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第2話:必殺技?習得です

 ……って、そんな簡単に諦められな~い! 15年とちょっとで死んで? こっちの世界で生き返って1時間も経ってないのにまた死んじゃう?

 冗談じゃないわ! 生き残ってる船員さん達と力を合わせたら活路が見つかるとおもうの!

 突然この世界に現れた私なんかが何を言っても力にならないかもだけど……。

 

 絶望したのか、船員さん達の怒号はもう聞こえなくて静まりかえってる。けど、勇気を出して振り返って右手を高く掲げる。


「みんな、力を合わせてのりき……あれ~?」


 船の上には誰もいなかった。


「ちょ……みんなどこ?」


 右手を突き上げたままの体勢から首だけをキョロキョロと動かすと。


 居た――。小型のボートで必至にオールを漕いで、すでに沈んでいる仲間の船のほうへすごいスピードで逃げてる。


「船長って船と運命を共にして最後まで残るものじゃないの~~!!」

 

 全ての酸素を吐き出すかのように叫ぶ。

 すると、最後尾のボートに乗ってた一際立派な髭を生やした男――船長かな? が、手を振るのが見えた。

 それに笑顔で手を振りかえし……そうじゃない! そうじゃないでしょ、私~~~!

 

 パニックになると人は意味不明な行動をとる時がある。今まさに私がそれ。


 どうしよう……。


 そんなことを思っていると、当然、船に衝撃が起こった。海賊船が真横に体当たりをして足場になる板を架けたらしい。


「おう! さっさと荷物を運んじまえ!」


 いかにもドスの効いた海賊の声。そして板を渡って来たのは――肌は緑色で小さなズングリとした体。長く尖った小さな耳。鼻は長くて先が垂れている。剣と盾を持った魔物。

 ゲームとかアニメで見たことある! そう……ゴブリンだ!!


「ギャー!」


 と、威圧するようにゴブリンが叫ぶ。だけど、あまり怖くないな。見慣れてる(ゲームでだけど)からかな?

 幸いにも渡ってきたのは1匹。


 チラっと床を見る。逃げ出した船員が捨てていったものらしい剣が落ちていた。

 それ目がけて猛然とダッシュ! 剣を拾いあげて!


「……重い~~~!」


 柄を両手で掴んで持ち上げようとしたけど、少しだけ持ち上がって剣先は見事に床に着いてる。それだけで腕がプルプル震えてる。

 そんな状況をゴブリンは待ってくれない。すでにお互いが一歩を踏み出せば剣が届く距離まで詰めて来てた。


 来るなら来なさい!(来ないで来ないで~)と、相手の目を見つめる。


「ギ……」


 ゴブリンが一瞬怯んだように見えた。(この時はそう見えたんです)でも、それだけで考える時間が生まれた。


 そうだ! 勢いをつけたら剣を振るえるかも!


 少し屈んで重心を後ろに移して、一気に右足を踏み込んで――全体重をかけて、剣先を床に付けたまま横に剣を振る!


「――あっ……」


 剣を掴んでた手が両手ともスッポ抜けました~!! 女の子の握力でそうしたらそうなるよね~。無理だよね~。

 その場で一回転。体勢を保とうとして左足を前に出して踏ん張って、でも両手は遠心力? で回転したまま……。


 パチ~~~~ン!!


 乾いた音がした。右手の掌がジ~~~ンとする。少しだけ痛い。


「ギャ~!ギャ~~!」


 ゴブリンが左頬を両手で押さえて転げ回ってた。


「あっ!ごめんさい!ごめんなさい!」


 ゴブリンに駆け寄って助け起こす。

 目にいっぱい涙を溜めて頬を摩りながらジッと見つめてくる。目と目が合って……。


「ファ!」

「あ!」


 同時に後ろに飛び退く。

 謝って助けてどうするの私~~~~!


 そんなことをしてる間に次々とゴブリン達が渡ってきて、すっかり囲まれてた。


 どうしよう……。え~い! ダメでも言っちゃえ!

 ビシっと、さっきのゴブリンを指差して。


「この子と同じ竜巻ビンタを味わいたいならかかってきなさい! イヤだったら自分たちの船に帰って! お願いだから帰って!」


「グ!」

「ギギ……」


 お互い顔を見合わせた後、板を渡って帰っていくゴブリン達。


「勝った?」


「馬鹿野郎! 戻ってきてどうする! もういい俺が行く!」


 ボス登場です! 絶体絶命です!

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