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第15話:初日から絡まれちゃったよ

 冒険者養成学園。と、いっても、卒業した人は冒険者だけじゃなくて、王国直属の兵士になったり、特に素質の高い人は騎士になったりするそうです。


 そんな学園は、ギュオールの街の東門から歩いて10分のところにあった。

 草原の中に、門と塀に囲まれた施設。大きさはギュオールの街の半分くらいかな~?

 全寮制になっているらしく、私がギュオールの街で同年代の子をあまり見かけなかったのはそのためなんだね。入学前の子達とはいっぱいお友達になったけど……。


 学園長室。

 門のところにいた兵士さんに、レオドナドさんから貰った手紙を見せたらここまで案内された。

 その部屋は、ここまで来るときに見た普通のドアじゃなくて、両開きの立派な扉だった。

 こんな部屋にいる学園長ってすごく厳しくて怖い人なんだろな~。


「あなたがサクヤちゃんね。ワシは学園長のビィスコ」

「あ、サクヤです。はじめまして」


 腰が少し曲がって杖をついてるから高齢っていうのは分かるけど、顔がすごく若い感じ。髪の毛も白髪じゃなくて綺麗な水色だし。

 でもその雰囲気からすごく偉い人っていうのが分かる。権力者のオーラが出てる。


「もう我慢できない! 抱きついちゃう!」

「わわ!」


 持ってた杖を投げ捨てて正面から抱きしめてくる。

 私の最初の見た目からの解析は間違いだったよ! 権力者のオーラなんてどこにもないよ!


「ほっほっほ。ごめんなさいね。少し取り乱しちゃったわ」

「いえ……大丈夫です」


 少しじゃなかったよ~~~。

 ビィスコさんが、私からスッと離れ床に落ちた杖に手を翳すと、杖がその手に飛んできた。

 すごい、こんなことも出来るんだ。


 ビィスコさんの話だと、普段は街の最高権力者の1人、ということで威厳のある態度で振舞っているけど、本当はさっきみたいなのが素のビィスコさんなんだって。


「さて。サクヤちゃんは初級クラスに入ってもらいます。このクラスでは全ての授業を受けてもらいます。剣術、魔法、召喚術。1年間それを学習して、13歳の中級クラスからは初級クラスでの成績、適正などをみて、戦士、剣士、魔導師クラスなどに振り分けられる仕組みなの」


 そう言って、教科書みたいなのを数冊手渡された。


「大丈夫かな? やっていけるかな?」

「サクヤちゃんは体験入学ということで入ってもらうから、実力を出さなくてもいいのよ」

「はい……」


 ごめんなさい。その実力を全力で出して、ついていける自信が全然ないです。




 クラスの皆に紹介された後、壇状になっている席の1番上に座る。

 今は魔法の授業のようで、黒板には魔法陣が書かれている。


「であるように、6重円の魔法陣が普通の魔導師が使える魔法の上限だな。7重円を描くことができれば、王宮魔導師として、騎士団に入ることも可能になる」


 魔導師のローブを身に纏った教師が、次のページを開くように言ってくる。

 パラパラとページを捲って……。


「忘れてた……。私、字を読めないよ」


 5分後、教師の話だけ聞いてても意味が分からなかった私は、思考のスイッチをOFFにした。


 ZZZzzz……。



「ちょ……きなさ……」


 なんだろ? 体を揺らされてる感じがする。


「起きなさいって言ってますのよ!」

「う……ん?」

「やっと起きましたわね!」


 声がしたほうを向くと、腕組みした女の子が4人立っていた。

 1番前に居る子がリーダーで、後ろに居る子が取り巻きみたいな感じかな。

 リーダーの子は、ロングの金髪で、縦ロールで髪の毛を整えている。目元は少しきつめで、なんかすごいお嬢様って感じだ。


「私はイザベラージュと申します。あの噂の勇者であるあなたにお会いすることができて光栄ですわ」

「はぁ。サクヤです。よろしくね」

「ちょっとあなた! 貴族のご令嬢、イザベラ様が丁寧にご挨拶なさっているのにどういうことですの!」


 ビックリした~! 普通に挨拶したんだけどな~。育ちのいいところの挨拶なんて知らないし、どうしろっていうのかな~?


「落ち着きなさい。この方は15歳で私達よりも年齢は上なのよ。年齢だけはね」

「年齢だけはって……」

「そうじゃなくて? 実力がないから学園に入ったのでしょう?」

「う~ん。どうだろ?」


 実力がないのは分かってる。でも本当の理由は、屋敷が壊れたからと、魔族の襲撃に備えて、ここの教師さん達に護衛してもらうっていうのなんだけど。


「ま~いいわ。次は剣術修練よ。それで実力が分かりますものね」


 クルリと身を翻し、優雅な歩き方で、取り巻きを引き連れて教室を出て行ってしまった。

 なんか……元の世界であんな子がいたら、痛い子って言われるよね?

 その痛い子に絡まれちゃったよ。


「剣術か~。外の競技場だったよね……」


 溜息をつきながら、枕にしてた教科書をリュックに入れてから、私も向かった。




 目の前の箱に入っている練習用の木剣を見て固まってしまう。

 手に持つとずしりと重さがくる。

 木剣を武器と認識してしまったからだけど……。


「これは唯の木の棒……木の棒……武器じゃない」


 自分に暗示をかけてみる。

 その横で男の子たちがいとも簡単に『軽い』木剣を持っていく。

 何回か暗示を試して、私も木剣を持って振るくらいは出来るようになった。




 1人の男の子が、目に炎を宿らせて私の正面に立っている。両手で木剣を持って構えて……。

 私は素振りだけして時間を潰そうとしたんだけどな~。

 何がどうしてこんな展開になったのかというと……。


「勇者様と手合わせしたいです!」


 と、この30人いるクラスの中で、特に剣術の成績がいいらしい子が挑んできたんです。


「行きます」


 すっと上段に構えて振り下ろしてくる。

 それを左に半身を捻って避ける。


「た!」


 振り下ろした剣をそのままにしてその場で回転して、遠心力で横薙ぎに振ってくる。

 しゃがんで避ける。


「く!」


 空を切った勢いはそのままで、下段に構えて上に振り抜いてくる。

 後ろに軽く飛んで避ける。


「ダメだ! 当たらないや! ははは」


 流れるような3連撃をしてきた子が正面に構え直して笑っていた。


「すげ~。1度も剣を振らずに、全部避けたぞ」


 周りから拍手が起こった。

 スローモーションが発動して、避けるだけなら簡単だった。

 そう。全部ゆっくり見えてるから、避けるだけならね……。


「お待ちなさい! 剣を1度も振ってないでしょう? 避けるだけでは剣術と言わなくてよ!」


 腰に左手を添えて、右人差し指で指差しながらすごい剣幕で言ってくる。

 でも、実際その通りなんだよね。

 攻撃はしようとしてたんだよ? ゆっくり見えてるから、最初の振り上げたところなんて、胴ががら空きに見えたし。

 でもね、攻撃しようとしたら、体はついてこない、木剣は攻撃しようとしたら武器と認識しちゃって重くなるはで、仕方なく回避だけしてたんだけど。

 イザベラって子はそれが気に入らなかったみたいね。


 ……ステータスオール1の私にどうしろって言うんだろう?

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