第27話:帰って来てくれてありがとう!
ラグルさんが教官として学園に来るようになって、3日が経った。
今どういう状況かというと。
「痛い! 体中が痛いよクックさん!」
ベッドから起きようとして起きれない。
腕とか、ちょっとでも動かそうとしたら激痛が走っちゃう。
「クックック。筋肉痛というものですね。これでは着替えも一人では出来ないでしょう。私が着替えさせてあげますよ」
「大丈夫! 全然大丈夫だから!」
痛さを我慢して飛び起きた。
痛さを我慢するのと、クックさんにいろいろされるのと、どっちを選ぶって聞かれたら、痛さを我慢するって即答できるよ!
走り込み、腕立て伏せ、素振りとか、いろいろ鬼のようにやらされて体が思うように動かない。
教室での授業はただ教科書を読んでいるだけなのに、すごい威圧感を放っていて緊張感でみんな静まりかえってるし、外の授業……剣術修練とかでは本性を現し鬼と化す。
手を抜く間さえ許してもらえず、結果はひどい筋肉痛……。
食堂に向かうときも、教室に向かうときも、痛さで変な動きしてただろうな~。
教室に入ると、異様な光景が広がっていた。
「お姉様……体中が筋肉痛で動きませんわ……」
「わ……私も……だよ」
イザベラちゃんだけじゃなくて、このクラスの全員が動けなくて机に突っ伏してる状態になっていた。
たった2日で、この状況を作り出したラグルさんが鬼なのか、私たちが今までどれだけ甘えてただけなのか……。
「私は魔導師ですのに、どうして走らされたりしないといけないのですの」
「そうだよね」
私は今のところは前衛でも後衛でもないけど、同意しておいたよ。
え? 私? 護衛対象者……。
「お? みんな辛そうだな」
ラグルさんが教室に入ってきて、見回しながら言う。
そして何故かクックさんをじ~と見た。
「クックさんは平気そうだな?」
「クックック。あの程度の運動など、このクックさんには遊び同然」
「よし。みんなの疲れを取らないとだから、今日はクックさんと俺の模擬戦を見てもらおう」
「クックック。この私と模擬戦ですか……」
クックさんがスッと立ち上がると、魔力が吹き荒れた。
「遠慮はいらね~ぞ。全力でこい」
ラグルさんがクックさんを指差して、闘気を立ち昇らせる。
2人の魔力と闘気が中央で弾け合う。
みんなはそれを見て、怯えて……。
「お、いいぞ。どっちが勝つかな?」
「2人の全力の戦闘か! 楽しみだな!」
「クック様~。頑張って~」
楽しんでたよ。
私も楽しみかな。どっちが強いんだろうね。
みんな、開始から3分くらいは面白半分で2人を応援してた。
でも今は、言葉をなくして戦いに見入っている。
ラグルさんの振り下ろしをクックさんは後ろに飛んで回避。そのまま着地と同時に地を蹴って一気に間合いをつめて、懐へ前のめりになって横薙ぎに斬りつける。今度はラグルさんが一歩後ろに引いて紙一重で回避。隙が出来たクックさんへ下からの斬り上げ。クックさんが片手を地面に叩きつけて、その衝撃で体を半回転させて回避する。
これね、スローを発動させて、やっと普通に見えてる。
「凄いですわね。辛うじて霞んで見える程度ですわ」
この通り。スローで普通に見えるスピードで2人は戦ってる。
パーン! と、木剣同士が打ち合う音がして、2人が距離を開けて動きを止めた。
「クックック。盾を装備しないでいいのですか?」
「今は1対1なんでな。後ろに守るものがないときは、俺の最も得意としている武器でいかせてもらう」
「それで攻撃特化の両手持ちロングソードですか。クックック」
「クックさんこそ、前衛が出来ないと言ってたのは嘘か? 見事にショートソードを使いこなしてるじゃないか」
「クックック。今まで武器と言うものを持ったことが無かったから、魔導師タイプだと思い込んでたみたいですねぇ」
まあ、クックさんらしい理由だね。
「クックック。時間もあと少ししかないようですので、これでお終いにしましょう!」
クックさんが後ろに飛び退いてさらに距離を開けて、右手を前に突き出した。
魔法を使う気だ!
と、思った瞬間に、ラグルさんが持っていたロングソードを捨てて、スローでも見えないスピードでクックさんの懐に飛び込んで、お腹に右肘をめり込ませていた。
「ぐぁは!」
クックさんが崩れ落ちた。勝負ありだね。
最後は得意な魔法を撃とうとして阻止されたね。2人は互角みたいだったけど、剣のまま戦ってたら勝負ついたのかな?
「そうですか……クックさんはあのような……あれを差し上げましょうか……」
隣でイザベラちゃんが何かブツブツ言っていて少し不気味だったよ。
ラグルさんが臨時教官としてくるようになってからの最終日。筋肉痛と筋トレを繰り返した結果、私に変化があった。
なんと! 武器適正の中の、剣適正が3にアップしました!
うん……まぁ、木剣が武器として装備できるようになっただけ……。あ、それと短剣もかな。危なくて試してないけど。
武器にはその物の重さがあるのはもちろんだけど、武器レベルっていうものがあって、木剣だと2、短剣は3、ショートソードで5だったかな。
名刀とかレアなものは、ショートソードでもレベルがかなり高くて、武器適正が20くらいないと装備できないみたい。
「しかし……ステータスが1のままなのはどういうことだ?」
ラグルさんがギルドカードを見ながら言った。
不思議だよね~。あんなに筋トレ頑張ったのに。
ラグルさんも、私のプニプニの腕とか触りながら不思議そうな顔になってた。
そして、ラグルさんが帰っていってから翌日。私達のクラスはいままでにないくらい1つに纏まっていた。私達の結束は誰にも破れないだろう。
それは共通する思いがあったから。
教室のドアが開いて、ディアリナ先生が入ってくると、みんな一斉に立ち上がった。
「先生! お帰りなさい! これから先生の下で頑張りますからもう休まないでください!」
「あなた達……分かってくれたのですね……」
「先生~~~!」
泣き出す先生。それに駆け寄っていく生徒達。
みんなの思いは1つ。それはね……先生が休んじゃうと、またラグルさんが来ちゃうんです! オーガよりも鬼のようなラグルさんが!




