第22話:魔柱石と私の力……キラッ☆
講堂を飛び出した後、正門前の広場で立ち止まる。
ゴブリン達がどこまで来ているのか、気になっちゃったからだけど。
警戒のため、門のところにいた教官さんに聞いてみた。
「真っ直ぐ北門に向かっているけど、幸い進行は遅いから、まだ平原の中央くらいかな?」
よかった。まだ余裕はありそう。
「クックック。気になるなら空から直接見てみますか?」
「うん! お願い!」
クックさんが私を抱きかかえると、背中から翼を出して、空えと舞い上がった。
どんどん地表が遠ざかって、北の方角の平原が見渡せる高さまで到達した。
そして、平原の中央から森までの間に、緑色に蠢く粒が見えた。数は300くらいかな?
この距離だと、それだけしか分からなかった。
教官さんの言葉を疑うわけじゃないけど、本当にまだ余裕がありそうでよかった。
「困りましたね……」
突然、クックさんが力ない声で言ってくる。
「何が困ったの? まだ余裕ありそうだよ?」
「いえね……クックさんは、高所恐怖症なんですよ」
そういえば、クックックって、笑う余裕もなさそうだもんね~……って!
「この高さまで飛ぶ前に言ってよ!」
「あ、力が……抜けて」
「キャァァァァァ!」
墜ちていったよ! 凄いスピードで地面に向かって!
地面にぶつかるというところで力を取り戻してなんとか着地!
「怖かったですねぇ。ちびっちゃいそうでしたよ」
「それ私のセリフだから! そしてちびってないからね!」
四つん這いになって、ハァハァ言ってる。本当のことなんだね。
そういえば、最初に出会ったときも、翼広げただけで飛ばなかったな~。
「でも3階とかから平気で下見てたよね?」
「地に足が着いているのと着いていないとでは、大違いなのですよ……」
そういうものなのかな?
「クックック。話は変わりますが」
もう立ち直った!
「どうしてあの数のゴブリンが森に?」
洞窟のこと説明したほうがいいよね。
「とりあえず向かいながら説明するね!」
森の奥に洞窟があって、そこからゴブリンが溢れてくること、最深部に赤く光る柱があったこと、そして、オーガがそこに居たことを走りながら説明した。
「サクヤ様」
「ハァ……ハァ……何?」
街の中央広場まで来たとき、私と違って息一つ乱れてないクックさんが立ち止まった。
「西のサクヤ様の家まで行きましょう」
「家に? 一休みしてる暇なんてないよ? あ、モフモフさんと合流するの?」
「いえ、そうじゃありませんよ。着いてから説明します」
「うん。じゃ~行ってみよっか」
北門に向かおうとしてた足を西に修正して、家がある方向に向けて再び走った。
家に着くと、モフモフさん達が1匹のゴブリンを倒したところだった。
そのゴブリンは、今まで見たことあるゴブリンよりも明らかに大きかった。
そして倒されたゴブリンが、光の粒子となって消えていった。
今まで倒したゴブリンの死体を見なかったのは、消えちゃうからなんだ……。
今更ながらに納得した。
クックさんが、ゴブリンの消えた跡から何かを拾い上げた。
それは赤く光る石みたいな物。
「魔柱石の一部……欠片ですね。クックック。それで魔法が効かなかったわけですか」
欠片って、洞窟にあったあの柱のだよね?
「赤く光っているでしょう? あなた達のいう魔王の、その魔力が込められているのです。それがゴブリンの体に埋め込まれ、魔法を無効化しているのでしょう」
そんなすごいのあったら勝てないよ!
「クックック。大丈夫ですよ。私が落とした魔柱石があれば」
「クックさんが、最初に来たときに落とした岩のこと?」
庭に突き刺さったままの、高さが3メートルくらいある大きな岩を見る。
何も光ってなくて、唯の白い岩に見えるけど。
「サクヤ様の想いをこの岩に注ぎ込んでください。今から私の言う呪文を唱えながら」
「うん……」
私にそんな凄い力があるのかな? と、思いつつ、岩に触れながら教えてもらった呪文を唱える。
「私のお尻はプリップリ! このお尻でみんなのハートを狙い撃ち!」
……言ってから気付いたけど、これ絶対違うよね!
