっちゃった。
魔柱石があるのは低い丘の上で、ここから上り坂っていうのもあるけど、箱の中ではね、こんなことが……。
「ふふふ……。お姉様と密着……お姉様の匂いが充満してますわ……ハァ……ハァ……」
「私は土の匂いしかしないな~……」
野菜達の攻撃よりも、箱の中で私の身が危ないです!
ここでイザベラちゃんが暴走したら、イザベラちゃんだけじゃなくて野菜にも襲われちゃうよ!
と、そんなお馬鹿なやりとりをしてたら、後方から、「なにしてるんでしょうねぇ? 早く進んでください。ウインドショット!」と、クックさんの声が聞こえて……。
木箱ごと魔法で吹き飛ばされて空を舞ったよ! しかも凄い回転しながら!
考えた作戦なんてまるで意味がないじゃない! まあ、イザベラちゃんは途中であれだったし? 結果としてはこれでよかった……なわけないでしょ~~~!
そしてイザベラちゃんは、衝撃と凄い回転に目を回して途中で気絶しちゃった。
私も気絶したい気分だよ……。
箱は地面と衝突して砕け散って、私とイザベラちゃんは地面を転がった。
地面が畑で耕されてたから柔らかくて怪我はなかったけど、空から緑色の大群が笑いながら降り注ごうとしてるよ!
急いで立ち上がると、目の前に魔柱石が。
クックさんナイス! ……ナ、ナイスなのかな?
今はそんなことよりも!
「いた! 痛い!」
襲い来る野菜達の攻撃を我慢して、魔柱石に右手を当てて想いを流し込む。
赤色だった魔柱石が金色に輝き出して、野菜達が普通の野菜に戻って、地面にボトボトと落ちてきた。
「お……終わったの? 今回は強敵だったよ……」
このセリフね、世の中ではフラグを建てたっていうらしいよ?
「フフフ。よくも私の守る魔柱石を台無しにしてくれたわね!」
なんて言いながら、魔柱石の後ろから女の子が現れた。
背は私よりも少し高いくらいで、黒いローブとマントを羽織っていて、先の尖った魔法使いの帽子みたいなのを被ってた。
顔はその帽子を深く被ってたから見えなかった。
魔王が設置した魔柱石には、オーガとか、常に防衛者が居たけど、それかな?
「あなたは誰?」
「ふふふ。魔族を見たことないでしょう? 私は魔族のリリーよ」
「そうなんですか……私はサクヤです」
魔族なら毎日見てるけどね。残念イケメンのクックさんを……。
「何その余裕の態度は? 腹が立つわね。これを喰らっても余裕を保てるかしら? ナーフオブステータス!」
リリーが魔法を唱えると、私の体が青い光に包まれて、すぐに消えていった。
私に何も変化なかったけど、何だったんだろ?
「ふふふ。どう? 10分の間、全てのステータスを『1』にされた気分は? 絶望した?」
「……私にそれは効果ないよ?」
「どうして効かないの! 私の力は1でサポート特化型の魔族だから相手も1にしてやっと対等なのに!」
効かなかったんじゃなくて、元から1だから効果がなかっただけだけど、この魔族のリリーさんとは、いいお友達になれそう……。
「これならどう? アーマーブレイク!」
「え? 待って待って!」
アーマーブレイクって、防具を壊すっていうことだよね? 防具なんて装備してないから、もしかして着ている服が破れちゃうとか?
破れたときのことを考えて、胸を隠すようにしてしゃがみ込むと、ポニーテールに纏めてるリボンが解けて地面にハラリと落ちた。
「「……」」
拾ったリボンでまたポニーに纏める。
「アーマーブレイク!」
またリボンが解けて地面に落ちる。
「「リボンって防具だったの!?」」
突然に分かった真実を2人で驚いてから、またリボンでポニーテールにする。
「あなた、ポニーが歪んでるわよ。私が整えてあげるからこっちに来なさい」
「う……うん」
鏡を見てても30分はかかるしな~。
ここには当然、鏡なんてないし……。
リリーに近づいていってから後ろを向く。
「あなた素直すぎでしょ! 背を向けたときに攻撃されるって思わなかったの?」
「え? 思わなかったよ!」
「ま、まあいいわ。素直さに免じて髪型はちゃんと整えてあげる」
「ありがとう……」
と、お礼を言ったら私の体が輝き出しちゃった。
これってファミリーだよね?
「ちょっと! 光に包まれたと思ったら呪縛の首輪と鎖が砕け散ったわよ! あなた何者なの?」
「クックック。この方は私がお仕えしている勇者のサクヤ様ですよ」
「あ、クックさん。来てくれたんだ?」
クックさんとモフモフさんがいつの間にか来ていたみたい。
そして、リリーが帽子を取って、クックさんを赤い顔してポ~~~と見てた。
そんなリリーを、クックさんが突然手を引っ張って遠くへ連れていった。そして何かボソボソと話してる。
そして戻ってきて、いきなり私の前で片膝をついて。
「改めまして、リリーと申します。サポート系とヒール系の魔法を得意として……それしか出来ませんが、これからはサクヤ様にお仕えします。あ、言っておきますけど! クックさん先輩の側にずっと居られるとか、クックさん先輩のサポートをしたいからじゃないからね! あくまで元初の……サクヤ様にお仕えしたい、それだけだから!」
「う……うん。よろしくね……」
本音を隠さない人だな~。
つまりは、クックさんに一目惚れしちゃったってことでいいのかな?
「あ、サクヤ様のことはサクヤっちって呼ぶから、私のことはリリーでいいからね!」
サクヤっち……。そしてリリーはリリーってそのまんまじゃん!
まぁ……意味の分からないうちに待望のサポート系ヒーラーのリリーが仲間になって、無事にクエストもクリアできました?
え? いいの? こんな展開で……。
なんだろこの展開は? 書いてる本人も予測不能な展開になってきちゃいました。




