第30話:盗賊のアジトに殴り込み! 口撃は最大の……
さて……盗賊3人を気絶させたけど、どうしよう? あの村に運んであとは任せちゃって、私達は目的地の村に向かう方がいいのかな~? でもこの盗賊が原因だったら……。
悩んだ末に、とりあえず目を覚まさせて、話を聞くことにした。
クックさんが3人をロープで縛り上げて、目を覚まさせるために往復ビンタする。
そして、頬が真っ赤になる頃、1人が目を覚ました。かなり痛そう……。
その盗賊から聞き出した話によると、盗賊達は全員で20名いるらしくて、1週間前にこの近くにある鉱山の跡地にアジトを作って活動を始めたらしい。
と、いうことは、野菜のクエストとは関係ないことになるんだよね。
「野菜の原因が解決しても、今度は盗賊に運搬中の荷物が襲われる可能性がありますね。クックック」
「だよね……」
ギルドに戻って、盗賊の討伐も頼んでもいいかもだけど、クックさんを見ると、鞘から剣を抜いて、うっとりと眺めて、ついにこの剣を試すときが……とか言ってる。やる気満々だよ。
「とにかく、まずはこの盗賊さん達を村に送り届けようか?」
「クックック。そうしましょう」
「じゃ~、モフモフさん、お願いしていい?」
『は! お任せを』
モフモフさんに盗賊3人を横にして並べて縛り上げたあと、モフモフさんは村に向かって走り出していった。
モフモフさんのスピードだと、往復1時間くらいで戻ってくるかな? モフモフさんが戻ってからどうするか決めよう。
そして1時間後。モフモフさんが何故か泣きそうな顔で戻ってきているのが見えた。背中には盗賊3人がまだ乗せられてる。モフモフさんの後方には、砂埃と地響きが追うように迫ってきていた。
モフモフさんが私の背中に隠れて屈み込んだ。全身がはみ出てるけど……。
『ボス! 任務失敗です!』
「え? どいうこと?」
モフモフさんに問いかけたとき、砂埃の正体が目の前で止まった。
正体は、馬に乗った村の人達だった。手には鍬や鎌が持たれている。
その鎌を持ったリーダーらしき人が、クックさんを見て鎌を構えた。
「魔族にウォーウルフ……。お嬢ちゃん達も魔族か何かか?」
「「は?」」
あ、失敗したな~。モフモフさんは魔物だから、いきなり村に入ったら倒そうと追いかけてくるよね~。そしてクックさんも見て、私たちも魔族と勘違いされちゃったか~。
「何をたわけたことを言ってるんでしょ! この方達は!」
何故かそう叫びながら、私の手を引っ張って前に出る。
「このお姉様は勇者で冒険者ですわ! 魔族なわけないでしょう!」
「あんたの方が背が高いし年上に見えるのに、お姉様?」
「「……」」
『……』
「クックック……」
……。
「問題はそこじゃな~~~い! クックさん笑わないで~~~!」
「あ~。すまん。納得した」
「今ので!?」
「ギュオールの街を救った、魔族を従えた小さい勇者の話は村でも有名でね。村の者がたまたまそのとき街に行っていて、凄く興奮して話してたんだ。それがまさかこんなに小さい女の子とはね」
リーダーの人が合図すると、みんな武器を降ろした。
私はここであったことと、盗賊のアジトのことを説明すると、リーダーの人が顎に手をあてて何かを考えて、村の人達と相談を始めた。
「村からの頼みとして聞いてほしいんだけど、盗賊達を退治してくれないか?」
「え?」
「クックック。このまま放っておいたら、村が襲われる危険がありますね」
「そうですわ、お姉様。このまま盗賊をやっつけてしまいましょう」
『盗賊など、俺とクックさんで簡単に屠ってやりますよ』
みんながやる気になっているよ。ここで反対しても、いつものノリで押し切られちゃうんでしょ?
「わかりました。やってみます」
ということになって、盗賊3人を村の人達に渡して、私達はアジトに向かった。
アジトは山に掘られた坑道跡に作られていた。
私達は木の陰に隠れて様子を見た。
山が削られて、地表が見えてる崖のようになっていて、その崖の真ん中にぽっかりとトンネルの入り口が見えた。山が削られた部分は、広場になっている。
その広場に盗賊たちが5人くらい見える。残りはトンネルの中かな?
