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第21話:動き出した世界

とうとうシリアス回に突入です

 ラグルが迫ってきた剣に盾を突き出して防ぐ。

 剣と盾が火花を散らせて弾きあった。

 ラグルが反撃に出る。左手に持った盾を素早く後方に引き、右手の剣を大きく突き出した。

 が、緑色をしたそれは、後方に飛び退き回避した。


「こいつら、昨日よりも強くなってやがる」


 緑色――ゴブリンは、今まで60センチほどだった体が、今では120センチほどになっていた。

 体が大きくなったことで、短剣だった武器がショートソードになっていた。

 それだけではなく、身体能力と知能もアップしていて、今までのように、ただ飛び掛ってきたりなどの攻撃をしてこなくなった。


「ぐあ! クソ! 腕を斬られちまった! ラグルやばいぞ! 他の奴らも負傷者が増えてきている!」


 共にコンビを組んで戦っていたディックが叫ぶ。

 ラグルは元騎士で何とか戦えているが、ディック達は普通の冒険者で、街の兵士も冒険者でいうところのCランクの実力程度だ。

 しかもここは森。ゴブリンは数が多く、どこから襲ってくるかも分からないため、精神の消耗が問題だった。

 加えて、森の中では木々に邪魔をされ、剣が思い通りに振れないのも苦戦している理由だ。


 ラグルが、死者が出る前に撤退するか迷っているとき、決定的な知らせが届いた。

 洞窟からオーガが3匹出てきたと。


「平原まで全員撤退! こいつらが森から出てきたところを魔法で倒す!」


 森での攻防は、ラグル達の敗北だった。


              ☆☆☆


 知らない間に親衛隊なんて出来てたのを知ってから、疑心暗鬼に陥っています。

 あの子のスカートの中もホットパンツなのかな……。

 全員がすでにホットパンツを穿いてるかもしれない。


「クックック。サクヤ様、どうされたのですか? 先ほどからあの女子の尻を眺めて」

「え? 眺めてはないけど……」


 気になってちょっとだけ見てたかも……。


「お姉様。どれだけ親衛隊が増えたか気になりますのね? 教えて差し上げますわ」


 知りたくはないけど! でも気になる。私の親衛隊みたいだから、知っておいたほうがいいかな?


「女子生徒の9割がすでにファンクラブに加入済み! そこから実力の高い人たちを選抜して親衛隊に入隊してもらいますわ。現在、親衛隊の人数は15名ですわ」

「いつの間にファンクラブなんて出来てたの!? ほとんどの女子生徒が加入しちゃってるよ! 予感が当たっちゃったよ!」

「それだけではありませんよ! クックック」


 クックさんが変なポーズを取りながら言ってくる。

 うん。もうその時点でいやな予感しかしないよ。


「私を筆頭にして、男子ファンクラブを結成! すでに8割がサクヤ様ファンクラブ会員ですよ! クックック! サクヤ様の望み通り学園制圧も時間の問題でしょう!」

「望んでないし! 一言もそんなこと言ってないよね!?」

「「言いました! 私の夢の中で!」」

「2人揃って同じ夢みないで~~~!」


 何を言ってもダメだと思うと眩暈がして、壁に手を着いた。

 そこはちょうど掲示板で、貼られているポスターが視界に入ってきた。

 覚えたての字をゆっくり読んでいく。そして、なぜここまで爆発的に会員数が増えたのか分かった。


 『勇者サクヤ様……現在学園在籍中。ファンクラブ募集……してます。希望者は……学園長室、ビィスコまで』


 そっか~。ポスターを学園中のあっちこっちに貼ってるのか~。そりゃ増えるよね~……て! 最後の! 

 学園長ビィスコさんまでグルだったよ! なにしちゃってるの!?


 そんなこんなで、2人に親衛隊とファンクラブの『全て』の権限を与えることにした。

 うん……。私はノータッチ。私は何も知らない。




 教室に入ると、続々と他の子達も入ってくる。

 もう少しで教官さんも入ってくるだろな、て、思いながら教科書を出していると、突然、学園中に響く鐘が鳴った。

 立っていた子は動きを止めて、座っていた子は、緊張した様子で素早く立ち上がった。

 何の鐘なんだろ?

