第19話:痛い子が2人になっちゃったみたいだよ!
奇跡的にも? 召喚が成功して、まったく予想してなかった魔族を呼び出しちゃったんだけど……。
どうしようかな? と、思ってたとき、イザベラちゃんが服の裾を引っ張ってきた。
「お姉様……あの方は……」
「魔族だよ」
「それは見ただけで分かりますけど、お姉様のお知り合いなんですの?」
「う~ん。知ってるといえば知ってるのかな? 私を暗殺しようとして襲ってきた魔族なんだけど……。今回は護衛の教官さんもいるから、大丈夫だよ」
「その教官ですけど……」
イザベラちゃんが視線を移す。
私もそっちを見てみたら、そこには、空を見上げて、見えない何かと会話する教官さんが居た。
「現実逃避していらっしゃいますけど……」
ダメだよ! 終わったよ私! いや、待って! ここには私よりも強い子が30人も……て、なに考えてるの私~~~~!
私も現実逃避寸前だよ!
うどんを食べ終えた魔族が、椅子からゆっくり立ち上がる。
それを見て、イザベラちゃん以外の子達は、校舎へ逃げて行っちゃった。
残ったのは、イザベラちゃんと……うん。教官さんはまだ、見えない何かと会話してる。
魔族がゆっくりと歩いてくる。
「クックック。空間を丸ごと召喚なんて、どんな術式を使ったんでしょうね。後でこのテーブルと椅子を返してこないといけないじゃないですか」
ごめんなさい。召喚の術式じゃなくて、テオールさんの攻撃魔法をイメージしたら呼び出しちゃいました。
「あの……お姉様。あの方、あまり怖いって感じじゃありませんわね」
「うん。そうなんだよね……」
「クックック。さて……」
正面まで歩いてきた魔族が、腕組みして立ち止まる。
「……」
「……」
……。5分経過。
「お二人とも見詰め合ってないで何かしゃべっていただけますこと!」
「え? またあの決め台詞を言うんじゃないかなって、待ってたんだけど……」
「いやいや。私は召喚された身であり、命令を待っていたのですが……クックック」
だったら、えっと……。
腕組みして頭を捻り、何かないかと考えてみる。
「今日のところは帰ってもらってもいいかな~?」
「な! なんですと……」
よろよろと後ろによろけて、左腕で両膝を抱えて座り込んで、地面に右手で、のの字を書き始めちゃった。
「……クックック……うどんを味わうこともなく急いで食べたのに……帰れって……」
拗ねちゃったよ! 面倒くさいことになっちゃった! でも、そのまま帰ってもらうのも可哀相だよね……。
「お姉様。間違って呼んじゃいましたって、丁寧に説明してあげたらよろしくなくて?」
イザベラちゃんが、耳打ちで提案してくれた。
うん。それでいこうかな。
「あのね、違うの……」
間違って呼んじゃったんだよって説明しようとしたら、私の体が輝きだした。
どうして輝きだしたか分かんないけど、スキルのファミリーだよね?
このスキルの効果って、仲間になるってこと? この魔族さんが?
でも、間違って召喚しちゃっただけだし、1回、何かやってもらったらこの魔族さん帰っちゃうのかな?
「魔族さんの名前は? 私はサクヤっていうの」
試してみることにした。
「クックック。私は作られし者。名などありませんよ」
「じゃ~クックさん! クックックって笑うから、クックさん!」
「――! ……。」
バ! っと、勢いよく立ち上がったと思ったら、そのまま固まっちゃった。
「クックさん? どうしちゃったの?」
変な名前だと思って、怒っちゃったのかな……。
「すばらしい!」
叫ぶと同時に、クックさんの体も輝きだした。
「クックック。すばらしい名前ですよ!」
クックさんが、天を仰ぐように両手を広げて叫ぶと、足元から光の柱が天に向かって立ち昇った。
そして赤く鈍く光ってた体が、足元から上に向かって、白銀へと変わっていった。
全身が白銀に変わると、立ち昇っていた光がクックさんに集まっていって弾けた。
そこに居たのは、今まで赤く鈍い光を放っていたクックさんとはまるで違う、白銀に輝く鎧を身に纏い、左腕に白銀の盾を身に着けて、優しい光を放っているクックさんだった。
そして、クックさんが片膝を着いて、頭を下げてくる。
「クックック。このクック……クックさん? すみませんが、どこまでが名前なのでしょう?」
「クック……さん?」
うわ! 言われて自分でも分かんなくなっちゃったよ!
「このクックさん。今このときより、我が身命を捧げ、サクヤ様にお仕えいたしましょう!」
「ちょ! まってまって!」
両手をバタバタさせて言う。
仕えるとかって、家来になったってこと? 極端に言うとそうだよね? え? 私が主?
「私では力不足と……」
「そうじゃなくて! 力は知ってるよ。私の家を壊しちゃったし」
トドメをさしたのは私だけど……。
「私のスキルはファミリーって言うの。意味は家族ってこと。だから、仕えるとか、家来になるってことじゃないと思うの」
「その言葉を待ってましたよ! クックック」
「待ってたの!?」
「クックック。何をそんなに驚いているのですか、お母様」
「……え? お母様?」
「家族とはそういうものでしょう?」
「私まだ15歳だよ!」
「それを言うなら、このクックさんは作られてから3ヶ月も経ってませんが? それにお母様の力で生まれ変わったのです! お母様をお母様と言わず、何と言いましょう!」
「ちょっと待って~~~」
「お姉様! 私に弟が出来ましたわ!」
クックさんは仲間を呼んだ!
イザベラちゃんが仲間に加わった!
「お~! 姉上、これからよろしくお願いしますよ。クックック」
「よろしくお願いしますわ! これから2人でお姉様を助けていきましょう! クックさん!」
2人は固い握手を交わした。
意気投合しないで~~~~!
「サクヤ様でいいから! お母様はやめて~~~!」
「クックック。そんなに慌てふためいて。冗談ですよ、サクヤ様」
「冗談だったの!?」
「慌てるお姉様も可愛いですわ!」
2人は固い握手を交わした。
もう好きにして……。
クックさんはどこまでが本気か分かんないけど、痛い子が2人になっちゃったみたいだよ!
これからどうなっちゃうの? 2人相手にしてたら大変だよ!
今回は会話多目だったかな?
評価、感想貰えると嬉しいです。




