第29話:旅って楽しいね……いろんな意味で!
日が暮れる頃、私達は最初の村に着いた。
5時間くらい歩いただけで足がパンパンに張っちゃってた。
最初は、モフモフさんの背中にイザベラちゃんと2人で乗って、凄い速さで進んでたんだけど……。
これはその時の記録です。
出発して15分。歩き疲れた私は早速、休憩を申し出た。
結果は却下されたよ。15分じゃ早すぎるって。
そんなとき、なんとモフモフさんがしゃべってきた!
『ボスとご友人。俺の背中に乗ってください』
「え! モフモフさんしゃべれるの!?」
『はい。実はかなり前……俺が進化したときからですが、驚かせてしまうと思い、黙ってました』
「ここにはすでにクックさんという存在がいますのよ。今更しゃべったところで驚きませんわ」
「私の存在とは……」
いじけたクックさんにみんなで笑って、イザベラちゃんと2人でモフモフさんに乗って走り出した。
ここまでは、普通に和気藹々だね。問題は15分後……。
西側の街道を軽快な速さで進むと、まばらだった木が多くなってきた。林だね。
街道はその木々を縫うように、右に曲がって左に曲がって……。それに加えての、モフモフさんが走るときの上下運動。固定するものがないから、ただしがみついているだけ。もうね……体が跳ねる跳ねる。
結果は……ね? わかるでしょ。
「お姉様……うっぷ……」
「私も……モフモフ……さん……止まって……」
モフモフさんが、ザザーと横滑りしながら止まった。
うん……これがトドメだったね。
飛び降りて、林の木が多いところに駆け込んで。
――ただ今とても書けない状況になっております。ご了承ください。
ここからは、みんなゆっくりと歩きながらの旅になりました!
乗り物酔いの薬って売ってないかな?
で、今は宿を取って部屋で休んでる。イザベラちゃんはポケットマネーで1番いいシングルルームを取った。私は冒険者割引がついて半額になったツインルーム……。イザベラちゃんて、やっぱり貴族なんだね。
あ、クックさんとモフモフさんは外で待機中。
この村は街道沿いにあって結構大きい村だった。ギュレールの街だったら、みんながクックさんとモフモフさんを知ってるけど、この村だと2人の姿を見たら大騒ぎになる。だって、魔族と狼だもんね。
寝る前にお風呂に入ろうと思ったんでけど、この村にはお風呂がなかった。
旅で野宿もあるかもだけど、体だけは清潔にしないとね。ということで、外にある井戸から桶に水を入れて持ってきた。
この部屋にいるのは私1人だから、何も警戒しないで着ているものを全部脱いだ。そして、水桶に入れておいたタオルを取ろうとしたとき、目の前のベッドの下から、にゅっとイザベラちゃんの顔が……。
「きゃぁぁぁぁ!」
不意打ち! ほんとにビックリしたよ! どうしてベッドの下? え? いつから居たの?
「ふっふっふ。お風呂がないと聞きまして、体を拭くだろうなと思い、ずっと待っていたのですわ! ささ、お姉様、私が体の隅々まで……」
顔が真っ赤で息も荒い。これがバーサーカーモードっていうやつか~~~! 私だけじゃ止められないよ!
諦めかけたそのとき、空間が裂けて、割れ目からクックさんが!
「サクヤ様! 先ほどの悲鳴は!」
「クックさん! いいところに……」
て、ダメ~~~! 私、何も着てない! つまりは裸!
「来ないで~~~!」
顔から出てこようとしてたクックさんに脱いだ服を投げつけた!
「これはサクヤ様のいい匂いが!」
「嗅がないで~~~!」
「お姉様! 早くベッドに!」
「どうしてベッド!? みんな落ち着いて~~~!」
まぁ、当然のことながら、この後、宿屋の主人さんから、うるせーぞ! と、こっぴどく怒られました!
初日からもう滅茶苦茶だよ!