 意味が分からない私とクックさんは、顔を見合わせた。


「イザベラちゃん。この鐘は……」

「お姉様。すみませんが、少しお待ちになってくださいまし」


 そう言うと、再び鐘が鳴らされた。


 カーン、カーン、カーン。


 その鐘を聞いた子達が一斉に教室から駆け出して行った。


「3つですわ! お姉様、これは緊急避難命令です! いそいで学園中央講堂まで行きますわよ!」

「え? 避難?」

「そこで学園長から説明があるはずですわ!」


 私はイザベラちゃんに手を引かれ、講堂に向かった。




 講堂内に、初級クラスの私達が真ん中で、その周囲を円で囲むように、中級クラス、上級クラスと外側に向かって並んでいる。

 この並んでいる配置から、初級クラスを守っているんだと分かった。

 その初級クラスの中で、背の高いクックさんだけ異彩を放っているけど。


 壇上に、今までにない険しい表情のビィスコさんが立った。

 今から説明が行われるらしい。


「皆さんは、街の兵士、冒険者達が、森でゴブリン討伐を行っているのは知ってますね?」


 ラグルさん達が頑張っているはずだけど、何かあったのかな?


「溢れ出るゴブリン達に押され、オーガ3匹も確認されたため、森での戦いを放棄、撤退して……」

「ラグルさんは!? みんなは無事なんですか!?」


 オーガと、撤退という言葉を聞いたとき、ビィスコさんの説明を遮って叫んでた。

 みんなが驚き、私を見る。


「サクヤさん、落ち着いて。ラグルの早い判断で撤退したおかげで、死者は出ていません。負傷者は出ているようですけどね」

「よかった……」


 安堵と同時に、足に力が入らなくなって崩れ落ちそうになり、クックさんが優しく抱きとめてくれた。


「サクヤさん、座ったままでいいから、もうちょっとだけ、説明聞いててね」

「はい……」

「ゴブリンの軍勢に押されて後退を続けており、北の門が最終防衛戦となりそうとの報告がありました。それに伴い、この学園も非常事態を発令。万が一にですが、この学園も防衛戦になるかもしれません」


 街の北門が突破されたら、街が、そしてこの学園にも攻めてくる。

 それは私でも分かった。


「初級クラスはこの場で避難継続、中級と上級クラスの中から結界を張れる人は門に集合。弓の技術が高い人を選抜次第、選ばれた者は北側の塀に集合です。残った者はこの場で初級クラスの護衛を」


 その言葉を聞いて、それぞれのクラスの教官が選抜された生徒の名前を言っていく。

 呼ばれた生徒は次々とその教官の下へ集合していった。


「クックック。学園長殿、魔術部隊が結成されてませんが? 魔法抵抗がほとんどないゴブリンなど、魔法でどうにかなるのでは?」

「説明が抜けていましたね。今回のゴブリンには、魔法の効果が見込めないそうです。結界のようなもので守られているようなのです」

「なるほど。それが押されている要因の一部と……クックック」

「クックさん。どういうことなの?」


 クックさんは納得してるようだけど、私は戦略的なことがさっぱり分からない。


「クックック。簡単に説明するとですね……そのラグルという方の部隊が森を出る、追いかけてくるゴブリン。そこで魔法ドカ~ン、ギャ~、やった~ざまぁみろ~……普通ならこうなるのですよ。しかし今回は、魔法ドカ~ン、キッカ~ン! 街まで逃げろ~、こうなったわけです」

「う……うん?」


 本当に簡単にだったけど、なんとなく分かったような……とにかく、ラグルさん達が危ないってことだよね!


「ビィスコさん! 私とクックさんは街のほうへ行きます! クックさん力を貸して!」

「サクヤ様の仰せのままに」


 私とクックさんは、返事を聞かないまま講堂を飛び出した。




 こうして、楽しかった学園生活の終わりを告げるように、世界が動き出した。

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