「クックック。私とモフモフさんが正面から突撃します。イザベラさんは左の岩陰に隠れて魔法の援護を」
「私は?」
「……見晴らしのいいところで周囲の警戒を」
「う……うん。敵が出てきたら知らせるね。あ、殺しちゃダメだよ?」
ということになりました。私が行っても戦力外だしね……。
イザベラちゃんが岩陰に隠れて杖で合図をした後、クックさんとモフモフさんが木から飛び出して正面から5人に突っ込んでいった。
「なんだお前らは! 敵襲だ!」
1人が叫ぶと、トンネルから続々と盗賊たちが出てきた。
クックさんがその集団に飛び込んでいって、モフモフさんはイザベラちゃんをカバーするように、隠れてる岩から少し離れて戦闘体制をとる。
私は戦闘が始まってから前に少しだけ出て、盗賊の人数を数えた。みんな入り乱れて数えるの大変だったけど。
20人って言ってたよね? 捕まえたのが3人で残り17人だけど、14人しかいない。残り3人は……。
周囲を見回すと……。
2人は発見した。壁の上から弓で狙っている。知らせないと! と、思ったら。
私に向かって矢が飛んでくる。
狙いは私だったよ! どうして戦闘に参加してない私をわざわざ狙うかな!
スローを発動させて、ゆっく~りと迫る矢と矢の間に体を伸ばして移動すると、体を掠めるように矢が通過して地面に刺さった。
また飛んできた矢を今度はしゃがんで回避すると、2本の矢は後ろの木に刺さった。
ふっふっふ。どう? この見事な回避は? みんなから見たら相当へんな動きだっただろうけど。
イザベラちゃんが弓の盗賊に気付いて、そこへ魔法を撃った。
もう大丈夫かな? と、思って勢い良く立ち上がったら……。
ボコン! ――音と共に後頭部に衝撃が!
「いった~~~い!」
痛さがジ~ンときて涙が溢れてきた。
痛む頭を手で撫でながら、何が当たったんだろうと思って後ろを見ると……。
残り1人の盗賊が顎を押さえて転げ回ってた。
どういうこと? 状況が理解できないよ。
「く……くそ!」
顎を擦りながら起き上がってきた。
「ステルスで気配を消して後ろから捕まえようとしてたのに何故分かった! お前を人質にあいつらを大人しくさせてやろと思ったが、大失敗だぜ!」
「え? 偶然ですけど、詳しく説明してくれてありがとうございます?」
「なめやがって!」
お礼が挑発になっちゃった!
盗賊が剣を抜いて斬りかかって来た!
振り下ろされた剣をスローで回避して、がら空きの頭に木剣を叩き込む! コーンといい音がした。だけど、素早い振り上げで木剣を真っ二つに切られちゃった。
でも心配無用。薪に使うのか、この周辺には手頃な木の棒がたくさん落ちてた。
頭を押さえて痛がってる隙に、木の棒を拾って構えると、また斬りかかって来た。
スローで回避、頭を木の棒で殴る、木の棒が切られる……。
数回それを繰り返して……。
キリがないな~。そしてスローの中で無理に体を動かしてるから、全身が痛くなってきた。
ここは、あれしかないよね……。
「ふっふっふ……。あなたは既に、私の無限武器作成領域の中に入ってるんだよ」
「な……なんだそれは!」
「武器(木の棒)を何度壊しても、私は無限に武器を作成(落ちてるの拾っているだけ)できるの。あなたの攻撃は当たらない。そして何度武器を切っても、無限の作成武器で何度も頭を殴られちゃう。どうなるか(タンコブだらけになっちゃうよ!)分かったでしょ?」
お願い! ハッタリ効いて~~~!
「ちっ! お前ら! 退却だ! とにかくこいつらはヤバイ! 逃げるんだ!」
そう叫ぶと、煙玉を投げて走り去っていく。
ホッ……と、胸を撫で下ろした。
よかった~~~! ハッタリ効いたよ! ほら、よく言うでしょ? 『口撃は最大の防御』って。
「覚えてろよ~~~!」
定番のセリフを残して、盗賊たちが全員逃げていった。
「あなた達の臭いはモフモフさんが覚えたからね! 近くをうろついてるとまた来るから!」
「クックック。さすがサクヤ様。盗賊の親分を手玉にとるとは」
「お姉様だったら余裕ですわ!」
あの人……親分だったのか~~~! 危なかった~~~!
『ですが、よかったのですか? 殺さないでと言われたから手加減していたとはいえ、みんな逃げられましたが?』
「大丈夫じゃないかな? 忠告はしておいたし。そのときはお願いねモフモフさん」
『は! お任せ下さい!』
「クックック。さぁ、村に帰って報告しましょう」
こうして、私達の盗賊退治は終わった。捕まえることは出来なかったけど、追い払うことが出来たからいいよね?
それにしても……最初に真っ二つにされた木剣は、学園の備品を勝手に持ち出してきちゃったのだけど、怒られちゃうかな……。
少し長くなっちゃいましたけど、読んでくれてありがとうございます