翌朝。
私とイザベラちゃんは村で聞き込みをすることにした。ここで原因が聞き出せたら、後は街に戻って報告だけしたら終了だけど。
「あら、お嬢ちゃん冒険者ごっこ? 危ないからほどほどにして家に帰らないとダメよ?」
「は? 15歳? このギルドカードよく出来てるね~。自分で作ったのかい?」
「12歳くらいじゃろ? あと3年待てば本物の冒険者になれるから、早く自分の村に帰ったほうがいいの~。ご両親を心配させちゃいかんよ」
誰にも信じてもらえません!
「お姉様! 少しだけ有力な情報が聞けましたわ!」
「……」
泣いてなんかないもん!
イザベラちゃんの話によると、1週間前ほどからこの先の村へ続く道で、盗賊が出始めたらしい。
この先は荒野になっているらしく、大きな岩がいくつもあって、旅人や商人の馬車を狙って盗賊が身を隠すのに都合がいいらしい。
そんな荒野になってきた道を、私達が普通の旅人を装い、歩いてたんだけど……。
『ボス。気になっていることを進言してもよろしいか?』
「なに?」
『俺とクックさんが居ては、盗賊共も恐れて襲ってこないのでは……』
「だよね! 私も半分来たくらいから思ってた!」
「お姉様! 私もですわ!」
「クックック。皆さんオッチョコチョイですねぇ。こんなところまで来てから気付くなんて。私は最初から分かってましたよ!」
「村を出る前に言ってよ!」
定番化している私のツッコミにみんなが笑っていたとき、小さい山になっている裏側から女性の悲鳴が聞こえてきた。
山道を走って、山の裾を曲がったところで悲鳴の主が見えた。
女性は17~8歳くらいかな。盗賊3人から囲まれている。
「クックさん! モフモフさん!」
クックさんとモフモフさんが一気に駆け寄り、クックさんは鞘に納めたままの剣を上に振り上げて顎に打ち込んで1人、そのまま振り下ろしで頭を打ち据えて2人目を倒した。モフモフさんは右手を相手の左頬に打ち込んで、盗賊さんはキリモミしながら岩にぶつかって気絶した。
「大丈夫でしたか?」
と、近寄って声をかけたとこで気付いた。
その女性は耳が長かった。先端が少し尖った長い耳……。それに緑がかった髪の色、目が青色で透き通るよな輝きで、顔もすごく綺麗だった。
「エルフ……さん?」
「はい。エルフ族ですよ。あ、ちょっと待っててくださいね~」
と言いながら、倒れた盗賊の懐をガサガサと漁って、出てきた財布を自分の鞄の中に……。
「ちょっとあなた! それはさすがに犯罪ですわよ!」
イザベラちゃんが杖を構えて警告する。
でも、エルフさんは止めない。
「これで全部……あ、武器も売ればお金になるわね」
「聞いてますの!」
エルフさんが不思議そうな顔で立ち上がって……。
「倒れた人からのドロップ品回収は常識でしょ?」
「そ……そうなんだ?」
ゲームとかでも、敵を倒したらお金とか宝箱とか自動で手に入るし、この人が言ってるのはそれかな? 相手は盗賊で悪い人達だし。
「そんなわけないですわ! しっかりしてくださいませお姉様!」
「あ、うん。もう何がなんだか……」
「じゃ、一応、助けてくれてありがとね!」
そう言うと、エルフさんは突き出た岩と岩を飛び移りながらどこかに行っちゃった。
その身軽さに、私とイザベラちゃんが追えるわけもなく。
クックさんとモフモフさんは何故か少し笑っていた。
2人は元々魔族と魔物……。人の常識っていうのを教えておかなくちゃね……。
それにしても……この身ぐるみ剥がされて可哀相な盗賊3人はどうしようか……。
読んでくれてありがとうございます!
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ダメだとおもうけど頑張ります!




