第1話:いきなりドキドキ
光が収まって眩しさで閉じてた目を開けると、ぼやけてた視界が戻ってきた。
潮の香り……身体全体で受ける風……船の上にいるようだ。歴史の教科書で見たような帆で進む船……。
「くるぞ!! とりか~~~じ!」
そして周りから聞こえてくる怒号?
くるって何がくるのかな?
気になって海のほうに視線を向けたとき、バスケットボールくらいの大きさの何かが船の手前の海面に水飛沫をあげて落ちてきた。
「うわっ」
高波で船が大きく縦に揺れて尻餅をついちゃった。
「左舷貨物室に浸水だ!!」
「木材と布で穴を塞げ!!」
船員さん?と、舵を握っている船長さんが慌ただしく動き回っている。それだけでこの船は危険な状態だってことはわかった。
なんとか立ち上がって周りを見てみたら、私の乗っている船の前と左右を囲むように、黒い旗に髑髏マークを書いた、いかにも海賊です!! ってアピールしてる船が5隻。そして後ろにはこの船の仲間だったらしい船が炎に包まれて止まっていた。
ヤバイ……よね? 炎に包まれてる船が,私の乗ってる船の未来の姿……。
『ドキドキでワクワクな』って言ったけど、これはやりすぎでしょ~~!!
ドキドキはしてるけどワクワクは絶対してない!
ドッゴォォォン!!
海賊船から撃ち出された大砲の弾が、ゆっくりと、まっすぐ近づいてくる。
卓球の球くらいの大きさからソフトボールくらいの大きさになるまでスローモーションのように。
ていうか本当にスローモーションになっているみたい。走っていた船員さんの動きがコマ送りみたいになってる……。
これなら避けられるかも?
体を左に捻って――動かない!
そっか、反応はできても身体機能がそれに追いついていないみたい。
「キャっ」
足がもつれてその場に倒れこむ。それと同時にスローモーションが終わって、今まで立っていたところを弾が通過して船体に大きな穴を開けた。
あのまま立っていたら私の身体は粉々になってただろな~。てっ、自分でも不思議なくらい冷静になっちゃってる。
これが諦めの境地っていうのなんだ~。そうなんだ~。