「クックック。まさか本当に言ってくれるとは思いませんでしたよ」
「ちょっと~~~!」
「あせっていた気持ちが落ち着いたでしょう? 心が乱れていては成功しませんよ」
あせってた以上に心が乱れたよ!
でも、クックさんなりに落ち着かせようとしてくれてたのかな……違うとおもうけど。
岩に触れながら、私の想いを流し込んでいく。
楽しい学園生活……、みんな笑顔が溢れる世界にしたい。
たったこれだけ。でも、本当に学園は楽しい時間だった。それを奪わないで!
岩が金色に光輝いた。それは、スキルを使ったときの、私から出る光と同じ。
岩から溢れ出た光が、周囲を照らしながら広がっていく。
その光は、森を抜けて洞窟まで達したようだった。
「優しい光ですねぇ。その優しさが、サクヤ様の力の源ですよ」
「そう……なのかな?」
クックさんは微笑んでいるだけだった。
でも、その微笑が本当のことなんだと教えてくれた。
「さぁ、これで魔王の魔力を打ち消し、魔法が効くようになったはずです。北門に向かいましょう」
「うん!」
北門付近の草原では、すでに戦闘が始まっていた。
門の近くで指揮を取っていたラグルさんに駆け寄る。
「サクヤちゃん! あの光はサクヤちゃんの光だったのか? ゴブリンが一斉に弱体化したみたいだが」
「その説明はあとでするね。今はどうなってるんですか?」
「弱体化したとは言っても、数が多すぎる。こっちは負傷者が大半で、まともに戦えるのは20人といったところか」
負傷した人は、前衛で戦っている人たちの後ろでまだ治療中だった。
セシールさんのヒールと、プニプニさんもフル稼働で働いてくれていた。
それでも、劣勢は確実だった。
「魔法が効くようになっているから、魔法で!」
「撤退途中で魔法連発しすぎて、みんな魔力切れだ。俺の指揮が間違っていた」
「クックック。困りましたねぇ。最大戦力の魔法が使えないとは……。私はオーガの足止めをしてきますね」
「うん!」
「あ、そうそう。余裕ができたらでいいので……」
起死回生の手段を教えてくれたあと、駆け出していく。
でも、今魔法が使えないと……。
「戦っている前衛の皆様! お下がりになって!」
私の後ろから、イザベラちゃんの声が響いてきた。
その声を聞いて、戦っていたみんなが後方へ一斉に飛び退いた。
「ファイアウォール!」
「ファイアボール!」
「サンダーボルト!」
いくつもの魔法が飛んで行って、前列のゴブリンを一掃した。
中でもファイアウォールの効果は凄くて、その場で壁となって燃え続ける炎が、ゴブリン達をその場に押し留めている。
「お姉様! 親衛隊15名参上いたしましたわ!」
「イザベラちゃん! ありがとう!」
避難命令はどうしたんだろうと思ったけど、今は助けられたことに感謝だね。
「子供が15人きたところでどうにもならないぞ! かえって犠牲者を増やすだけだ!」
ラグルさんが叫ぶ。そう……今って窮地だよね。
ここで起死回生の手段発動!
「みんな注目~~~!」
叫ぶと、みんなが一斉に私を見た。
ここで、えっと~……足を肩幅に広げて、右足を少し前に出して、上半身は左に少し捻っておいて、左手は握って腰の後ろに隠すように、右手はチョキの形でみんなのほうに手のひらを見せて、指の隙間に右目が来るようにして、捻った体を正面に戻しながら……左目を閉じてウインク!
私の体が光輝く! エール発動!
「みんな! 頑張って! キラッ☆」
クックさんに教えてもらったポーズを取りながら言ってみたけど……。
やってみて凄く恥ずかしいことに気付いたよ!
「うおぉぉ! いいものが見えた! 力が何倍にもなって溢れてくる! 萌えてきた~~~!」
男の冒険者さん達と兵士さんが、同じようなことを口にしながら、光り輝いてた。
傷も体力も魔力も全回復して、やる気が燃えてきたってことかな?
すごく恥ずかしかったけど、効果は凄かったみたい。
ここから巻き返しが始まるんだね!
「サクヤちゃん。クックさんに遊ばれてないか?」
うん……シリアス回ってどこいったんだろ?




