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第31話:出現! かつてない強敵!

 夕闇が辺りを包む頃に、村に帰ってきた。

 報告をしてからすぐに目的の村に出発したかったけど、もう夜になっちゃうってことで、この村にもう1泊することになった。

 まずは報告だけど、どこに行けばいいのかな?

 もちろん、村にはギルドなんてないし……。


「クックック。サクヤ様、あの1番大きな建物では?」

「なんかそれっぽいね」


 クックさんが言ったのは、村の入り口の脇に建てられた、高さ3メートルくらいの両扉の建物だった。

 ギュオールの街のギルドも入り口は大きかったし、間違いないと思ってその扉を開けた。

 まぁ、クックさんの言うことを簡単に信じちゃった私が悪いんだけどね。


「馬さんがいっぱいいるだけだよ! ここ絶対に馬小屋だよ!」

「騙されるお姉様も素敵ですわ!」

「うん。イザベラちゃんは疲れが溜まってるみたいだね」

「騙す? 私は、では? と、確かに疑問系で言いましたが? クックック」

『クックさん。それはボスが素直すぎることに対する、確信犯というものだ』

「バレましたか……」

「ちょっと~~~!」


 まぁ、いつもの流れでみんなで笑うことになったんだけどね。


「あんたら楽しそうだな」

「あ、あのときのリーダーさん」


 私達の後ろで呆れ顔で立っていたリーダーさんに、とりあえず報告したいと話したら、村長の家に案内されたよ。

 最初から村人さんに尋ねたら早かったかも。




 リビングのテーブル席にみんなが座る。私の正面に、村長とリーダーさんが座っている。そして窓の外にモフモフさんが見える。

 モフモフさんは体が大きすぎて、ドアから中に入れなかったから、窓の外から半分顔だけ覗かせて部屋の中を見てた。

 こうして見ると、その風景はなかなかホラーだね……。

 映画だと、巨大な狼に追われて家に逃げ込んだ6人の少年少女。外から様子を見る狼……。

 囮となって家を飛び出した少年に狼が襲い掛かり、その間に家を飛び出す少女だったけど、少年はたった一撃でやられちゃって、少女も振り向きざまの狼の爪で……。

 飛び出すタイミングを逃した残りの少年少女たちは家に閉じ込められて、ついに狼は家の壁を破り……。


「モフモフさん! 絶対そんなことしちゃダメだからね!」

「ゆ……勇者様? いったい急にどうしたのですか?」

「あ……ごめんなさい」


 妄想してました。


「急に立ち上がって意味不明に叫ぶお姉様も素敵ですわ!」

「ぷっ! 君達はいったいどういう関係なんだ(笑)」

「村長のワシが一生懸命にこれからのことを説明してたのに、勇者様に無視されたじゃよ……」

「ごめんなさい!」


 モフモフさんの妄想で全然聞いてなかったよ~~~!

 泣きそうな村長さんに、リーダーの人(村長の息子のケイルという名前らしい)とクックさんが、よしよし、と慰めてた。


「サクヤ様とイザベラさんは疲れが溜まりすぎてるようなので、宿で私から説明しておきますね。クックック」

「お子様ですからね~。ゆっくり休んでください」


 お子様認定、頂いちゃいました!


 まぁ、話っていうのは、捕まえた盗賊達をギュオールの街に移送して、ついでにギルドで盗賊たちの探索と見回りを依頼するというものだったけど。




 翌日。

 先に到着していたモフモフさんと、目的地の畑の手前で合流した。

 どうしてモフモフさんだけ先に来てたかというとね、私達は村の馬車に乗せてもらったんだけど、その馬車を引いてる馬さん2頭が、モフモフさんを見て怯えちゃって大暴走! で、先に向かってもらったっていう訳。

 魔族のクックさんにも怯えるんじゃないかって思ったけど、実はね、クックさんはフルフェイスの兜を取ると、赤い髪をオールバックにして前髪を少し垂らしていて、眉毛は両端がキリッと上がってて、まぁ、イケメン……だね。でも、性格があれだから、残念なイケメンさん?

 そんなクックさんが完全に魔力を絶つと、普通の人間にしか見えないんだよね。

 じゃ~最初に村に着いたときにも人間形態になってよ! って話だけど、クックさんだからね……。


「さて、サクヤ様。私の説明はそれくらいにして、ここからどうしましょう?」

「心読まないでよ!」

「クックック。私の顔をジ~~~と見てたら、誰だって想像がつくかと……」

「むむ~! まぁ……そういうことにしておいて、畑はどうなってるのかな?」


 今はクックさんよりも原因究明が先だね。

 

 山を1つ越えて、その先にあった林を抜けると、広大な平原が広がっていた。

 その平原は柵に囲まれてて、柵の中の地面は茶色くなっていて、耕されてるみたい。

 この平原一帯が全て畑……。ギュオールの街が4個入るほどの広さだよ……。

 その畑の中で、キャベツ、白菜、大根が実っていた。


「お姉様。野菜は無事のようですけど、街に野菜が届かないのはどういうことでしょう?」

「う~ん。どうしたんだろね?」


 畑一面にどっさりと野菜が実ってるのに、収穫するとか、街に出荷してないってことだよね?

 畑じゃなくて、村のほうに異常が発生したのかな?

 私達はそのまま村に向かって、そこで聞き込みをすることにした。


 村……というよりは、集落だね。

 人数は15人くらいで、みんな親戚同士で、一族でこの農地を経営しているみたい。

 そこで聞き込みした結果は、畑に入ってみると分かるよ、ということだった。

 何人か、頭や腕に包帯を巻いてるのが気になったけど……。




 まずは私から、ということで、柵を開けて畑の中に入る。

 うん……普通にキャベツだね。入ってみたら分かるって、どういうことだろう?

 さらに5メートルくらい進んだところでそれは起こった。

 普通に見えてたキャベツが顔のような形になって、突然笑い出して、全方位から一斉に飛び掛ってきた!


「痛い! いた~~~い!」


 お腹、お尻と次々に当たってきた!

 唯の体当たりだけど当たると結構痛いよ!

 固いキャベツを投げつけられてるようなものだしね!


「サクヤ様!」

『ボス!』


 助けに来た2人も……。


「痛いですよ! こやつ等、正確に防具の隙間を狙って! ゴフ!」

『キャイ~~~ン!』


 あ、悲鳴は普通にキャイ~ンなんだ……て、それどころじゃないよ!

 キャベツ、白菜、大根達が次々に笑いながら飛んできて、全員フルボッコにされたよ!


 地面を這いずりながらなんとか畑の外に出ると、野菜達は何事もなかったかのように元に戻った。

 これ……収穫できっこないよ! 野菜どころか今までで1番の強敵だよ!


「お姉様……すみません。私は足が竦んで動けませんでしたわ……」

「それでよかったよ。スローでゆっくり見ても避けきれなかったし、イザベラちゃんが中に入ったら大怪我してるところだったよ」


 村の人達が包帯巻いてたのは、こういうことだったんだね……。

 スローを発動させても全方位から飛んで来られると避けきれないし……。


『ぼ……ボス。村に戻って、いつからこうなったのか聞いてみることをお勧めします』

「そ……そうだね。原因が分かればいいんだもんね」

「クックック! 負けたままでは終わりませんよ! 今からでもね!」


 クックさんが叫び、畑に突撃していって……。


「ゴフ! ゴハ! いた! ガファウ!」


 ……楽しそうだから放っておいていいかな……。


 5分後、クックさんがまたフルボッコにされて、私達は村に撤退した……。


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